KYOTOGRAPHIE2016
四条界隈、両足院(建仁寺内)、何必館、村上重ビルをかけあしでレビュる。
2016年のKGは、サラ・ムーンの独壇場である。
そして裸体。アルノ・ラファエル・ミンキネンの肢体。
今年も写真はとても熱い。
- ○ASPHODEL/『Light by Erwin Olaf』アーウィン・オラフ(Erwin Olaf)
- ○両足院(建仁寺内)/『YKSI:Mouth of River, Snake in the Water, Bones of the Earth』アルノ・ラファエル・ミンキネン(Arno Rafael Minkkinen)
- ○何必館・京都現代美術館/『1,2,3,4,5展』サラ・ムーン (Sarah Moon)
- ○村上重ビル・地下/『BRICOLAGE PHOTOGRAPHY』K-NARF
○SferaExhibition/『LA-LV/LDN-Process』アントニー・ケーンズ (Antony Cairns)
(※会場内、作品の撮影OK)
京阪三条から四条に向かって歩くと、古い町並みにソリッドな建物が光る。
Sferaビル。ほんとにここに写真が? 家具屋のようだが、
会場。都市景の作品に合うコンクリートのひんやり感。
そして普通には焼き付けてないという。
コロタイプという手法が登場。
「コロ」は「コラーゲン」の意味で、ゼラチン質である。
感光液を含んだゼラチンは光に当たると硬化し、それに水を加えると硬化していないところは膨張、硬化したところは水を吸わず、ひだひだを形成。その凹凸に油性インクが染み入って、転写すると画像がきれいにプリントされる。
ていう。
デジタル全盛期ゆえか、写真史の起源に立ち返るような手法が用いられている。
○アルミ板に乳剤を塗って塗り付け、ネガを露光して画像を定着
○35㎜モノクロネガを現像後、白黒ポジ画像に変換
○キンドルの電子インク画面(電気泳動方式、ページ表示の切り替え以外では電力を消費せず、同画面を表示させ続けるだけなら白・黒の粒子は動かないため、写真?作品として展示が可能。スゲー)
幻想的である。我々が普段よく見る都市景写真ではない。
とろみがすごい。外殻から抜け出た都市の魂を写しているようだ。
これがうわさのキンドル作品。
インパクトはなかったが発展性がある。
ポジのマウントなつかしい。。。
ゼロ年代初頭はこれでいろいろしていた。
いかんせんわたあめのような作品で、私はどちらかというと明瞭な構図、描写を好む性分であるため、深入りはできず。
○ASPHODEL/『Light by Erwin Olaf』アーウィン・オラフ(Erwin Olaf)
(※会場内、作品の撮影OK)
くたびれた町の一角に会場。
たいへん著名なフォトグラファーであるとのこと。
「彼のレンズ越しに写し出される完璧な美学と卓越した物語性」・・・ヴィンテージのワインのようなあれだが。
そして本企画は、世界最古のシャンパーニュメゾン(製造者、とでも訳すとよいかな)のルイナール(Ruinart)社が写真家とコラボし、自社のチョークセラー(ガロ・ロマン時代の石灰岩の石切場を利用した貯蔵場)の遺跡を撮影したもの。
コミカルさに目を疑った。美・・・? 珍奇というか、
異星人・・・
しかしプリントはめちゃくちゃ綺麗。まちがいない。
遺跡の多様な表情がぬらぬらと立ち上る。
そうこれこういうのがいいね。しみついた精霊を訪ね歩くような。
真ん中の作品はグルスキーのカミオカンデに思えて仕方なかった。
古代の世界は未来感と強くリンクしている模様。
ガロ・ロマン時代 ≒ BC3C~後5Cあたりを指すらしい。日本は弥生時代後期~古墳時代です。
最上階では例のルイナールのシャンパンが飲めるということで
一杯2500円。
\( ゚q ゚ )/ あ?
通貨レートおかしいよう。とうとう日本が戦争に負けたのかと思った。肩を落としながら退店。
○両足院(建仁寺内)/『YKSI:Mouth of River, Snake in the Water, Bones of the Earth』アルノ・ラファエル・ミンキネン(Arno Rafael Minkkinen)
(※会場内、作品の撮影禁止/庭園はOK)
この作品は見ないと損する\(^o^)/ 美しさというよりとにかく面白い、軽妙ながらかなり尖った
何かというと、人体彫刻家と言いますか、自身の肉体、存在を以って自然や風景、目の前の地形などとインスタレーションをばっちりきめる、身体芸術家である。表出方法が写真というだけで、このオッサンの存在自体がアート。
実際どの写真も写っているのはこのオッサン。だが、それらはセルフィー最盛期の現代において衝撃である。写っているのはオッサンのはずだが、その個性とか我を一切感じない。一本の樹として、岩として、その「場」の一部となって溶け込んでいる。田中泯かよ。
ミンキネンご本人の長文があるので読まれたし。
つまりこの建仁寺・両足院で作品展示のコラボおよび撮影のコラボが実現しましたということで、会場のルート上には彼の作品が点々と散りばめられ、そして彼自身が両足院の庭と一体化した様子が示される。一体化は成功していた。この人は本物だ。前衛とかそういうものですらない。素人にも判る。おそらく、一体化することに人生を捧げてきたのだ。地球を感じた。
両足院はこう。
庭もいいんだよー。こけをふまないでね。
<KG Associated Programs>
KYOTOGRAPHIEとの連動企画である。
○何必館・京都現代美術館/『1,2,3,4,5展』サラ・ムーン (Sarah Moon)
(館内撮影不明/KGパスポート提示で200円引き)
八坂神社へ向かう例の一本道の道中に「何必館」(かひつかん) はあった。えっ。ここ美術館だったの。初めて知った。そして2002年にもサラ・ムーンの展示が催されていた。えっ。発見が多い。
幼女の仮面舞踏会を思わせるドキッとする写真がキーになっている。
サラ界に呑まれよう。ああ。
会期に注目。KYOTOGRAPHIEは5/22(日)で終了するが、サラ・ムーンは6/26まで会える。わあい。女子力の闇の中へレッツゴー。
この人の世界は半端ではない。なんせ似た作品・世界観をほかに知らない。
ストレートに表わせる言葉がないが、鑑賞していると、アリス少女のように穴にいつの間にか落ちていて、気が付くと漆黒の霧雨したたるサラ世界の真っただ中です。無垢な女児なのか、思春期の物憂げしい女子なのか、熟れた艶の載った女性なのか。
何必館を象徴する、たいへん素晴らしい吹き抜け天井。
このセンスは京都にしかありえないと思った。
サラ・ムーン作品の中でもド級の重みで襲ってきたのは「黒ずきんちゃん」。
不穏すぎる、疾走なのか失踪なのか、
思春期を飛び越えていきなり女児から女性に踏み越えたような、崖から落ちたような、
こうなんていうかやばい
セット写真集はめちゃめちゃ高いが、単冊なら4000円で買える。
地下は魯山人が展示してあるので、サラ・ムーンと魯山人の書籍が併売という面白いことになっとります。
寄稿「サラ・ムーンの幻影」梶川芳文氏。
ついでに魯山人。
めちゃめちゃ面白かった。
○村上重ビル・地下/『BRICOLAGE PHOTOGRAPHY』K-NARF
(※撮影自由、無料)
謎度の高さでは際立っていたK-NARF氏の展示は、知的なおもちゃ箱のごとき空間でより一層の謎であった。
これだよ。DIY工房。
色んな装置を手作りして、それで撮影や投影を行う模様。
見ても意味が分からなかったので推測である。
我々はというと変なスイッチが入り、反射面を用いたり、会場隅の椅子を用いてポートレイト撮影をし始めるなど脱線がはなはだしく、間違えた方向にインスパイアがきまる。
作者も堂々としたもので、これらの得体の知れない手作り機構の数々について「ただのゲームであり、ただの彫刻」「何が出来るかは分からん」と、言語を放り投げ気味でますます手におえない。 まあ「好きでやってる」感がすごいからそれが正解ですわなあ。
ブラブラブラ
これで大体全部観たことになるが、最後にやはり、良かったもの上位5点ぐらいはもう一度おさらい巡回をしておきたいと思う。そのぐらい、KYOTOGRAPHIEは、すばらしい。