写遊百珍

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ生&TA。各種講座のレポや、関西・東京の写真展、アート展示を特集。

【写真展】大阪芸術大学 写真学科 平成30年度卒業制作選抜展 @キヤノンギャラリー大阪

【写真展】大阪芸術大学 写真学科 平成30年度卒業制作選抜展 @キヤノンギャラリー大阪 

全体として、昨年、一昨年のニコンでの展示とは印象が全く違い、明るく華やかな(若々しい)写真が多くて驚いた。入ってすぐの正面にはモニターが立ち、青い海を泳ぐクジラの映像が鮮やかで、にわかには大阪芸大の卒展とは気付かなかった。 

 

昨年までは、作家性としてテーマを重視し、モノクロなど落ち着いたトーンを好み、個人でも校としても統一感を出していたように感じる。今回は一変して、めいめいの意欲と感性に任せ、好きなことを好きに表現するようにしている。指導方針が大きく変わったのだろうか?

本会場では9人(だったと思う)の選抜展示だったが、この後も3月まで大阪市内の他会場を巡回してゆくので、会場に応じてメンバーの入れ替わりがあるかもしれない。まだ校としての作風には断定的なことは言えないが、一気に自由で「今っぽい」作風になったのが驚きであった。キヤノンギャラリーは普段から、色味や被写体のはっきりした作風の展示が多いので、これはアリだと思う。青い海とクジラの雄姿というビジョンはまさにキャノンギャラリーが得意とする作風だろう。

 

例によって時間的余裕がないため、特に印象的だったお二人を勝手にピックアップしてメモさせていただく。

 

■庄司晃正『inout』

細身のスキンヘッドの男性を、大阪の各所の建物内、商業施設などに置いては撮影している。壁に掲げられた作品群からは、モデルと撮影者のプライベートな親しみしか見えず、特にそれ以上のことを読み取るのは難しかった。

しかしフォトブックは面白かった。全く見え方が異なる。同じカットも別の写真に見えた。スキンヘッドのモデルは、都市空間にうろつく、匿名の「歩くオブジェ」となっていた。特に前半は尖っていて、作家側の感情移入が抑えられていて面白かった。

ブックは小さめだがページ数が多く、写真の質感もごわごわとしており、それがまたスキンヘッド氏を少し異質な住人へと変容させている。ブック前半の展開は異様である。スキンヘッド男性のバストアップ写真と、植物の写真とが、交互に並んでいく。つまり両者は生きるオブジェとして対等である。この突き放し方が見慣れたミナミの界隈を異世界に転じさせる。

鑑賞者は写真「作品」を観に来ているのであって、それはまだ見ぬ短編小説や短編映画と出会いたいという気持ちに似ている。そこで作者と被写体の個人的な思い入れを見せられても、鑑賞者は「あなたは部外者だ」と言われるだけになってしまう。これはわりと気まずい。

だが徹底的に私情を消せば、あるいは私情を過激に盛る、または私的関係のメカニズムや欲望そのものを描写するならば、観客がそこに居合わせる余地ができる。参加が肯定され、「鑑賞」が成り立つ。そうしたことが発見できて面白かった。

 

 ■濱 緋里『Please Love Only Half』

こちらも写真集と壁面展示での展開がまた全く異なる作家だ。

身近な、作者と同年代の女性のポートレイトだが、所作が演技的である。個々人の部屋、生活の場で、カメラが向けられていることを完全に意識させた上で、明確にポージングをとってもらい撮影している。「絵」になることを目的としつつ、プライベートを撮っているのだ。 

タイトルの「half」は、ポートフォリオの序文によれば、1/2は自分、1/2は他者という意味が込められている。外部から与えられた性差などの役割に関係なく、自分を愛してあげてほしい、自分を大切にしてほしいと作者は繰り返している。

そのことを踏まえると、私的空間を撮られながらも、被写体に私的さが薄く、どこかプラスティックな人形のように振る舞いが硬直していることにも繋がってきそうだ。作者と同世代の仲間らが、与えられてきた役割に沿って生きていることと、自分の望ましいように生きていることとの、重ね合わさった状態を撮ろうとしているのかもしれない。

写真家とモデルが対等に「場」を作り写真を作る共働関係を、自然と結んでいる点が興味深い。かつては写真家は空気のようになれ、気配を消せ、あるいはもっと私景を撮れと言われたが、今では作家系ドキュメンタリー写真とファッション写真の境目はかなり薄れてきたことを実感する。

壁面では作品をフラットに横に並べて掲示しているが、写真集ではページに丸い穴が空いていて、各モデルの私的な空間を訪ねて回る、インターホンを押して扉を開けていくような感覚があった。穴で被写体の一部しか見えないからと言っても、覗きの欲望を刺激するものではなく、穴はデザインとして違和感がなかった。それゆえに、凝っているがあまり印象に残らない。技術力、器用さは抜群に高い作者だったので、続けていけば面白いものが出来そうな気がする。

 

 

( ´ - ` ) その他、遊泳するクジラを海中まで追った4K動画作品、レシート感光紙に4年間の学生生活で撮り溜めた写真を出力し続けたインスタレーションモータースポーツ作品、水を張った容器の底に光の世界をイメージした写真を配置したものなど、多彩であった。「写真とは、きちんと撮ってきちんとプリントして額装して壁に掛けるもの」という発想から自由だった。

大阪芸大が動画。ホームページ見に行ったらドローンもやってるようだし、動画教育がベーシックという時代になりましたね。筆者は動画を撮れませんし編集できません。あうあ。寝ます。

 

(´ε` )完