写遊百珍

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ生&TA。各種講座のレポや、関西・東京の写真展、アート展示を特集。

【写真展】河合止揚「大阪」(平成×大阪×写真/ソラリス企画展)@Solaris

【写真展】河合止揚「大阪」(平成×大阪×写真/ソラリス企画展)@Solaris

建築写真家の眼で、大阪の各所の「いま」をモノクロームで捉えた写真展。見たことのある場所と地名が豊富に登場する。この先、風景は変わってしまうか、否か。

 

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【会期】2019.3/12(火)~24(日)

【時間】11:00~19:00
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大阪の街を撮った写真家の系譜は、東京に比べれば数少ないものの、確かに存在している。著名なところでは、戦前、新興写真に取り組んだ写真家団体らと、戦後~現代では井上青龍、百々俊二、阿部淳、妹尾豊孝、太田順一といった個の写真家が挙げられるだろう。本展示の河合氏の作品は、ごく最近の大阪を撮っていながら、先達の捉えた大阪の世界観と、どこかで繋がっているように感じる。

大阪が東京と大いに異なるのは、どこまで開発が進んでも、たえず土着的であること、昭和であり続けていることだと実感する。

この10年で大阪は相当に再開発が進んだ。梅田~中之島にかけて、中央郵便局や村野藤吾建築など、歴史的建築物は取り壊されたりリメイクされ、キタの拠点であったJR大阪駅&貨物ヤード、阪急百貨店&コンコースは一新されて生まれ変わり、天王寺界隈に至っては土壌改良とでも言うべき勢いで街並みが変化した(実際、「あべのキューズタウン」(2011)は東急不動産であり、もはや大阪の東京化である)。これ以上の規模での開発は、もう当分お目にかかれないのではないかと思ったぐらいだが、それでもなお、本展示を見ていると、大阪という地は昭和から何も変わっていなかったかのように錯覚する。

 

作者は白黒フィルムによって街を捉え、丁寧な暗室作業によってその灯りを印画紙に浮かび上がらせる。作者の大阪に対する眼差しの温かさと、大阪自体が有している独特の「間合い」が合わさり、この独特な都市景を浮かび上がらせるのだろう。

東京にも勿論、下町や人情味はたくさんあるが、圧倒的に人の往来、電線、車、建物、広告などの密度が異なる。感覚的な話で申し訳ないが、東京の山手線圏内はどこをどう切り取っても「東京」でしかない。カオスと密度と緊張感があるのだ。人工物がキメ細かく土地や空間を制圧している。それが無数の写真家らによってビジュアル化され、認識に刷り込まれ、それを受けて「東京」を改めて見て、再認識し、また新たなビジュアルを描出して、というサイクルを繰り返し、東京景はどこまでも特権的な磁場を有するようになっていった感がある(大阪人のひがみではない…)。

 

大阪の「間合い」は、東京には無いものだ。視界、身体感覚を混乱させるノイズがあまり無く、どこか淡々としている。ただし大阪の密度やノイズ感もまた、他の地方都市には無いものだ。決して小さな都市ではない。ただ東京と比較した際には、全ての「間合い」が広くて大きいのである。

古びた民家や商店、空き地が醸し出す風情はそれとして、大阪の街が湛えているその「間合い」の余白が、大阪の都市景が昭和にも読めるし、現在にも読めるという、判別を曖昧にさせる要因の一つとなっているのかもしれない。河合氏の建築写真家としての的確な距離感と撮影技法、そして焼きは、その「間合い」を丁寧に現しているように感じた。

 

本展示は、今後、2025年万博開催などで更に変わりゆくであろう「大阪」について記録し、再考を促すものとして企画された。

今企画は<平成×大阪×写真>シリーズとして、平成が終わりを迎える今日、自分たちの住む「大阪」の姿を写真を通して再発見することを目的に、ギャラリー壹燈舎、ギャラリーライムライト、ビーツギャラリーで「大阪」をテーマとした写真展を同時期に開催する展示シリーズとなります。

 (ギャラリー・ソラリス HPより)

 

大阪人である私にも、今後大阪がどうなるのか、実際よく分からない。変な方向にだけはいかないでほしいと思っている。都構想って何でしたっけ。私も含めて、関西で写真や映像をやる人にとって、今この日常の景観は、なかなか重要なものだと思う。どんどんやりましょう。 

本展示では、河合氏のまた少し異なる一面、二面を物語るグッズが多数ある。建築写真家と聞くと、どこか厳密で、お堅い人を思い浮かべるが、撮影に使われたアオリ機構搭載のシフトレンズが展示されていたり、写真アルバムの表紙の可愛いフォントやイラストは自作だったりして、キュートなお人柄が伺えた。

おすすめは、近所の人から貰ったネガをプリントしたという、超・私的なアルバム。これがコンセプチュアルなファウンドフォトとは違って、純粋にどこかの誰かの暮らし(しかも謎にセレブ)を覗き見るものになっている。相当面白いので、時間に余裕があればぜひ手に取って見てほしい。

 

 

( ´ - ` ) 完。