【写真表現大学】H31.2/17(日)展示表現&作品合評(The Third Gallery Aya_綾先生)
はい皆さんこんにちは。写真の学校です。いよいよ卒業展まであと1ヶ月です。速い。速かった。よかったですね。よくない。
最後の追い込みキャンペーンということで、「展示表現」の講義と、それに基づく作品合評です。講師は、写真を基軸としたメディアアートを扱うギャラリー「The Third Gallery Aya」(以下「サードギャラリー」)のオーナー・綾先生を招聘。
( ´ - ` )
もう私は修了展3年目です。3回も修了した。はやいなー。
1年目の頃は、ニールセンの黒フレーム18本(特注)がドカドカッと家に届いて「うわあ」「洒落になってへん」と思ったものです。頑張って元をとりましょう。
はい。
1.講義(ギャラリーや展示について)
館長より「展示には作者の想い、思想がこもる」「80年代以降、写真展示もインスタレーションの時代となっている」と、「展示」の重要性について大枠の話がなされたあと、綾先生からのレクです。
<参考> The Third Gallery Aya ホームページ
取扱作家として、石内都、岡上淑子、山沢栄子といった作家さんがいます。すごい。今をときめく作家さんが。
(1)ギャラリーについて
まず基本的な「ギャラリーとは何ぞや」ということで、大きく2点の役割について簡単にお話です。
※ここでは「コマーシャルギャラリー」の話であって、「レンタルギャラリー」(貸し画廊)の話とはまた異なります
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①ギャラリーは作家・作品に関する窓口
例えば物故作家の場合は、作品を遺族から借り受けたり。展示に際して遺族側に許可をとったり。
取扱作家について、美術館から展示の企画を受けた場合は、出展作品の調達の都合をつけたり、学芸員と展示構成について協議したり、作家の経歴などオフィシャルの情報管理をしたり。展示の内容自体は学芸員が考えますが、実現のための実働や手続きなど、表には見えないところでの動きが多いようです。
また、プライベートにコレクションされた作品の場合は、美術館の学芸員では把握していない情報も多いため、これも交渉や作品のコンディション確認などを担うそうです。商社みたいですよね。
②ギャラリーはお店
作品を売っています。
忘れがちですが、ギャラリーは普通のお店と同じように、会場内の作品を販売しています。
作品を売るというと、昔は、妙な画廊(もどき?)で、ラッセンの絵をローン組ませて売るよくわからんお姉さんとかがいましたが、そういうのとも全く違います。お姉さんたち今どうしているんだろう。
作品の売り上げは、ギャラリー側と作家とで、それぞれの取り分でわけわけします。共存共栄、一緒に生きていく仕組みです。皆さんも気に入った作品があったら買ってみましょう。
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(2)展示について
これまでサードギャラリーで行ってきた、数々の展示光景が次々に紹介されました。同じ「写真」の展示でも、全く異なる空間になることが示されました。
こういう感じで無数の会場写真を紹介。
( ´ - ` ) 作家の数だけ、【展示】がありますなあ~。
ニコンサロンとか、メーカー系のギャラリーでは、ほぼ定型、スタンダードにがっちり展示されていることが多いですが、一歩外に出るともう何でもありな印象です。
展示で作家の考え方が見える…。
( ´ - ` ) それが「作家性」というものかもしれません。
牛腸茂雄、石内都、渡邊耕一、等々、といった作家の展示会場の写真を見ました。「展示」に関わる要素には、大まかに以下のものがあるようです。
・サイズ
・額
・マット
・プリント
・用紙、加工
・並べ方、構成
・壁面(色や広さ、壁の質感)
・壁以外での展開(台、机、床、etc)
etc etc。
要素が多い。
これはたいへんや。
( ╹p╹)
小松浩子や横田大輔の展示空間を思い出すと、写真というより空間そのものやんと、こうしたパラメータを最大限に意識的に振り切っており、もう「展示」って何なんですか、アルファですかオメガですかという心境になりますね。わあい。
つまりは、作者のコンセプトです。コンセプトに適する展示を組み立てていくと、こうした諸要素の掛け合わせ方が決まり、結果として全部同じギャラリーでの空間なのに、見え方が全く異なるものとなります。
①、②を見てのとおり、マーケットの存在と、展示という表現手法があることから、「作品」とは、作家の手元で作り終えたらそれで作品となるわけではなく、世の中に展示・発表されて初めて「作品」になる、ということでした。
インスタやFacebookになんぼ綺麗な写真を一生懸命あげてても、いわゆる「作家」とはちょっと意味が根本的に違う構造があるということが分かりますね。(※人によっては越境します)
(3)市場での写真の扱われ方
こうした感じで写真作品は「展示」され、そして「市場」(マーケット)で売り買いされています。
されてるんですわ。
( ´ - ` ) この国には、写真を絵のように家に飾る風習があまりないですが…
写真は、雑誌やWebのコンテストで上位争いをするだけではなく、広報用の有料素材として売られているだけでなく、アート品として流通しているのです。
その価格をどうやって付けるか、幾らでやりとりするか、美術館が誰の作品をどういった根拠で幾らで買うか(美術資料収集審査委員会など)、という美術領域の経済活動があり、その価値形成の現場に「ギャラリー」が関わっています。
自ギャラリーでの販売だけでなく、国内外のアートフェアへ参加し、各国の関係者(コレクター、学芸員、出版社等)と商談することも、大きな意味があります。
こうした美術界隈のタイムリーな相場を掴んでいるのは、やはり現場の真っ只中にいるギャラリストであり、門外漢にはなかなかその実態は見えないところです。一般人には、”地元の道路工事の入札を何円で狙い澄ませば競り勝って受注できるか”という相場、原理がよく分からないのと同じで、やっぱり、もちは餅屋ということです。
まとめると、作家活動とは、「作品を作ること」、「展示・発表すること」、そして「市場で売る」、というステージを経て、こうした経済活動のサイクルへ参入し、活動資金を得ていくことで成り立つものと言えるでしょうか。でないと持ち出し過多でパンクしてしまいます。
しかし上述のとおり、作家が市場動向、作品の売買に精通できるか・すべきかというと、それは無理があります。地元の道路工事の入札の(略) もちは餅屋でないと難しいわけです。
よって、作家活動を末永く、しっかり続けていく上では、「信頼できるパートナー」としての「ギャラリー」を選び、組んで活動していくことが不可欠であるとのことです。
事例として、サードギャラリーと関わりの非常に深い写真作家・石内都の展示光景について、多数紹介されました。
近年の大規模な個展:ゲティ美術館「Ishiuchi Miyako -Postwar Shadows」(2015)、資生堂ギャラリー「Frida is」(2016)、横浜美術館「肌理と写真」(2017)の会場写真ですが、
ためいきがでるほど
すばらしいインスタレーション
になっています。
( >_<) 壁の色の塗り分け、作品サイズや額の大きさ、リズミカルな並べ方などが、緻密な算段があって、見る側の心に染み入ってくる…
私が実際に資生堂のフリーダと、横浜の「肌理と写真」を観た時は、「写真にはこういう展開が出来るのか・・・」と、衝撃をしみじみ受けたものです。コーナーごとの壁の色が、ピンクや緑で大胆に塗り分けられ、空間自体が作品でした。
スライドを見ていて色々と思い出して、うっとりしました。石内作品には、映像美というのか、陶酔感を催させる香水、膜のようなものがうっすらとあり、よく効きます・・・。
うっとりしていたら講義が終わってしまいました。
あう。
2.作品合評
7名の生徒が、それぞれに自身の作品コンセプトと、修了展の展示プランについてプレゼンし、綾先生から講評をいただきました。
個別のやりとりを書き起こすと週が明けてしまうので、キーとなるコメントだけ以下に抜粋します。
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・デジタル写真の時代になったことで、写真は彫刻化している(=何にでもアウトプット、プリント可能となり、像をより物質として扱えるようになった)。小松浩子のように、色んな展開の方法が考えられる。
・作家の中で”だいぶ過剰だ”と思うぐらいのものが、観る側にしたら”少し過剰”
(=ちょうどよい驚き)
思い切って試したらよい。グループ展は挑戦するには最適。
・(コンセプトに様々な思いが沢山込められているプレゼンに対して)説明に引っ張られて、写真をちゃんと見てもらえなくなるといけないので、タイトルをコンセプトに即したものへ整理すると良いのでは。
・白いマットは「ちゃんと」してしまうので、スタイリッシュな作品の場合は、マット無しや、黒マット+黒フレームも試してみてはどうか。
・組みにする写真に複数の要素が混ざっている場合は、できるだけ近い属性でまとめていくことが望ましい。
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今回は個人向けに具体的なアドバイスが多かったので、あまり抜粋していません。筆者に時間がないのである(泣く)。そこはまあ、皆さん見学を申し込んだり、体験いただけると面白いかと思います。
<総括>
本日の授業の総括です。
畑館長からは「作品のタイトルが非常に重要なので、しっかり考えてほしい」ということと、「各人のプレゼンが淡白すぎる、もっと作家としての思いを伝えないと、社会に通っていかない」との指摘がありました。はあい。
綾先生からは、「”自分のやりたいことは何か”をはっきり示すことが大事」「写真をやり始めたところだと思うので、今やることは全てプラスになる」と励ましのお言葉でした。
実際にもう「展示」の域になると、非常に物理的なレベルというか、経験を積む以外にどうしようもない感じがします。なんぼ綺麗にイラレで計画書を描いても、CADで緻密に描いても、それは現場で釘打って台おいてやってみんと分からへんで、ということでおます。
( ´ - ` ) やってまいりましょう。
ありがとうございました◎
綾先生の言葉と、行間を埋める筆者の言葉が混在していてあれですが、臨場感ということでひとつ勘弁つかあさい。へへ。
木々も色気づいていました。春がきます。
( ´ - ` ) 完。