H28.7/10 松田 浩一氏 個展「香港路面電車」
電車の車体が、社会学です。
松田 浩一氏 個展『香港路面電車』
<会期> 2016.7.2―7.18
<場所> KOBE STUDIO Y3(4階ギャラリー) ※海外移住と文化の交流センター内
\(^o^)/ すごない?
すごいんだよ。圧巻すなあ。
鉄道ファンには逆に撮れない。
スナップ、風景写真に秀でた者なら、なおさら撮れない。
ベルント&ヒラ・ベッヒャーへの、解答の一つであります。
うえのゆり氏の個展と同時開催中なので、どちらも堪能できました。
できるんですよ。
<うえのゆり氏 個展「糸結び」>
遠目には、アーティスティックな、ポップアート絵画作品にも見えます。
広告産業の力を再認識します。アートと広告は相当近い所にある気配。
松田氏は、私の通っている「写真表現大学」の先輩にあたります。
(2015年度入学)
同期と一緒にお話を聴くの巻。
氏のシャツに注目(路面電車www)
「さいしょこんな写真出して、ふざけるなって言われるかと思ってましたわ」
えええええ。
どうもこのスタイルに辿り着くまでに試行錯誤があった模様。
強度があるんですよね。
定点観測 × 車輌 × 広告 という組み合わせが生み出す力。
路面電車というインフラ、広告という世相、そして街並み―暮らしが、全て写り込んでおり、「香港」の社会学を体現している。
結論だけ見ると「すげー」「思いつかなかった」「うわあやられた」と感嘆をもらして終いになりがちだが、実際に写真を撮る立場からすると、この構図だけを撮り続けることがいかに難しいか(というより不可能)。
なぜなら他に色々撮ってしまうからです。
撮りたいやないですか。
仮に「香港(海外)で写真撮ろう」と思ったとき、何をするか。色々しますでしょう。自分の技も試したいし、その土地(国)と勝負してみたいという欲。
「ここに車輌が溜まって、客を降ろしてカラになったのを、この位置から撮るんですわ」「午前のうちは運行本数が少ないんで、3輌溜まらないんですね。3輌来ないとこの位置に止まらないんです。だから撮影が午後になる。」
松田氏ご本人が撮影秘話を明かしてくださるの巻。
「このスタイルに決まるまで? 1年半ぐらいかかりましたよ」
「最初は普通に香港の街を撮ってたんです。そこから、写真集を紹介されて、路面電車を中心に撮るようになって。それがこれですわ。まだ普通に撮ってた時。」
香港の写真集として十分に通用しそうな、クオリティの高い作品たち。まず、この発想―都市景のスナップを追求するという方針に到るのが普通だと思います。
しかし周囲のアドバイスなどもあって、視座を固定しつつ、香港らしさも写り込むベストポジションを探りなさった。
結果、氏は、アーティスティックかつ社会学的な視点を獲得しました。
電車がいないとき。
この物件が良い効果をもたらし、左側は看板、右側は窓から住民の洗濯物がすがたを見せ、日々異なる「香港」の表情を見せます。
かわいい。
展示が素敵なだけでなく、ご自身の展示経験を通じて、展示に際してのコスト管理や収納・運搬のお話なども聞かせていただきました。
氏の展示は、蝶の標本がずらりと並んだような美しさがあるのみならず、前述のとおり、ベッヒャー夫妻(給水塔や溶鉱炉をひたすら同じ条件で撮影し続けた作家。世界的に超有名であり、写真をやっていて知らない人はいない)が開拓した類型学の系譜に則ったものであり、非常に価値のある活動であります。
\(^o^)/ 必見(必聴)の展示です。
長崎の路面電車でもやってほしいなあ・・・。
(※作品の撮影は、ご本人の許可を得て行いました。)