nekoSLASH

ねこが超です。主に関西の写真・アート展示のレポート・私見を綴ります。

【ART】R5.8/13 家プロジェクト「F邸」、INUJIMAアートランデブー @犬島

犬島は「犬島精練所美術館」だけでなく「家プロジェクト」が6カ所に点在している。また、大宮エリーの「INUJIMAアートランデブー」も2022年から設置されるようになり、アートの島としての色をより濃くしている。

そして諸事情によりほとんど回れてない(´・_・`)

 

真夏の犬島は一部の勢力から奇跡の島と言われておる。主に私。

犬島精練所美術館で力を出し切った感がある。楽しかった。暑い。

www.hyperneko.com

あとで疲弊が一気にきて吐きそうになります。

 

精錬所を回り終えて、門を抜けてチケットセンターに帰るところで、「F邸」と書かれた分岐の道を見つけ、「船までまだ時間があるので少し観ましょう」と私達は吸い寄せられつつ、汗をだらだらだらだら流して歩くのであった。

 

 

■家プロジェクト「F邸」(名和晃平)_

細い道を少し上がった先に家があるねん。この整った面立ちは明らかに作品ですわ、ええ。

神社の境内と古民家が合わさったような不思議な場です。

「家プロジェクト」は2010年に始まったプロジェクトで、アーティスティックディレクター・長谷川裕子金沢21世紀美術館4代目館長)と建築家・妹島和世とが手掛けている。5つの邸宅と「石職人の家跡」の計6スポットで構成される。あとはベネッセのHPを読んでね。元データをあたる習慣をつけよう。

benesse-artsite.jp

 

十数年前に来た時、これらの家を瀬戸内国際芸術祭のプログラムとして観て回った気がする。瀬戸内海の沿岸と島々のアートはどれも直島とセトゲイを起点に誕生し、成長・発展している。十年以上が経った今なお健在なのが素晴らしい。アートを観光の主目的に据えるというスタイルを産みだしたのがこうしたベネッセなのだ。感謝。

 

なお、混同しがちだが、直島にも同名のプロジェクトがある。あちらは1998年から始まっていて、各建物の設計と作品は個々のアーティストが担当している。また行きたいなあもう。常設展示やと「また今度でいいや」て年単位で放置してしまうんやな。あかんなあ。自覚はある(あります)。

 

さて「F邸」、回り込んでいくと只者ではない。バケモノだ。

うわっ。繁殖踊りや。

繁殖するカビを顕微鏡で拡大したような世界が繰り広げられている。

「ああ~これFさんですかね」「家族3~4人結合してもうてるな」単数形か複数形かすらわからんようになってしもて。

 

遠目から眺めるだけではなかろう。更に向こう側に回り込んでみる。

 

このウサギイス、めっちゃ見たことある。SNSでPRされる「旅」「アート」で直島や金沢21世紀美術館は定番・・・!その象徴的アイコンはどちらもウサギ型の椅子・・・!!それを撮れば誰でもただちに「旅」かつ「アート」・・・! 現地の記録をつけたいのかリア充(死語)をディスりたいのか分かりませんが、この椅子のデザインはそのぐらい破壊力があります。

 

スタッフがおり、チケットの確認がある。

え?

 

「犬島精練所美術館」チケットが「家プロジェクト」と共通になっており、各邸の内部に入って鑑賞するにはスタッフに提示する必要があるのだった。

じゃぁ精錬所と「家プロ」を1日でまとめて回らないと損ですね。これも犬島にできるだけ長居して探索させるための仕掛けである。チケットなくしたらあかんよ。

 

中に入ると言うても、今そこにもう見えてるんだが、もっと中に踏み込めるというね。

 

作品というよりバケモノ、巨大な粘菌、カビの変種である。ナウシカ世界だ。わあい。精錬所に続いてここも屋外、家屋の中ではあるけれども一組の壁がなくて、外とツーツ-なので、暑い。暑くて汗ダラダラダラダラ流しながら「うむ、これはバケモノ」「よいバケモノ」と喜んでいます。

オブジェの中央には太陽のような集中線が走っている。朝顔の花弁に走るラインのようだ。その外側の触手のようなボディは無造作にぐるぐると伸び続けている。

 

名和晃平《Biota (Fauna/Flora)》である。

 

日本語では「生物相(植物相/動物相)」となる。ある時代や地域における生物(植物/動物)の種類組成全般を指す。なんか難しい言葉なのだが、動物・植物含めて色んな種類が生きているんや、全ての生物が混沌と混ざり合っているんやということを総合的に表しているのだろう。

大きな家屋の上から下から右から左まで白い不定形、カオスの肉が横溢している。家ほど大きい生物とは、家=犬島での人間の暮らしの場が、そのまま「自然」の生命群と混ざり合っている。

植物なのか動物なのか判別し難い生態を見せるのであった。天気と時間帯によって見え方が変わるであろう。

左右に小部屋というか庭めいたスペースがあり、それぞれにオブジェが置かれている。これは外からは一切見えないので、チケットでの入場が不可欠。

 

白いオブジェの間。精神体の世界か、あるいは純粋な存在体か。中央には白い人型のオブジェが立つ。その後ろには「東北リボーンアート」で登場した<White Deer>と同型の小さな鹿が立っている。個人的にリボーンさんと呼んでいる。

<White Deer>は、Webを介して手に入れた鹿の剥製を3Dプリンターで構築したもので、Web・デジタル技術による立体の物性と、野性の肉体の痕跡=平面性という逆の位相が合わさって裏返った「鹿」を起たせているのだが、この人物像はどうなのだろうか。いや人間ぽく見えるだけで誰もこれがヒトとは言っていない。

自然界の中で、年月を経て風化し、水や苔で丸みを帯びた岩の積み重なりは時に人間のように見えただろう。それは無機質の物体であることを逸して生物にも近付いた何かと呼べるだろうが、ここにある丸いものたちはそうした越境者とも見えた。あるいはあらゆる形状にも転じてゆく雫、液体を模したものとも。私達を構成している蛋白質や脂肪の成分とも喩えうるかもしれない。

 

反対側には木・植物のゾーンが広がっていた。

だがそこには臓器を思わせるオブジェもある。植物がそのまま木材や葉っぱのような分かりやすい形をしているわけではない。内側から膨らんで光沢を帯びた球面を無数に持つそれは、一方で金属や化合物の姿にも近い。万物が生成と変化を繰り返す。

金属系菌類が形成した心臓のごときオブジェクト――これと白い伝説の鹿とが一つに合わさることはたぶん永遠にない、だがこれらが併存する世界を催させるのが「自然」というものであり、瀬戸内海の離島の環境なのではないか。

 

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さてあと1カ所ぐらい家回りましょうかねというところで、私のアレがナニで限界を迎え、脳の信号が危険水域だったので、急遽離脱してトイレに駆け込んだ。ふう。しかし、8月真夏の瀬戸内海のトイレ、殺人的に、暑い。汗が止まらない。こういう刑罰なのではないかと思った。

すごいところにトイレあるやん。隠し部屋か。全開やけど。おかげさまで秒で見つかって良かった。

便座に跨ると体を動かせない狭さで、独房である。そして蒸し器のように暑い。

ボタボタと垂れて流れる汗。額だけではない。垂れてきて目に入るだけではない。背中、腰、尻、腿、脛、全てが発汗してベトベトする。白い便器の上で私は息を切らす。はあはあ。不快だ。こんなんありか。あかるい独房。真夏のセクシー独房。公衆レンジ。くくく。汗だ。ははは。汗だ。気を散らすために手元に開くスマホの画面が汗とTwitterTwitterTwitter、混ざっている。

 

 

■INUJIMAアートランデブー(大宮エリー

トイレへの行き来の最中に公園を通りがかって、あれは絶対にアートだと思った。名のある作家のアート作品だと。ここはそういう場所だ。わかるぞ。パブリックをまとっていても作家性が匂ってくる。便意に占められた脳でもわかるぞ。

 

これは保育所・幼稚園の遊具に見えるけれども、園児がいないし、園もないし、灼熱の日差しと砂地の中でただただ陽気に振舞い続けており、死を超えた存在、すなわちアートであることがわかる。

 

大宮エリー」の名前、よく聞くよなーと思って調べてみたら「作家/画家/映画監督/演出家/CMディレクター/CMプランナー」と書いてあって眩暈がした。多芸だ。多才だ。多能だ。ぐぐぐ。羨ましい。なんでそういう一人電通みたいなすごい人って実在するんですかね。

ellie-office.com

肩書に弱い人間はハロー効果で焼け死ぬと言われています。気をしっかり持とう。それでこの花は「INUJIMAアートランデブー」という、これもベネッセの瀬戸内海パブリックアート企画の一部である。

benesse-artsite.jp

2022年から始まり、現在は犬島に2作品が置かれている。今後も増えていくのではないか。年中アートの島。TDLに馴染めなかった流民たちは瀬戸内海で飢えを癒すのだ・・・。

 

スズランってコンバラトキシンという毒があるんですよ。

 

かくして犬島は精錬所と港の近所を歩いたのみで、大部分を残して次のスポットへ向かうこととなった。予定がつまってるんやで。

 

 

( ´ - ` ) 完。(全然終わってない