2021-01-01から1年間の記事一覧
美しく強い光が差し、写真は生命力に満ちている。 脳出血により失語症に陥った作者が、入院中から撮り溜めてきた写真と、言語リハビリで絞り出すように何度も書き付けた言葉と図が並置されている。 文字と図は、普段私達が使っている記号・道具ではなく、生…
大阪・本町のセレクトショップ「I SEE ALL」横のギャラリースペースで展開される、木村和平の写真展。何気ない日常や親密な人を撮ったように見える写真には、何が写っているのだろうか。 【会期】2021.5/7(金)~5/20(木)
世界的に非難の嵐を巻き起こした「トロフィー・ハンティング」の内側へ入り込んだドキュメンタリー映画。当事者であるハンター、ロッジのオーナー、そして雇用されている現地人に密着し、それぞれの立ち位置を映し出す。 ハンティングは悪なのか? 本作はハ…
橋間良子(はしま よしこ)という、西表島に住む90歳近い「おばあ」の語りによって紡がれる映画。 橋間おばあは1926年の台湾出身だが、1937年に祖父らに連れられて沖縄県西表島へ移住する。一家はその後、西表炭鉱と、そして西表島と運命を共にする。
タイトル「Arial」とは「air」の形容詞で「空気の、大気中の」といった意味を持つ。ステートメントでは『確かに在ったという空気感だけを、私は握りしめているようだ。』と綴られている。スナップ写真群から、「私」=作者が何を掴もうとしていたのかを辿っ…
写真評論家・清水穣(しみずみのる)氏のキュレーションによるグループ展「showcase」。9回目となる展示は、ピンホールカメラの原理を用いて光と像を操る岡本明才(おかもとめいさい)氏と、自分の内面を投影した夢のような風景を表す佐藤華連(さとうかれ…
重力や質量、斥力など「科学」の世界は目には見えない。しかし今・そこに・常に働いていて、この有象無象のものどもに作用し、「世界」としての形と確かさをもたらしている。 美術家・植松奎二(うえまつ けいじ)の配置・構成するオブジェはどれもとてもシ…
ミケル・バルセロ。初めて聞く名前だ。 ホームページ等で出回っている広報画像と、実物の体験が違いすぎた。当初は、自然のパワーと個人の感情を掛け合わせた、やや古風な絵画だと思っていた。違った。刻々と移ろう自然の動態と、変遷を経てきた美術史とが1…
青い宇宙空間に漂う惑星か、口のない陶器か。それは、たまご。養鶏場で生み出されながら、見える形で市場に出回らなかった卵――「破卵」(ハラン)の個性と生命力が、実物と共に示される。 【会期】2021.4/16(木)~5/5(水)
私の母校「大阪国際メディア図書館」のスクール「写真表現大学」(写真)と「Eスクール」(映像・サウンド)の修了展です。合計48作品がリストアップ(作者の重複あり)。 今回はもう私、卒業してますので出展はありませんがみなさんどうしてますかね回。こ…
体当たりで触れて歩いて観る展示、ピピロッティ・リスト回顧展。美術館3Fの全室にカーペットが敷かれ、一つの繋がった空間としていて、鑑賞者は靴を脱いで、カーテンで区切られたセクションを巡る。それはリストの映像作品の中へ入り込んだような体験である…
リアルよりも、液晶画面に映る容姿と仕草がリアル、オンラインでの意志疎通がリアル。そして圧倒的に不確かで。そんな時代の虚実を鮮やかに突く作品だ。 【会期】2021.3/26(金)~4/24(土)
アートホテルとして有名なアンテルーム京都のギャラリースペースで、2ヶ月にわたって写真家・赤鹿麻耶の企画展が催された。アンテルームはいつもKYOTOGRAPHIEの時期にはサテライト企画「KG+」に参加し、新進気鋭の写真・現代アートの作家を展開してきたが、…
2011年3月11日の東日本大震災以降、被災地で催された多数の「祭り」を追ったドキュメンタリー作品。祭りは地域住民にとって、なくてはならないものだった。人物だけでなく、風景だけでもなく、その両方が写された写真群によって、「被災」と「復興」の狭間に…
京都芸術大学の写真・映像コースに在籍する17名が展示、教授の後藤繁雄、専任講師・作家の多和田有希がキュレーションを担当。「写真」を拡張させた変成体を繰り出し、「現在」のカオティックな状況を捉えようと試みていた。個人的に大好物な趣向。こういう…
関西の写真系ギャラリーが3/21(日)、また一つ幕を閉じた。最後の展示はゆかりのある約60名によるグループ展。 2009年の開廊以来、毎週のように展示を催し続けてきた場である。ただ、HPには「一旦閉廊します」「近い機会に、必ずお会いしましょう」とあり、…
新型コロナ流行の影響によって1年延期された、ソール・ライターの展示である。絵画のように美しいカラーのスナップ作品のほかに、リバーサルのスライドショー、セルフポートレイト、そして重要な二人の女性:妹のデボラとパートナーのソームズ・バントリー…
東京の「TOTEM POLE PHOTO GALLERY」との4回目となる交流展として、田凱(デンガイ)が大阪・服部天神の「gallery 176」にて、個展とトークショーを行った。 トークは写真家・川崎祐(かわさき ゆう)が対談相手を務めたが、同じく「風景」を扱う作家として議論…
現代美術の作家さんが13人入居して制作している空間「Super Studio Kitakagaya(SSK)」のオープンスタジオ企画。創作の現場は、ギャラリーで完成された作品を観るのとは全く違った体験になりました。 【会期】2021.3/5~3/21
だんだんと季節が回って暖かくなってきたが、本作は濃厚な暑さが立ち込める夏が舞台である。 ひと夏で3人もの別れを経験した作者は、自然の豊かな地で、人の生きる現世とは異なるものたちにしきりに眼を向けている。それは即物性からのシュールさへと結び付…
「大阪国際メディア図書館・写真表現大学」の在校生:みまつひろゆき、駒﨑佳之の二人によるダブル個展が、京都・三条の「同時代ギャラリー」で催された。二人は展示に合わせてそれぞれ写真集も発刊している。 また、トークライブ「生きるを写して」では、私…
2020年3月半ばに木村伊兵衛写真賞・受賞の発表があってから、本来なら約1カ月後に展示が催されるところ、新型コロナ禍に見舞われて授賞式は中止、展示は無期限延期となっていた。 一年越しでお目見えしたのは、片山真理・横田大輔の二人展という形態だった…
溢れ出す食べ物の写真、読み方も分からないタイトル、されど絶妙なバランス感覚で構成された空間『OOOFOO』。Over Food ともToo Food とも呼びたくなる「食」の氾濫は、生きる力―食欲を音源としたハードコアやパンクの色覚的ライヴだ。 【会期】2021.2/16(…
大阪国際メディア図書館・写真表現大学の同窓生、岩本啓志氏の初の個展。2017年度の入学以来、「あべのハルカス」の見える風景を撮り続けてきた。雑多な下町の空に、真四角のビルだけが聳えている光景は、写真によって改めて異様さを見せる。 それはシュール…
禅フォトギャラリーのオーナー、マーク・ピアソンの2万点にも及ぶ膨大なコレクションから、3回にわたってコレクション展が催される。第1章は1850年から1985年まで、日本の「日常生活」に焦点を当てて多数の作品が紹介された。 ( ´ ¬`) めちゃめちゃ多い…
ビジュアルアーツ専門学校大阪・写真学科のゼミ別成果発表展(写真作家選考展)と選抜作品展が、それぞれ、「ビジュアルアーツギャラリー」(梅田・堂島)と「ニコンプラザ大阪 THE GALLERY」(心斎橋)で開催された。それぞれで気になった作品をレポです。 …
「KYOYO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2021」の一環として催された企画。多数の資料を展示し、かつて帝国主義の時代、万国博覧会などの展示が持っていた支配的な視座の歴史を示す。 ( ´ ¬`) 引き込まれてなかなか見終われなかった。。。 【会期】2021.2/…
京都・四条河原町に2019年12月に開業した「GOOD NATURE STATION」・ホテル棟4Fのギャラリースペースにて、展示『Sync - eternal commons / ephemeral being -』が開催されている。写真家・勝又公仁彦と鈴木崇の二人が、タイトルの『Sync』に基づき、共に作…
会場の壁をずらりと埋めるのは空き地の写真群だ。場所も分からず、主たる眼前の対象もない。不在の風景ということになるが、しかしこれらの写真には多くのものが写っていて情報量はむしろプラス側にあるため、「不在」の語義とこの写真群が現わすものとは折…
企画展「分離派建築会100年 建築は芸術か?」とほぼ同時期に開催されていたコレクション展の大部屋で、三島喜美代のコミカルかつ高クオリティな「割れる」新聞・雑誌、空き缶がごろごろと転がっていた。非クールなポップさが楽しい。 合わせて、「エデュケー…