nekoSLASH

ねこが超です。主に関西の写真・アート展示のレポート・私見を綴ります。

2021-01-01から1年間の記事一覧

【写真展/KG】KYOTOGRAPHIE 2021(3)_③MIRRORS Manga meets CHANEL Collaboration with 白井カイウ&井水ぽすか

今年のKYOTOGRAPHIEの中で、最も「これ、ほんまにどうなるんやろう…」と勝手に危惧していたのが、この展示。 CHANELとマンガのコラボ、しかも『約束のネバーランド』作者(白井カイウ×出水ぽすか)という、それたけで完結しそうな組み合わせ。企画としてはい…

【写真展/KG】KYOTOGRAPHIE 2021(2)_②MEP Studioによる5人の女性アーティスト展 ―フランスにおける写真と映像の新たな見地

KYOTOGRAPHIE 2021・プログラム②は、パリの「MEP Studio」(ヨーロッパ写真美術館)との共同企画として選出された、5名4組のフランス人若手女性アーティストによるグループ展だ。 それは「写真」に止まらず、激しく濃い色の写真もあれば、物語・空想を紡ぐ…

【写真展/KG】KYOTOGRAPHIE 2021(1)_⓪インフォメーション、①アーウィン・オラフ『アヌス・ミラビリス ―驚異の年―』

新型コロナ禍2年目の2021年、昨年に引き続いて秋開催となった「KYOTOGRAPHIE」本体プログラム(以下、【KG】と記載)を巡っていきましょう。まずプログラムNo.⓪と①を紹介。 第9回目のテーマタイトルは『ECHO』(エコー)、人間界のあらゆることは自然界、地球…

【ART】R3.8/31~9/18_福田真知「Closed Eyes ー眼を閉じてー」@The Third Gallery Aya

眼を閉じて、瞼の裏に浮かび上がる闇と像を油絵で描いた本作は、写真機の介在できないゼロ距離での「見る」行為や現象を可視化したものだった。心象光景ではなく、具体物もない、色と明暗の中にある視界である。生理的印象派、という造語が思い浮かんだ。 【…

【ART】R3.9/7~9/25_森栄喜「シボレス|鼓動に合わせて目を瞬く」@Calo Bookshop & Cafe

影が街の中でコミカルに動きを見せる。誰に向けてそれは放たれているのだろうか。誰にも向けられてもいないのだろうか。誰がキャッチするのだろうか。公の空間に投げ込まれた影と信号が、人のいなくなった都市に響く。 個人が支払い続けている犠牲としての公…

【写真展】R3.9/2~9/15_ 志岐利恵子「山里譚」@ニコンプラザ大阪 THE GALLERY

奈良県の吉野郡川上村を主として、山間部で暮らす人たちの生活が写されている。山と風と川が豊かな自然をもたらす「奈良」のポテンシャルの深さが伝わる展示だが、自然とともにある生活は、信仰=神様と隣り合わせの暮らしであった。そして同時に、そこはシ…

【写真展】R3.8/27~9/7_千賀英俊「HOMI」@gallery 176

昭和の古い団地を背景に、南米系の面立ちの人々がいい顔で写っている。ブラジルをはじめ南米からの出稼ぎ労働者が多く住まう、愛知県豊田市の「保見団地(ほみだんち)」である。 作者は約20年にわたってこの団地を撮影してきた。写真は静かに提示され、人々…

【ART】R3.7/17~9/5_船場アートサイトプロジェクトVol.1 @船場エクセルビル

いつの間にか開催されていた、大阪・船場のビル一棟を使ったアートイベント。気付いたら会期が終わりそうになり、気付いたら会期延長してくれていた。新型コロナ禍で動きづらかったのを勘案してくれたのだろうか? 感謝いたします。 写真と動画が主な展示で…

【写真展】R3.8/18~8/22_幸得 feat.okajimax「Fusion」/ホイキシュウ「進撃のまりりん☆GOGO!」@BEATS GALLERY

ビーツギャラリー訪問の続編、続いて「gallery B」の幸得 feat.okajimax『Fusion』と、2F「コビーツ」のホイキシュウ『進撃のまりりん☆GOGO!』をレポ。それぞれ全然違う作風ながら、「写真」行為がねっとりと絡み付く濃度を感じた。 【会期】2021.8/18(水…

【写真展】R3.8/18~8/22_manimanium feat.町田康「汝我が民に非ず」/@BEATS GALLERY

老舗の写真系・自主運営ギャラリー「BEATS GALLERY」が、2021年3月10に江戸堀・阿波座から生野区新今里へ移転した。遅れ馳せながら今回の訪問が移転後初めてとなる。建物4階のうち1階と2階の展示スペースで3つの展示が催されていた。 今回は、町田康とma…

【写真展】R3.7/30~8/31_鈴木敦子「Imitation Bijou」@ビジュアルアーツギャラリー大阪

タイトル「Imitation Bijou」は「模造宝石」の意味だ。作者はiPhoneで身近なものを撮り、『自分にとって真実や大切なものは何かという疑問を抱き』つつも、『たとえ誰か(他者)にとって偽物と思うものであっても、自分(個人)にとっては真実で価値があるも…

【写真展】R3.7/10(土)~8/7(土) 25周年記念「山沢栄子、岡上淑子、石内都 2021」@The Third Gallery Aya

1996年のオープンから25周年を迎えた、写真・メディアアート類を扱う「The Third Gallery Aya」の記念展。石内都、岡上淑子、山沢栄子のグループ展という、主に女性作家を取り上げてきた同ギャラリーを象徴する、パワフルかつ贅沢な企画だ。美術館で観るのと…

【写真展】R3.7/13(火)~7/25(日) 野口智弘「Slow Waltz ー終わらない序章の始まりー」@ギャラリー・ソラリス

フィルム時代からずっとリコーGRシリーズの開発に関わってきた「ミスターGR」こと野口智弘のスナップ写真群。コンデジ:GRの真価を引き出した作品群に深いやばさ(誉め言葉)を感じた。ひいい( ´ ¬` ) 【会期】2021.7/13(火)~7/25(日)

【映画】監督:スー・ウィリアムズ「デニス・ホー・ビカミング・ザ・ソング」

香港民主化運動と、その最前線に立って戦っていた、香港ポップの国民的スター:デニス・ホーのドキュメンタリー映画である。 歌手としての人生、香港人としての人生を振り返りながら、2014年の雨傘運動に身を投じて以降、中国を敵に回したことで様変わりした…

【映画】監督:ヨハン・ヨハンソン「最後にして最初の人類」

( ´ ¬` )人類史の終わり=未来から始まる、「逆側から来た神話」という感の映画。延々と建造物がクローズアップされ、女性の声で20億年未来からのナレーションが語られる。なんだこれは。私は何を見てるんだ。そうか神話を聴いてたんだ。

【写真展】R3.4/3(土)~7/25(日)_石内都展「見える見えない、写真のゆくえ」@西宮市大谷記念美術館

2017-18の横浜美術館『肌理と写真』以来の、石内都の大規模な展示である。横浜での展示とは異なり、作者が撮り続けてきた「目に見えない時間」の脈を辿りつつ、近年の日常の中で撮られたスナップと、台風の浸水で被災した自身の収蔵作品を写した写真を提示す…

【ART】R3.7/16(金)~7/18(日)「表現の不自由展かんさい」展示内容(後編:韓国関連、その他) @エル・おおさか

騒動だけが膨れ上がった「表現の不自由展」、その実際の展示内容をレポ・後編。 後編では、韓国と日韓歴史認識に関連した作品と、その他の作品について取り上げる。うわあ。語りにくいなあ。言っとくけど穏便なことしか書かないすよ。あたしノンポリ猫ですか…

【ART】R3.7/16(金)~7/18(日)「表現の不自由展かんさい」展示内容(前編:天皇関連) @エル・おおさか

実行委員会と大阪府、主催者側と右翼団体との不穏な対立、間に立つ警察、そして相次ぐ脅迫と報道。もはや何の展示だったのか、展示の趣旨、作品の意味がそもそも何だったのか、色々と置き去りになっていて見失われていそうな「表現の不自由展」について、そ…

【ART】R3.7/17(土)「表現の不自由展かんさい」これまでの経緯~現場で整理券待ち @エル・おおさか

7/17(土)、「表現の不自由展かんさい」に行ってみたの巻。 入場のためには整理券をゲットしなければならず、どのぐらいの混雑になるか想定できなかったため、とりあえず早めに向かいました。ひー。 右翼的な方々と主催者側の方々とが車道を挟んでにらみ合…

【映画】ルネ・ラルー監督「ファンタスティック・プラネット」@第七藝術劇場

赤い目をした青い巨人が、我々と同じ姿形の小人族を支配し、飼育している。全てのものが奇異な、惑星イガムでのシュールな物語。覚めない悪夢のようなビジュアルにクラクラする。 弱者を飼育・駆除する異文化の描写から、物語は弱者による革命の話へと発展す…

【映画】劇場版 少女 歌劇 レヴュースタァライト

※Twitterで本作を劇推しする超熱の投稿を見たというだけの理由で、観に行ってきました。予備知識なく、TVアニメを見たこともなく、ただ「Twitterで凄いと言ってる人がいたので観に行ってみた」というだけで、その後も調査等なし。人体実験レポと思ってお読み…

【映画】香港インディペンデント映画祭2021_「僕は屈しない」「2019年 香港民主化デモ 傑作短編集」

観ている最中から興奮や感情移入や戸惑いや自問自答で目まぐるしく気持ちをかき乱された。2本の映画はどちらも香港民主化運動の生のドキュメンタリーで、戦う、戦う、どこまでも戦う香港市民・若者らの姿に、次第に共感さえできなくなり、ただただ畏怖する…

【映画】監督:岩間玄「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道」@シネ・リーブル梅田

よいドキュメンタリー映画だった。 森山大道という写真界の生きるレジェンド。その歴史をサッと掴みつつ、現役として活動する「いま」を記録した、貴重なドキュメンタリーである。入り間口が広く、森山大道のことを全く知らない層にも開かれていた。 80歳を…

【写真展】R3.6/19(土)~6/27(日)_波多野祐貴「undercurrent」@gallery176

日常・地元の裏で、異世界のような色彩と闇があった。その邂逅を果たした作者が、人知れず上げる眼の歓喜のような作品群。コロナ禍がもたらした偶然の再発見だろうか。 【会期】2021.6/19(土)~6/27(日)

【写真展】R3.6/16(水)~7/10(土)_「フィリップ・サルーン展」@BLOOM GALLERY

名だたる写真家のプリントを手掛けた職人による、 古き良き「幸せなスナップ」の系譜。被写体への愛情と丁寧なプリントが素敵だ。作品の評価とは別に、こういうスナップ写真と撮影がもっと愛されてもいいのになあと思ったりします。みんな動画だけじゃなく写…

【写真展】R3.4/3~7/4_山内悠「惑星」@入江泰吉記念奈良市写真美術館

山内悠は多才だと思う。作風の幅だけでなく、会場の構成、各パートの並べ方やサイズのリズム感、題字の見せ方など、様々な要素がデザインとしても心地好く、モンゴルに対する共感の豊かさが溢れている。この共感を無限大に広げたところに認められる存在や時…

【映画】フィル・メッキー監督「DREAMS ON FIRE」@シネ・ヌーヴォ

夢 × TOKYO × ダンス、ダンサーになりたいという夢を叶えるために上京して、夜のTOKYOに揉まれながら、逞しく成長してゆく少女の物語。が、想像以上に粗くいびつな、良さと悪さが極端な映画だった。

【映画】監督:キム・ミレ「狼をさがして」@九条シネ・ヌーヴォ

1974年「東アジア半日武装戦線」という名で企業のビルを爆破した集団がいた。今では隔世の感のある話、その当事者らの「現在形」を追うドキュメンタリーである。浮かび上がってきたのは、当時のことを語らせないかのように閉じ込める警察権力の姿だった。

【写真展】R3.5/25~6/6_熊谷聖司「眼の歓びの為に 指の悦びの為に この大いなる歓喜の為に わたしは尽くす」@ギャラリー・ソラリス

休みなく精力的に活動し続ける写真家・熊谷聖司、その姿は常に背中しか見えない。だが作品には幸いにもその「眼」が正面から捉えたものが写されている。 本展示に先駆けて、2021年2月に同名の写真集が刊行され、同時に東京・吉祥寺の「book obscura」でその…

【映画】堀貴秀監督『JUNK HEAD』@第七藝術劇場

お馴染み定番のSF世界の設定に、味のあるストップモーションアニメの風味、執念の手作り迫力、細部の超絶クオリティ。 だけではない。 話が進んでもずっと脆弱なボディのままの主人公、そしてクエストが「上へ」ではなく底なしの「下へ」と落ちてゆくこと…