「木津川アート2023」、全13ある展示スポットのうち、ローカルな雰囲気の残る奈良街道沿いの4スポットをレポ。
浄化された地「関西文化学術研究都市」にも、昔ながらの暮らしの陰影があるのだ(うれしい)(だいぶうれしい)。
- ⑧旧 辻岡ボタン工場(手前・道路沿い)/キチキチカフェ理科準備室
- ◆児玉幸子「海と星々の庭―不可知の領域1」@1F
- ◆山下茜里「Re:mind」@2F
- ⑧旧ボタン工場(奥)/◆笹岡敬「Water 2023」「Reflex 2023」
- ⑨旧小尾邸/◆山下茜里「Re:mind」
- ⑩幣羅坂神社(へらさかじんじゃ)
- ◆笹岡敬「Reflex 2023 」
- ⑪十輪寺/◆黒川徹「輪」
( ´ ¬`) 木津=京阪神の中心から離れたローカルエリア=ほっこり田舎、という幻想を見事に粉々にされた私達。学研都市はフラットなのだった。あかん。ホンマタカシに混ぜ物をして薄めたような虚無郊外をボソボソと歩き続けていたが、
企業と新興住宅が並ぶ大きな車道から脇へそれて、奈良街道の方に入ると、田畑と古民家が生き残っている。やったね。前2回の「木津川アート」が瓶原(みかのはら)で、ローカルの出汁の超きいた土地だったので、やはりそういう味わいを期待してしまうんです。
会場No.8~11をやります。
ローカルによってモチベが上がった。田畑と共にある生活の場である。
( ´ ¬`) おいしいです。
⑧旧 辻岡ボタン工場(手前・道路沿い)/キチキチカフェ理科準備室
( ´ ¬`) これですよこれ。
この浄化されし虚無の学研都市(悪口がすごい)において、この朽ちかけた古い民家、いや工場跡は、かつてありふれた光景だったのだろうが、あれだけ大規模開発されまくった人工的な学研都市を歩いてきたら、いとおしい。大事なものです。ありがとうありがとう。
廃屋の処分を迫られている立場ではない一見さんだから、こうして無責任に「ローカル」を観光的消費しているのだという自覚があります。自覚の上にアートイベント鑑賞行為がある。美術にはいろいろありまして、搾取や観光の暴力性への批判意識を(略)
それはおいといて、ボタン工場。民家にしか見えないんだが工場です。
中庭から見た姿も完全に民家。おばあちゃんち感がいいよね。学研都市の反動です。だいぶ偏ってるな。
中には受付と「キチキチカフェ理科準備室」、出張カフェ&木津川アートショップ。
「総合案内所」よりも、地味にこのボタン工場の方が機能がはるかに充実している。あっちはスタート地点ということで、会場マップの配布ぐらい。ここはオリジナルグッズの物販はここしかないので見落としに注意。なお開店時間は土日祝の11~15時のみ。
この工場でかつて作っていたボタンを売っている。箱1つで250円(一人1点限り)とかいうお裾分け価格。色のついたボタンがすごい綺麗なんですけど。いいなあ。いらんけどほしい。
今思えば「木津川せんべい」買っておけばよかった。なんで買わんかったんや。
カウンターには小さいカフェコーナーを開設。理科のビーカーやね。仕組みがわからんけどビーカーで飲むんかな。
かわいい系のイベントグッズに並んで現れる、まがまがしい「目」。
後に登場する山下茜里の作品である。この目、最初見た時には苦手かもと思ったが、だんだん見る度に慣れてきて、一周回って「可愛い」と思うようになった。な、なぜだ。もっと他の展示で見る機会があったらもっとはまるだろう。奇妙な中毒性がある。な、なぜだ・・・。
◆児玉幸子「海と星々の庭―不可知の領域1」@1F
機械が取り払われた空間にボタンが並び、部屋の中央に七輪のような器具が置かれ、その上に真っ黒な突起が出ている。それはうねうねと動いている。磁性流体である。黒い突起は現われては消えるのサイクルを繰り返している。
だがボタンの配置と磁性流体装置が小さすぎて、空間と作品の関係などがうまく体感できなかった。現代の七輪、、、ボタンの配列を超えて、流体の傍に寄って見れたらまた違ったと思うが、勿体なかった。
あともう1カ所、別に入れる部屋があり、そこにも作者の磁性流体の作品があったようだ。うそやん。部屋あったけ?
展示室の外、中庭にはボタンを並べた絵が描かれていた。これは作品というよりワークショップかイベント参加者によるものか、自由にボタンを並べてよかったのか。キティちゃんかと思っていたが、これ木津川アートの公式アイコン(キャラ?)。
工場の名残が天井や壁には残されている。失われると惜しいと感じるのが世の常である。約20年前に工場は閉じたという。大正時代から3代続いたというから、なくなるのは勿体ない。なくなった後だが。
棚には時計などと共に、肖像写真が立てかけられている。何代目だろうか。すごい直立してはるよ。ビンッッ。
◆山下茜里「Re:mind」@2F
同じ棚に赤い腕・手が登場する。出たな。
赤いボタンを血の輝きのように纏わせている。ボタンが、棄てられたモノから、血の通った記憶の身体を得て具現化する。
2階への細くて急な階段を上ると、そこには目玉の大群が。
( ´ ¬`)大量に目玉がおる。
これキャラ名あってもいいな。目に見えない記憶や気配が具現化したものとすると、男性が古風な少年の心で可視化したものが宮崎駿「まっくろくろすけ」で、女性が現代の身体性から可視化するとしそれは血と目の形をとって現れる。という対比は分かりやすくて良いのか悪いのか分かりません。
足元に積み上がっているのは大量のボタンで、穴の開いていない、丸くて突起物だけがあるタイプだ。ボタンとして加工される途中の、未熟なものかもしれない。床のボタンが意外と存在感を強く帯びているため、天井や壁の赤い目は悪目立ちすることなく、対等の存在となっている。
物置には段ボール箱やら籠やらザルやらが押し込まれ、積み重なってひしゃげている。その間に散乱し積もるボタン。目もいてはります。
ここだけ時間が生々しく止まっている。いますよ。
⑧旧ボタン工場(奥)/◆笹岡敬「Water 2023」「Reflex 2023」
下・道路側の工場と、上にも工場がある。こんちは。
わざわざ結構な離れにしてあるの、なんでだろう。役割のためか土地の都合でバラバラに作らざるを得なかったのか。
牛舎のサイロみたいなやつが気になる。
笹岡敬「Water 2023」は水の入った筒が底から光っている。
馬でも飼ってたのかという謎の部屋。なにこれどうやって使ってたん。
何もなければ工場跡はただの暗くて静かな廃屋にすぎないが、作品=光と水の混合体があることで、この場所は記憶のまだ生きた場となっている。もっと作品が大きかったらどうなるだろうか。
中央には大きな工場跡が広がっている。何をどう作っていたのか謎。ボタン作ってたんですけども。廃墟のようで、そうとも言えない。
ジーとかヴィーとか鳴ってて光がまいまい飛んでる。電子の虫か。
笹岡敬「Reflex2023」。めっちゃ飛んでいる。色のついた光がヴィンヴィン音を立ててうねうね回りながら飛んでいる。機械の虫。ヴィーン。ヴィーン。
おる。
ライトにプロペラが付いていて、天井からコードで吊り下げられている。人間が滅んだ後に誕生する機械虫という感がある。レトロだのローカルだのと言っていたら未来に飛ばされるのがアートの常です。
ボタン製造の名残がある。綺麗や。
時の止まった中を漂いました。
⑨旧小尾邸/◆山下茜里「Re:mind」
少し移動して古い民家に来ました。窓全開にしてるやんと思ったら真っ赤な絨毯みたいなのが敷いてある。血の夢・・・! いや。
「わたしは、この「家」を少しだけめくることにした。」と作者。畳をめくると赤い異次元の世界と「目」が渦巻いている。作者の言葉を読むと、これは「家」、誰かが住んできた暮らしの記憶と歴史が積み重なり、気配となって場に満ちた状態のことだろう。
黴と影に満ちた寂しい雰囲気しかないはずが、こうしてかなり濃厚な赤の渦で現わすのは独特な解釈だ。人の気配とモノの気配が入り交ざっているということか。
うわあ。実体化しよった。ヒト型になったる。
( ´ ¬`) 気配アグレッシブすぎませんか(怖。 人間ですらない。これは異世界の住人であり、つまり過去にはこういうものが棲んでいたということです。極論に走ることで作品読解を完結させようとするやつ。
⑩幣羅坂神社(へらさかじんじゃ)
難読地名すぎる。特に神社のいわれなど書いてなかったので謎です。次に来ることがあったら調べる。傾いた太陽が、参道の脇の林を切り裂いて射しこんでくる。闇が。切り裂かれる。スピった。
「ひらさか」は古事記に出てくるんやて。
同行者のみっこはんが今年夏以降の運気最悪で、昨日もチャリに正面衝突されたとかで、念入りにカミに祈っておきます。なんか運気って関係者全体が底上げされてないと、穴が開いてあかんようになるというか。上がれ。
神社の森を抜けるとすごい平らな場所に出た。なんすかこれ。
だからここにかつて空から飛来してきた連中がいて、それが住み着いて集落を発展させた。地球人の姿形を学習しそれを真似たが、その実態は例の古民家に巣食っていた、赤い目玉ぎょろぎょろした怪人であった。アーティストは時空を超えてその残留思念を読み取ったのだ・・・
そして異星人らは金属を加工してキューブを作り、自身のいた星の知識を転送・再構築させようとした・・・ その過去もまたアーティストが読み取り、今ここに再現したのだった・・・ うそです・・・
◆笹岡敬「Reflex 2023 」
これは立派な筐体だ。やはり古代・異世界のPCか。あるいは電子制御された熊の罠か。その両方かもしれない。
いやうそですが、あながちうそでもない。作者の言葉によれば、記憶や歴史を感じさせる作品だという。ほれ見ろ。太古の昔と未来とが合わさるところのものを想起してしまったのは、まさにそういう効果があるからだったのだ。中が光ってますし。
こちら地元の「抱月工業」さんが日頃の仕事で切り出し、排出する型抜きの残骸である。それを作家とコラボしたと。
廃棄する残骸を組み立てると未来感が出る。先ほどもそうだが、うち棄てられたもの、忘れ去られたものが作品によって転じて未来へ向かう、これは何を示唆しているのだろうか。
⑪十輪寺/◆黒川徹「輪」
移動しまして、お寺に来ました。お線香の香りがすごいんや。死の匂いを隠蔽しておる! にわかに私は興奮した。ここには死がある!わああ。アートイベントってそのぐらいのテンションで参加しないとだめです、真面目に回ったら鬱になるんで。権力性や搾取のチェックばっかりしてたら人間おかしくなると思うんですけど大丈夫ですかね???
境内の砂利に違和感なく置かれている石のオブジェが作品なのだった。元からあったかのように馴染んでいる。
調和が半端ではない。このままずっと置いてあっても良いように思う。安らぎがあるではありませんか。死を超えた世界ですね。輪廻の計算式である。お寺はExcelのように式が整然と埋め込まれているのだ。
お堂は満席で、よく通る声が響いてくる。朗読会をやっていた。ナントカノミコトと言った古い人名が続いた。かなり古い物語を読んでいるようだ。いい声。しばらく縁側で聴いていた。
次のスポットに移動するためお寺を回り込んだら、今まで見たことのない異形の墓石群があり、なんなんだこれは。ぎっしり。
更に、特大の墓石が立っていて、旧日本軍の大尉の墓だのが並んでいた。このお寺、特殊ですわ。謎が深まってしまった。
( ´ q`) つづく。