「木津川アート2023」、アート作品コンプだけ目当てで回ってたら、会場「きっづ光科学館ふぉとん」がなにげに面白かったので、個別レポです。光を!感じろ!”
- ◇1Fエントランス~灯りの歴史
- ◇プラネタリウム(映像作品は省略)
- ◇量子科学技術と未来(パネル)
- ◆風吹大樹・テクマク「どこにでもあるけど、ここにしかない」
- ◆安藤英由樹「木津川にあるサッカードディスプレイ」
- ◇そのほかガチな光、量子の展示、重粒子線治療装置
住宅と研究施設、技術系工場とだだっ広い道、だだっ広い各施設の敷地・法面が続く、80年代~90年代初頭にデザインされた懐かしい近未来都市にして、どこか虚無が漂う「関西文化学術研究都市」(けいはんな学術都市)、木津川市。
ショッピングモール以外には全くと言っていいほど娯楽施設がないエリアで、この「きっづ光科学館ふぉとん」はその名の通り、「光」をテーマにした子供向けの科学博物館である。しかも入場無料。うおお。おおう。どうりで勝手に入っても何も言われなかったわけだ。あざます。
今回の「木津川アート」で街を歩くことになって初めて分かりましたが、この街マジでなんにもない。そりゃ企業・研究施設の誘致に宅地造成をセットにした開発事業なんだから当然なのだが、ないのだ。そんな地で無料の科学館というのはたいへんいけております。(PLANT、カインズ、ガーデンモール、古墳はあります。)
◇1Fエントランス~灯りの歴史
施設自体を鑑賞するつもりは無かった私達、まさか無料の施設とは思ってなかったので、作品はエントランス回りですぐ出てくるものと予測し、ウロウロ。しかし作品がどこにあるか分からない。どこ。とりあえず順路通りに観ていくしかないなと観念します。どこすか。
偏光レンズ体験コーナーでは何を見たらいいのか全く分からず。
係員が天井を見てくださいと指南。それは絶対わからん。
お。色がついた。色です。レンズを回したり傾けると次々に色が変わる。おとうさんおかあさんのPLフィルターを勝手に使った時のことを思い出してみよう。変な色になるよね。あれだよ。
( ´ - ` ) 以上、偏光でした。
しかし作品が見つからない。「もしかして入口の偏光のあれ、作品だったのでは?」「えっ作家紹介パネルなかったけど・・・(動揺)」という動揺もあり、盛り上がってまいりました。
なお「ようこそ木津川市」紹介写真パネルはゴースト写真になっています。レンチキュラーで各2枚ずつぐらい写真が入っていて、見る角度で動きが付く仕組み。薄型液晶画面がまだ高級すぎた時代の展示物です。2枚同時に見えるポイントを探すのが好き。楽しんでますやんか。
この施設、「光」に関する幅広い分野を扱い、「光」の多彩な特徴を体験できるようなしつらえとなっているため、展示物がいちいち凝っています。光の基礎が学べるぞ。フィルム × 印画紙でアナログ写真を制作している御仁にとっては技術・アイデアの基礎となる骨組みを強化できるスポットであること間違いない。
まずは写真の回廊を抜けて入っていく。
自然界と「光」に関する光景・風景の写真を上と左右に組み上げている。今なら液晶画面かプロジェクター投影し画像を切り替えていくか動画を流すところ、ブツの写真なので、画像が動きません。ビタ止まり。熱い。これぞ1990年・大阪花博の世界! 写真・画像がビタ止まりで動かず、内側から照明で光っているだけという時代があったんですよ。「時代」の分界線のひとつは「写真が動くか動かないか」であると確信。
なおこの施設、90年代初頭の世界観がみちみちているのだが、開業は2001年と、予想より10年後だった。ゼロ年代初頭はまだ世の中の映像インフラは大して変わっていなかったのかもしれない。
人類史における灯りの歴史を振り返るコーナーは、映像ではなくなんとフィギュア。手間がかかっている。
明治、アーク灯が銀座に立つ。若い世代は驚き、老人は背を向けて神仏に祈っている。世界の変化についていけない様子だ。いいすね。
最後のコーナー:最新の「現代」はガラケーと、写真が内側から光る広告板で締め括られている。2001年当時の先端的な「現代」はここだったのだ。写真は画像データか、紙・印刷ベースなのかは不明だが、いずれにせよ動くことはない。
このガラケー、既製品を飾っているのではなく、似せて手作りしているのがすごい。手間暇かかっている。
◇プラネタリウム(映像作品は省略)
科学館のメインはプラネタリウムである。大きく螺旋状に曲がる階段を上っていると酔いそうになった。三半規管がだめだ。上映プログラムの張り紙が続く。
公式キャラ「フォトンくんとレイちゃん」。光キャラである。光子っちゅうか、餅かマシュマロ…。もちくんと呼びたいのをこらえる。
建築内建築かっこいい。
なお「木津川アート」作品として、「MADD.」名義で5組10名の映像作品が上映されている。のだが、1日1回(15:15~15:45)で時間が合わないためスルーします。「内なる宇宙(The Universe Within)というテーマを「イマーシブ空間」で表現する360°映像優秀作品を光の映像シアターで上映します」という。なんやらわからんですけど、宇宙です。
◇量子科学技術と未来(パネル)
さて未来を想像しましょう。量子科学で幸せな未来になります。
未来イラストパネル、味わい深くて良かった。もう量子科学で老若男女がハッピーすぎて多幸感がうらやましい。Z世代も団塊世代も量子科学で幸せだ。それどころか人外も混ざっとるが。万物が多幸感に包まれる、それが量子科学。
茶会と企業プレゼンとビーグルダンスと印度人とフォトンくんと・・・(情報量
ビーグルがご機嫌ならいいです。犬はえらい。
アシモ風ロボットのやろうが集まりに遅刻してきやがった。おまえ人間を学習しすぎとんねん。しかも菓子パやぞ。まさかこいつ飲み食いすんのか。
あと白いシャツの人物、地味に時計がなんか鳴っとる。
Apple Watchを予見している!
下のフロアもやばくて、原始時代みたいなファッションのじじいが、バブル期みたいな女と遊んでいる。なんやねんこのジジイは。つまり量子科学によって高齢者も過剰な健康を得て野性に回帰するのだと・・・。
左の二人の髪の色:薄いパープルやブルーは、令和テイストを先取りしていてすごい。
老人のファッションがおかしい。こっちは中世貴族ぽい。右から2人目の人はジオン軍の制服ですがやはり未来にはザビ家が一定の影響力を持つようになるんや。
ここのパネル、「スマホ」とか「量子スマートセル」とか、けっこう後から(最近)追加してるっぽいですね。これが1991年当時のパネルだったら私は悶絶、絶頂に達していたと思う。どうでもいいけど頬など顔のたるみを綺麗に引き締める技術を量子科学でやってほしい。できるでしょ絶対。できる。してや。
そしてようやく作品が登場する。長かった。(※到着まで15分しかかかっていませんが、精神的には地球の誕生から90年代から近未来までかなりの情報量を旅してきております)
◆風吹大樹・テクマク「どこにでもあるけど、ここにしかない」
大阪・本町の「ギャラリー・アビィ」オーナーであり写真家の風吹大樹と、その妻にして写真家テクマクのユニットによる作品展示。
プラネタリウムから脇に逸れた通路の突き当りに置かれた、円形の穴が無数に空いた壁を使い、その穴の中に円形の写真や小瓶に入った写真の作品をはめ込んでいる。色が光を帯びていますね。あれです。
なおこの壁、わざわざ特注で作って置いたようだが、一体何のために設置されたものなのか用途が謎である。近未来的な雰囲気作りだけのためのようだが、ずいぶん金のかかった仕様だ。穴の向こうは外界の光が射しているので、採光窓を近未来風にしたものだろうか。
一般的に「写真」とは見る対象、見た結果としての像であるが、本作は「見ることの欲望」を正しく刺激する装置となっている点が独特だ。
穴の一つ一つに埋め込まれた写真によって、それぞれが異なる光景の気配を醸している。来場者は色のついた光に引き寄せられ、誘惑される。その光と影が何に通じているのか、「覗きたい」という率直な欲望を刺激されるのだ。
実際、観客らは、全貌の見えない「写真」に対し、穴に食いついては何が見えるのかを確かめていた。明らかにテンションが上がっている。その先にあるものを目で捕えたいという欲望を感じた。恐らく私達の日頃の生活では、気になるところを直接的に「覗く」、しげしげと凝視するといった態度・行為を、侵害的、暴力的としてかなり抑制されている。それをこの穴と写真という組み合わせは、平和裏に解放する仕掛けとして作動していた。端的に、幸福である。
本作の写真=光景は、「地元の人が見逃しがちな木津川市の魅力を撮影してください」というお題を受けて撮られている。風景の写真もあるが、ある特定のスポットを写した風景写真というよりも、この小さな円形の穴に嵌めた際に自立したコンテンツとなるよう、つまり一目でそれが何かが瞬時に分かるよう切り出された、アイコン的な光景が主である。
外的な風景よりも記憶としての質を帯びているのは、向こうからの光によって透過されていることが影響しているのだろう。こちらから写真を一方的に観察するというより、写真の側から像をこちらへ照射してくる。
更に、地元企業とのコラボレーションとして、創業約80年の歴史をもつ「磯矢硝子工業株式会社」が小さなガラス瓶を提供し、その中にさらに小さな写真と小物を封入したものも見られた。作品は誰かが保管した「思い出」の形を更に強く帯びる。ガラス瓶の優しくて強いフォルムが、小さなものを包んで守り、愛おしさを感じさせる。
文字と色のはっきりした組み合わせで、アイコン的な要素が強いのだが、フラットな記号とはならず、誰かの私的な思い出の象徴の形となる。写真に写された光/写真を外から照らす光が、ガラスの厚みと曲面によって曲げられ、光を内に留めた状態になっている。それが記憶性を醸し出しているのだった。
全国どこにでもあるバーミヤンの看板すら特別なものになる。
◆安藤英由樹「木津川にあるサッカードディスプレイ」
今回の「木津川アート」で最も悩まされた作品であります。たんのうさせていただきました( ´ ¬ ` ) 大きく2つの点で悩まされた。わあい。
悩1.場所がわからん。
地図には科学館にてアーティストが3組プロットされていて、映像は飛ばしたから良いとして、館内を全て観終わってエントランスに戻ってきたものの、最後の安藤氏の作品が何処にあるか分からない。えっ。
いうても私はアートイベントに通い慣れた身であり、何ならこれまでアートイベントには人並み以上に行ってきたのでから、作品か作品でないかの区別ぐらいは付くのです。それに科学の展示が面白かったので、飛ばさず普通に全部見て回った。それで無かったんだから、これは気付いてない・入ってない部屋があったんでは???
係員さんに聞く。
あっ館内の展示の地図。えっ。
トイレの手前のQST展示のとこ? うそやん。
えっ。これ 作品やったん。うそやん。
うわあ。気付かん。負けです。私の負け。「これまでアートイベントには人並み以上に行ってきたので~」のくだり何やってん。はず。
左側のパネルはQSTの解説展示です。右側が作品である。
※QSTとは。
これまで子供向けのやさしいイラスト、体験コーナーが続いたところで、急にガチの「国」「研究」「科学」が出てきて焦った。QST組織図から研究分野から貼り出してあったので真剣に読んでて作品パネルを見落としたのだ。科学はなあ、政治であり国家なんだよ。
作品これです。
えっ棒。
悩2.記録に残らない。
この光の棒は作品の発生源で、強い光で高速の点滅が行われている。こちらが不意に眼球を動かした瞬間、1秒にも満たない像が映り込む。文字通り、網膜に焼き付くようにそれは瞬時に現れ、目を止めて凝視すると何も現れない。無意識に眼球を動かす運動をサッカードといい、目線を動かしたり頭を動かした際に点滅している4本のLED光が繋がって、像になるようだ。
「木津川」の3文字や、鳥やら、なんか見えますねん。見えては消えていく。
わかったじゃあコンデジ連写したる。
あかん。
( ´ ¬`) 写真に全く写らない。
わかったじゃあ動画したる。
( ´ ¬`) 動画にも何も残ってない。
まるでデジタルの亡霊である。
像として残すには、デジカメを振るなど、左右にもっと大胆に動かすと撮れたのかもしれないが、人間と同じようにじわっと動いただけでは全然だめであった。
ぐう。
◇そのほかガチな光、量子の展示、重粒子線治療装置
それまで子供向けだった展示が、終盤のQST組織・活動の解説と、レーザー技術の解説コーナーになると科学のガチ度が跳ね上がる。光で遊ぼう、みたいな理科の教科書実演編の戯れから、「光は電磁波の一種です」ときて、光の技術がこれまで何に使われてきてどんな分野で実用されてきたかの成果が示される。身近なところではCDやDVD、デジカメなどの情報記録媒体、各種レーザー出力機器など。
どれも専門的なので解説パネルを一読しだけでは、書かれている日本語は平易なのに、もう意味が分からないのであった。文系の限界っ。
エジソンのあたりは平和だったんや。「エジソンの電球のフィラメントには京都・八幡の竹が使われてるんや」「日本の竹はすごいんや」「つまり日本スゴイ」などと、愛国心をくすぐる伝説に酔いしれておれた。日本におけるエジソン受容ってつまりそういうことでしょう?(違)
「光は電磁波」。
はい。光は波であるといういつものあれです。あと粒子でもある。たいへんや。よくこんなうねうねしてて1秒で地球7周半もいけるよなあ。
ここをすんなり前提として受け入れられるかどうかで後の人生が決まる。だめだった場合は頂き女子りりちゃんになる。そういうとこやぞマジで。
光、粒子と言えばみんな大好きカミオカンデ。ちゃんと光電子増倍管がありましたよ。
黄金に輝くアレ。アンドレアス・グルスキー作品で金色に光輝くお馴染みのあれ。11,200本並んでいるよ。
この金の玉がどう働くかというと、解説によるとこうだ。
→地球にニュートリノが降ってくる
→カミオカンデ水槽の純水の水分子にぶつかる
→チェレンコフ光が発生
→光電子増倍管が光をキャッチ
→100万倍とか1000万倍とかに増幅して検出
( ´ ¬`) もうわけわかんねえな、グルスキーさんに任せた。
がん医療に興味のある御仁には「重粒子線がん治療施設」の模型と解説がたいへん良いですよ。
炭素などの原子から電子を取り除いたイオンを、高速の70%の速度にまで加速した「重粒子線」を、患部(がん細胞)にぶちあてて治療する。
加速器は直線型とリング状の二段階式。得られた重粒子線を効率よく使えるよう照射治療室が3室ある。
この巨大な加速器実験場みたいなのを擁する病院(というのか加速器に病院をくっ付けたと言うべきなのか)が千葉県の「QST病院」です。模型にあるような「重粒子線がん治療装置(HIMAC/ハイマック)」を設置した病院となったのが1993年。割と古い。
現在では日本に25か所の粒子線治療施設があります。(重粒子線:6ヵ所、陽子線:18ヵ所、重粒子と陽子線の両方:1ヵ所)
重粒子線がいいのか陽子線がいいのかは趣味で選んでいいのかな。わからんわからん。私に訊くな。
あっこれ見たらわかる。
なるほどですね( ´ ¬`) 医者と相談して決めてください。どっちの方が気持ちいいとかあればそれも教えてほしい。
つまり本日の結論を申しますと、
「地球に優しい核融合エネルギー」
「核融合は、環境対策と安全性を両立できる
実質無尽蔵のエネルギー源です。」
( ´ ¬`) 核の話をすると右からも左からも棒でボコボコにされるので私はなにもいわないよ。原発のことは置いといて、がん治療で放射線を当たり前のように使ってるのは事実。恩恵は受けておるわけです。あと電気代。火力で燃料買うとクソ高い。太陽光パネルは自然破壊。風力発電は鳥殺し。ああっ。
未来のことを考えるのしんどくなってきたんでアート鑑賞の続きをします。未来は量子や!
(´・_・`) つづく。