nekoSLASH

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ卒業。関西・東京の写真・アート展示のレポート・私見をup。

【写真展】R1.11/24~R2.1/12 ケイタタ(日下慶太)「隙ある風景」@ビジュアルアーツギャラリー大阪

「スナップ写真」の手法的特性である「虚を突く・隙を突く」を、愛着とともに前景化させた作品群だ。ともすれば攻撃性、暴力性が悪目立ちしてしまう現代の「写真行為」に対する明確かつセンスの良い回答を示している。誰にでも出来そうで出来ない、高い編集のセンスを見た。鍵は、共感の増幅にある。

 

【会期】R1.11/24~R2.1/12

 

会場入口から展示物、タイトル、そして写真の中身まで脱力している。タイトルが紙1枚ずつのピン止め、写真は額やマットではなく段ボールに直貼りで、つまり会場には写真用紙と段ボール紙が並んでいるというすごいことになっている。

だが「いいかげん」「チープ」「雑」なのではなく、「脱力」。このギリギリの線をぬかりなく区別し、あったかい足湯に浸かるような心地良い「コンテンツ」としてクオリティを出しているところに作者の編集の腕が光っている。

 

たしかにこれらの写真をセオリー通りシルバーフレームとマットで組んだら仰々しく、いかにも「写真サークルのオヤジが金と時間をかけて撮り溜めたスナップ」となるか、「作品」然としてしまうかという危険がある。写真に撮られた「隙」をいかに「隙」=脱力感のままに伝えるか、その総合的なデザイン力が本作の見どころの一つでもあろう。

 

そしていわんや、写っている中身が素晴らしい。

本来、誰のものでもない場所で、誰のものでもない「風景」であった「人」の顔や挙動は、予期予測不能、所有や管理不能な意味不明さ、「隙」に満ちており、それを瞬間芸で掬い上げて「表現」へ転化するところに写真家の自負と独自領域があった。それも盗撮による性的被害や、顔や外見が即座に個人情報へ紐付け可能なSNS社会ならではのプライバシー侵害といった実害(の恐れ)が大きく、他者を写した路上スナップ写真は取扱いに注意を要するものとなっている。

 

本作の生存戦略は、愛着と共感である。

 

「TKVW(TOKYO VOICE WEB)」サイトに作者インタビューがある。自分を「ルーザー」と位置付け、被写体=隙だらけの人達への同調的な視点から撮っている(そして東京に比べると大阪はルーザーに優しい・・・)ことがわかる。

tokyo-voice.jp

 

ここで自身の写真の対比として、Twitter上で路上酔っ払い・泥酔者をスナップする「SHIBUYAMELTDOWN」(アカウント、ハッシュタグ)を「愛がない」「ああいうのは撮りたくない」と語っていることで、作者のスタンスはより明確になる。

 

 

路上観察者や狩猟者の目線ではなく、共感者の眼で街に潜むのだ。ならば本作は見えない「いいね」「RT」ボタンを押しながら街を歩く行為に近いだろうか。

「隙」を攻撃的に、突き放して撮らず、滑稽さへ寄り添うように愛着を持って共感でシャッターを切り、プリントする。それらを更にじわっとくる一言コメントや、配置のシークエンスによって響かせ、鑑賞者側へ共感の響きを波及させるように構成されている。

 

いい写真だ。普通に上手い。

 

「普通に上手い」というのは、逃げたりごまかしたりせず、自分の撮るべき画角やスタンスを踏まえて撮っているのと、何より絶妙な瞬間をしかと切り取っている。しかも相手に警戒されたり、遠慮してタイミングを見送ったりということがない。多くの写真は対象に気付かれないよう、一定の距離を置いて観察し、真横に近い角度から切断的に写し取っている。

つまり、滑稽な瞬間 × 愛着による写真ではあるが、1枚1枚を見ていると、結構ソリッドな切り取り方をしている。不快さや攻撃性を持たず、共感によって成立する写真・・・ 現代の都市部でやっていけるためのサバイブ術を備えた写真(家)、と言うべきだろうか。

これは同じ「滑稽さ」でも、梅佳代が被写体らと瞬間的に高濃度の関係を持って、全てを親戚みたいな血縁的グルーヴ感で撮るのとは大きく異なる。眼差しは温かいが切り取りかたはソリッドで、共感の「いいね」はするが、あくまで他者としての「風景」なのだ。

 

その「隙」、脱力への共感を増幅させてから鑑賞者へ手渡すところが上手い。段ボールしかり、1枚ずつに付されたタイトル(キャッチコピー)しかり。最大の技はそのまま重複的なシークエンスによる増幅である。

 

 

これがじわじわくるんだ。

 

面白かったですね。

皆さん写真撮りましょう写真。誰も褒めてくれなくても、アワードがなくても、いいねがたくさんつかなくても、表現として面白いスナップ写真というのは、やるだけで意味がありますので、やりましょう◎

 

 

( ´ - ` ) 完。