nekoSLASH

ねこが超です。主に関西の写真・アート展示のレポート・私見を綴ります。

【ART】ジョーン・ジョナス「Five Rooms For Kyoto:1972-2019」@ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

5つの部屋でジョナスの功績を特集した展示。パフォーマンスと映像を組み合わせたメディア表現者について知る良い機会です。

【会期】2019.12/14(土)~2020.2/2

 

 

 

予備知識ゼロで立ち寄った展示。パフォーマンスと映像の作品で世界的に有名な作家、ジョーン・ジョナスの特別展。5つの部屋に超端的にまとめられた氏の経歴、功績を辿ります。しかも無料。コンテンツはパフォーマンス映像と、作中に読み上げられたり字幕で現れるテキストの日本語訳。

 

◆第1室_「Ranimation」

会場にはいってすぐラグジュアリーな闇と宝石の映像が立っている。ギラギラ光るクリスタルと後ろから鳴る音楽が欲情に刺さる。なにが良いかというと、やはり人間は暗いところで光っているものに惹かれる。宝石や星が好き。虫みたいですけど。引き込まれて入っていく。

 

その壁面の裏へ進むと、4面の壁で映像に囲まれた場があり、雰囲気が逆転する。ラグジュアリーな宝石の映像の裏面はそのままほぼ同じ趣旨の映像。その両脇に氷山や流氷、山羊など自然に関する映像が2面。最後に黒い液体の中に氷が溶けて乱れる映像。

ここでは自然環境のバランスが崩れること、地球の氷が溶け出していくことが示唆されている。墨汁のような真っ黒な液体に溶ける氷の映像には、真っ黒に輝く物体が多数重なっている。これらは前段の豪奢な欲望の結晶体、輝くクリスタルを反転させたものだと思われる。人間の欲望が、地球を溶かすということか。

 


Joan Jonas「Reanimation」1 @ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA


Joan Jonas「Reanimation」2 @ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

 

 

 

◆第2室_「Lines in the Sand」

ギリシャ神話に登場する女性、ヘレネーの物語を題材としたパフォーマンス作品ドクメンタ11(2002)初演)で、H.D.ヒルダ・ドゥリトルのペンネーム)による『エジプトのヘレネー』(1961)を下敷きとして制作された。同作品ならびに、H.D.による『フロイトにささぐ』(1956)からテキストが引用されている。神話ではトロイア戦争ヘレネーを巡る争いだとされているが、H.D.は、ヘレネーはトロイアではなくエジプトへ行ったというエウリピデスの戯曲の設定を採用している。

 (展示パンフレット冊子より)

何を言っているか全く分からないが、粗く調べたところフロイトにささぐ』は詩人である作者がフロイト精神分析を受けて書かれた散文的なもの、ということで、では「ヘレネー」とは何なのか、セリフの翻訳文を見ると彼女はギリシア神話の女神であるらしい。本作はヘレネーと詩を辿る物語なのだろうか、戦争の話だろうか、物語を語るということについての話なのか。そもそも「トロイア戦争」が神話の中の話だということも知らなかった。作者がエジプトの代わりにラスベガスのルクソールホテルというフェイクのエジプトを訪れ、路上で踊ったりするのが面白かった。

誰が状況を設定したか? 誰がプレイヤーを家から誘い出し、壁の内側へ閉じ込めたのだろうか。終わりのない、複雑な質問で私たちを鼓舞するために? 結局なぜ彼らは戦ったのか? ヘレネ-は悪魔か女神か? 彼らはどのように壁を測ったか? 鉄の馬は古代の象徴だったか、それとも新しい破綻槌だったのか? ヘレネーは星、船、寺院など、また別の象徴だったのか? 物語はどのように終わるだろうか?

 (会場の翻訳文より)

 

 


Joan Jonas「Lines in the Sand」@ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

 

   

◆第3室_「Organic Honey

 

1970年代、作者が日本でSONYのビデオカメラを入手し、即興パフォーマンスの映像を撮り始めた頃の作品が5点ほどあり、作者のキャリアの始まりを知ることができる。全てモノクロ、粗いが衝動の力がある。プロジェクターの大きな映像が2点、日本の能面を元にした仮面を付けたり羽飾りを纏ったり裸で立ったり動いたり、顔がアップになったり物体の輪郭をドローイングし続けたり、鳥のように鳴き声を上げたり金槌を打ったり、色々なことが起きている。

タイトルの「Organic Honeyは作者が作り出した別人格のキャラクターを指し、羽飾りや仮面を纏う。作者にとって重要な存在とのことだ。 


Joan Jonas「Organic Honey」@ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

 

3台の小さなビデオモニターはより実験的な映像がミニマルに繰り返されている。鳥のような鳴き声を上げ続ける映像、映像が無限に上から下へスクロールしているような映像(ビデオの不具合により水平の黒い線が上から下へ走り続けている)などだ。意味は分からないが素通りできない迫力がある。


Joan Jonas「Organic Honey」2 @ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

  

 

 ◆第4室_「Moving off the Land Ⅱ 」

2019年制作の映像が2本。どちらも自然環境の話題で、海洋生物と作者が接続されている。鯨やタコなど海洋生物の体の構造と人体のそれがさほどかけ離れたものではない、といったことが語られている。パフォーマーはエビや魚が動く映像を受けながら動く。壁面には味のある手描きの絵が掲げられている。

 


Joan Jonas「Moving off the Land Ⅱ」@ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

 

 

◆第5室_「Teaching」

作者が長年、芸術分野で教育に携わってきたことを顧みるスペース。紙資料や学生らのパフォーマンスなどが展示される。即興パフォーマンスは実は入念にリハーサル、振り付けで準備されていることが示された。紙は、パフォーマンスの指導書、粗筋だと思うが、新しい詩の一形態のように、もう意味が分かりません。すごいことやってるんですね・・・。

 

 

 

( ´ - ` ) 完。