nekoSLASH

ねこが超です。主に関西の写真・アート展示のレポート・私見を綴ります。

【暗室】レンタル暗室「BE= Lab & Gallery」@大阪・北浜

【暗室】レンタル暗室「BE= Lab & Gallery」@大阪・北浜

みなさん、暗室で写真を焼いたことはありますか?

雑誌「日本カメラ」――「銀塩Today」コーナーの取材で、大阪・北浜のレンタル暗室『BE= Lab & Gallery』(ビー)さんを訪れました。 モノクロ銀塩専門のお店です。

 

 

 

( ´ - ` ) 銀塩
 
 
 
 
( ´ - ` ) 酒盗とかままかり的な響きですが
 
 
 
 
( ´ - ` ) 酒・めしのアテではありません。
 
 
 
銀塩てなんやねんというと、フィルム写真です。
 
 
 
写真=デジタルとなってしまった今、フィルムは高いし、販売終了するし、印画紙は売ってないし、現像用品は手に入らないし、現像&プリントの店出しも高いし、etc、etc、現世は辛い事しかありませんなあ、
 
 
(  >_<) ACROSⅡの復活まだなん。
 
(今年6月の富士フイルム社のプレスでは「今秋復活」との発表だった)
 
 
しかしフィルム写真は滅びない。デジタル全盛の今も、「フィルムやってみたい」「自分でプリント焼きたい」との思いを抱く人々が一定数おられます。キャリア、プロ・アマ、年齢問わず、いてはります。そんな方々の声に答えるのが、こちらのレンタル暗室。
 
 
<★link> BE= Lab & Gallery
 
 
 場所は京阪・北浜駅から徒歩で4~5分。

〒540-0039 大阪府大阪市中央区東高麗橋2−28 コジマビル 2階
 
 
( ´ - ` )ノ こんちは。
 

 

ビル2階にあがる。

 

ビル2階です。作品を見ながらのくつろぎ空間。この左右がギャラリーとラボに分かれていて、ラボの奥に暗室があります。 

 

 
オーナーのゴトーマサミ氏にお話をうかがいました。
 
「BE=」は今年2019年6月にリニューアルオープンしました。それまでは「B工房」という名称で、2002年から続くモノクロ専門暗室の老舗でした。このたび、内装の刷新に加え、ギャラリーも新たに併設へと大きな進化を遂げました。心機一転ということで、店名も改められました。
老朽化した店内の改修には、クラウドファンディングで寄せられた資金が活用されました。
 
 
さっそく暗室を見せていただきましょう。 
 

(1)モノクロ暗室

 

( ´ - ` ) こんちは。

 

 

ガチャッ

 

 
( ´ - ` )  あっ この香り。 
 
 
懐かしい、現像液や酢酸の香り、
 
 
 
( ´ - ` ) あっあっ。
 

 

 

( ´  ー` ) あっー。

 

 

匂いは脳を直接揺さぶり封印されていた記憶を (略

 

 

暗室の利用規約などを簡単に紹介しましょう。

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■【料金】最初の1時間:2,000円、以降30分500円

■【フォーマット】4×5、ブローニー、35㎜

■ 最大5ブース(通常3ブース)

■【営業時間】13:00~21:00(不定休・完全予約制)

(冊子より転記)
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暗室はレンタルだけでなく、ゴトー氏自ら焼きの指導に当たってくれます。初心者にも玄人にも、幅広くモノクロ銀塩の世界に触れてほしいとの思いから、段階に応じた指導を行ってくれるとのこと。

また、単発のレンタル利用だけでなく「ワークショップ」としてコース型の講座もあります。 

 

暗室はかなり広い。ゆったり作業できますね。

 

フィルムの現像と焼きは神秘的です。像が印画紙の中に浮かび上がってくる瞬間、複製された世界が新しく蘇るような瞬間を目撃することになります。わああ。箱に取り込んだ光と影が、時間をおいて紙の上に再び現れる。それはデジタルには真似できない、秘術のようなものです。わああ。

オーナーのゴトー氏自身が写真作家であることから、モノクロ銀塩には深い思いを抱いており、銀塩モノクロとデジタルとの差異について、話が尽きませんでした。

銀塩モノクロ写真とは何なのか? 外界、光を物質化し、紙の形にしたものである。モノクロはカラーと異なり、世界の見た目をそのまま表現するものではない。それは想像を催させる美しさを持つ。人に想像を催させるから美しさが生じるのかも知れない。カラー写真が外界を色で記録・再現することによって美を持つこととは大きく異なる。それにデジタルのカラー写真には、記録性や描写力の観点ではフィルムとの互換性が一定はあるが、デジタルのモノクロはどこまでいってもデータ、「画像」というニュアンスが強く、銀塩フィルムが現わす光と影と奥行きとは、全く別物である。だが残念なことにカメラメーカーは、デジタル化の初手から、デジカメにしか出来ない表現領域を追求するのではなく、銀塩の上位互換としてのデジタル化を標榜し、追求することに血道をあげてしまった。結果的に自分の、写真文化の首を絞めてしまった。――そのような話をした。

 

ゴトー氏がモノクロに限定した暗室を運営してきたのは、自身のモノクロ銀塩への想いだけではない。カラー現像は温度、色調の調整が難しく、素人にはハードルがやや高いという。数多くある「写真」の表現手段のひとつとして、より多くの人に「モノクロ銀塩」に触れてみてほしい、願わくば、長く続けてもらいたいという思いからだ。

 

実際、モノクロの暗室ワークはフローさえ覚えればシンプルで、それほど難しくはない。作品としてクオリティを追求するとなると大変な道のりだが、「やってみる」「楽しんでみる」にはうってつけだと思う。

 

これは引伸ばし機。ネガを挿入してスイッチ入れると、内部から光が照射され、ネガの像を下の台に置いた印画紙に焼き込みます。

 

私はゼロ年代初頭の学生時代、まだそれはデジカメ黎明期だったのでフィルム写真にはまっており、勉強もろくにせず、PRESTO、ACROSを36枚撮り20本パックで買ってはトートバックに放り込んで撮影し、街を歩いては撮影し、勉強もろくにせず、ヨドバシに大量の現像を叩きこんでは、上がってきたネガの束を手に、勉強もろくにせず、暗室にこもり、モノクロを焼く日々を送っていました。おかげで「自分は写真は好きだが、職人仕事には向いてない」と実感しました。勉強しろよ。

でもそういう気付き、自分は「写真」の幅広い表現のうちどれが向いているかを知るためにも、一度はモノクロ銀塩に触れてみることは大切かもしれません。勉強しろよ。

 

 

( ´  ー` )しません。

 

 

(2)ギャラリー

2019年6月より新たにオープンしたギャラリーは、かつて茶室として使われていた間取りで、ざっくり3.4m×2.6mほどの、落ち着くスペースです。

 

「いつかは展示をしたいと目標を持ってもらえるように」「写真を続ける上でモチベーションを持ってもらいたい」、それがギャラリーを新たに併設した理由だそうです。

「展示」までたどり着いて、初めて写真は「作品」となることを、利用者や受講生らに最もシンプルに伝えてくれる場となるのではないでしょうか。

実際、どれだけ会心の作を手元で作り出すことができても、Facebookやインスタに上げる際には、内側から放つ光や、闇の奥行きはWebでは確認することができません。光を物質として表す限り、それは物質として「展示」しないと、「作品」になることは永遠にない、だから皆さん展示をがんばりましょうという話になります。しましょう。

 

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■【料金】2週間:11万円 / 1週間:6万円(税込)

■【営業時間】13:00~19:00(最終日18:00)(月火定休)
 ※休廊日での展示希望についても応相談

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p( ╹◡╹)p お安い。

 

この料金設定も「出来るだけ展示のハードルを下げたかった」「展示をやるなら最低でも2週間は必要」との考えから、2週間推奨のプランとなっています。ほんと1週間って無理ゲーです。どうせやるなら2週間の方が絶対にいい。

 

 

この時は、88歳になる写真作家、河瀬文昭《88の雲》の展示が開催されていました。

 

西宮市の自宅の物干し場から見る、空の表情を撮り続けた写真です。A・スティーグリッツ然り、荒木経惟しかり、写真家は人生の何かを空に見るのかもしれません。

 

写真集も展示・販売されていました。かっこいいですね。

「BE=」では、展示にかかる額装のコンサルティング、レンタルもしっかりやってくれます。額の注文が必要になった場合は、「金丸真」さん(大阪が誇る、頼れるフレーム専門店)と連繋してくれます。

 

展示関連だけでなく、写真集作成のサポートもしてくれます。デジタルなら直でIllustratorInDesignの作業に移行できますが、銀塩写真から写真集を作る場合、1枚1枚をスキャンしデータ化しないといけないという、非常に厄介な作業があります。ありえん。考えたくもないぐらいめんどくさい。そこをサポートしてくれるのは非常に強力です。

また、写真家は往々にして、「撮る」「焼く」ことに長けているが、「編集」と「デザイン」については経験がなく、そんなん知らん、どうしたらいいか全然分からん、ということが多々あります。 まあ私のことです。あるよね、そうなんすよ、紙とか色とか余白の幅とか印刷会社とか、全然わからん。そういうところを、プロと連携して助けてくれる。これも非常に強力です。

 

ポイントは、あくまで「写真集」であって、安価でラフなZINEとはまた別のものです。ZINEはコンビニのコピーで作るぐらいの自由度がウリですが、安価ゆえに耐久度からして違いますね。「写真集」は作者の人生とか思想とか色々載ります。たいへんです。たぶん一人では作れません。ええ。たいへんや。

 

 

( ´ - ` ) たいへんや。

 

 

たいへんすぎて気を失いそうです。これがギャラリー側の受付です。おしゃれですね。 

 

フィルムカメラを持ってないお客さんでもフィルム体験できるよう、使い捨てのモノクロカメラで撮ったり焼いたりできるワークショップもあります。間口が広いです。

 

取材と言いながら、話題の大半は銀塩写真文化の話と、みんなフィルムは一度はやってみてほしいなあという話でした。やってほしいなあ。お金はかかりますけど、やっぱり1枚1枚の撮り方が全く変わるし、シャッターと巻き上げの物理的な手ごたえも違うし、「秒」に向き合う重みの違いは、快感かつ感動ですよ。ええ。やるべきだ。

 

 

( ゚q ゚ ) やるべきだ(大きな声)

 

 

はあはあ。

 

フィルムやってみたいなーと思ってる方、やってみたけどもう少し美しく仕上げてみたい、といった方は、まず相談してみてはいかがでしょうか。

来られる客層も、20代・30代の女性から、80代・90代の超ベテランまで幅広く、初心者もいればプロカメラマンもおり、地域も関西だけでなく、四国や中国、九州からお客さんが来ているとか。それだけ銀塩写真をめぐる状況が厳しくなっているということでしょうか。しぶとく生き続けてほしいものです銀塩写真

  

シロクマのビービー君でした。 

 

 

( ´ - ` ) 完。