水都2009 「ラッキードラゴンSPクルーズ」前編
09.10.10(土)
「水都2009」のイベントで、
「ラッキードラゴン」スペシャルクルーズ&「ウルトラ―黒い太陽」体験ツアーに参加してきました。
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「ラッキードラゴン」も、言わずもがな、ヤノベケンジ氏の作品です。
この「水都2009」のために制作された新作なのです。
この企画では、週1ペースで中之島〜大川周辺、または道頓堀―大阪ドーム―木津川、
といったルートを周回し、メカ竜な姿を大阪に見せつけていました。
文法が過去形なのは10/12(月)で「水都2009」が終了したからです。
このレビューを書いているうちに終わりました。遅筆がうらめしい。
この竜、特殊能力として、火を噴く & 水を噴く、という対極の技を持ち合わせています。
月2回ほどは、停泊中に火を噴くというパフォーマンスもしていました。放水はもっとしていたかも知れません。
公式サイトでは、火炎放射の予定日・時刻は告知されていました。が、ほとんどの大阪人にとってのラッキードラゴンとは、「ひっかけ橋を歩いていたら川から機械竜が来た」「北浜にいたらなぜか火を噴かれた」という偶発的体験だったのではないでしょうか。
実際、このツアーで道頓堀や大阪ドーム(※どうしても「京セラドーム大阪」と呼ぶのに慣れない)を通り掛かると、これは予想外のハプニングと、大勢の人々が足を止め、物珍しそうにはしゃぎながら写メを連発していました。
日常の世界に垂直にナタを切りつけた感じがして面白かったです。
乗船の引換券。ツアー参加費は4100円でした。
現地のブースで首から下げる乗船証と交換です。イラストが嬉しい。
「スペシャルツアー」では、作者のヤノベケンジ×特別ゲストを招いてのトークショーで、ドラゴンを撮りつつ、おもしろ話を聴きつつ、最後に名村造船所跡地で「ウルトラ」の放電ショーを観て締め括りとなります。
10/10(土)のゲストは、なんと、榎忠(エノキ・チュウ)氏。
『ハンガリー国に半刈り(ハンガリ)で行く』(1977)の人です。
以前に『AMAMAMA』(1986)を尼崎市の公園で偶然見て以来、ずっと気になっていたアーティストです。
これは行かざるを得ません。どんなトークになるのでしょうか。
12時出航の、11:55到着。
待機中のラッキードラゴン。
周囲を撮影な人々が取り巻いています。
ドラゴンは、胴体が平らな一般の船です。ショベルカーのようなアームで持ち上がる竜の首を取り付けたもので、一般の人が乗るようにはできていません。窓も「トラやん」が配備され、外から見て楽しむだけになっています。
これまた写真はありませんが、乗客は三十石船のようなデザインの旅客船に乗って、Lドラゴンと併走しながら大阪の川を巡ります。
客は60人ぐらい?
船の内装は左右にベンチを置いて3名ずつ座るというシンプルなもの。天井は鉄筋のアームで支えていて、自在に高さを変えられます。
ここで誤算が。
座席指定かと思いきや、勝手に座って良かったようで、おかげで「真ん中よりちょっと後ろの、通路側」という極めて微妙な場所に座るはめになりました。立ったら他客の撮影の邪魔になり、立たなければどこを向いても人が写り込む。さいあくです。
そうこうしていたら、ヤノベケンジ氏が来ました。
さすが50㎜単焦点(80㎜換算)・・・。多少離れていても素で撮れます。
乗客から「あれヤノベさんじゃない!?」「ヤノベさん来たー」「わあ」「わあわあ」などと歓声が上がります。
「ローズチュウや!」「あれローズチュウさんやわ」と、またも歓声。
何やら、ド派手な同伴者がいます。
真っ赤なドレスを着て、髪を巻いた、透け透けの網から肩をのぞかせるド派手な女性です。私は目が悪くて派手な衣装しか見えないので、何の関係者かと訝っておりました。
(*_*) 乳!!
ヤバい人が来た。 緊張します。アレな人だったらどうしようか。
「キャー」「チュウさんだわ」「ローズチュウー」
まさか・・・
この人が・・・。
確かに間近で見ると、 男だ。
小柄で判らなかった。
「ハ〜〜イ」「ローズ・チュウよぉ〜」
「ご一緒させていただくわねぇ〜」
(*_*)” 乳。
とにかくその乳を何とかしてくれ。。
「ケンちゃんったら、もぉ〜〜〜」 (※ケンちゃん=ヤノベケンジ)
実は、このパフォーマンスには文脈があって、榎忠のかつての作品(活動)をリバイバルさせたものだそうです。
『BAR ROSE CHU』(1979)、そして『帰ってきたローズチュウ』(2006)にて、期間限定(2日間だけ等)でバーを開いたという記録があります。
願望としてのもう一つの人格・性別。「榎忠」とはまた異なる活動を実現すべく「自らがママとなって、夢のような宴の場を開く」に至ったとか。
彼が現代アーティストとしての作品制作以外にも、「自分の身体、存在を使って、その場の意味をアクシデント的に問う」ことは、「半刈りでハンガリー」で分かっていたつもりでした。が、「ローズチュウ」の活動は知りませんでした。ツメガアマカッタ。
ヤノベ「ぼくの愛人を紹介します!」
ローズ「ローズでーーーす」
ローズポート(※)だけにローズ。 うあはあ
(※ 中之島の、バラを植えてある岸辺の名前)
「これで電車に乗って来ました&」うあはああ
船が出てしばらく後、京阪天満橋のビル前あたりでドラゴンがぐるりと客船の真横を通り抜けて、早くも撮影タイムです。
ドラゴン側面。窓から「トラやん」が見えます。
船はかなりの低さ。サンダルみたいな平べったい形になります。
さっそく竜の首が持ち上がる。
( ー_ー)” Great!
細身、しゅっとしたフォルム、まさにショベルカーのアームなんですが、動きの複雑さは段違いです。首の付け根が生きているようにくねります。
【サイズ】1000cm×1530cm×450cm 約3.2t(船舶を除く)
【素材】船、アルミニウム、FRP、その他
素材「船」。ダイレクト。
胴体の船および竜の首、頭はアルミニウムの鱗で覆われ、その下はFRPで軽量化。
しばらくぐるぐるとドラゴンと客船は踊るように回り撮影タイム。
見慣れた天満の光景、南天満公園や天満橋駅ビルなどがまた別の文脈に置き換えられたように感じられ、愉快でなりません。
「日常の強張った定義に風穴を開けて!」 もはや邪教徒の心境。
外観は破壊兵器。でも絵本「ラッキードラゴンのおはなし」によると、もっと深い創造性の力を秘めた竜だということです。浴びせる光線で、空想の世界をこの世にもたらすという。
残念ながら、巨大あひるは撤去済み。
船がきめ細かく回り込んでは、左右どちらに座っていてもちゃんとドラゴンを撮れるようにしてくれます。
口をあけたところは本当に蛇のような姿です。これはお見事でした。
京阪天満橋。
10分〜15分ぐらいかけて大川の中央でぐるぐると回ったように感じます。
1度目の撮影会が終わり、船は南下します。
大川から天神橋をくぐり、阪神高速1号線の真下に潜りこんで、細い道頓堀川へ入りました。
ここからトークショー。内容はヤノベケンジ、榎忠のバイオグラフィーについてと、特に「トラやん」「ラッキードラゴン」の制作話について。
また、ヤノベ氏から道頓堀川における水門の機能について解説。
道頓堀川の上流に位置する大川と、下流の木津川〜大阪湾とは、潮の満ち引きによって水位が変動してしまう。水位の高低差をなくすためにパナマ運河の閘門(こうもん)と同様らしく、船を第一の門の中に入れて一旦閉ざし、前にある第二の水門を開いて水位を調整。水位が等しくなったところで船を進めます。
他にも、寝屋川からの汚れた水を入れず、大川からの水をうまく引き込んで水質向上を保つ役割もあるらしいです。
水門手前。両脇の噴水は、踏切と同じで「とまれ」の意。
一隻ずつ水門をくぐって水位調整されながら進みます。前の観覧船も待機中。
待機中のドラゴン。
「どうじま」号に取り付けられたことがよく分かります。
頭部が異様に大きい。
このあたりで両作家のバイオグラフィー紹介です。
まずはローズチュウ(榎忠)から。
「この人はただの不審者ではありません」「れっきとしたすばらしいアーティストです」「こんな恰好をされますけれど、本当にアーティストなんです」「すばらしい方なんです」×数回。
確かに何も知らん人が見たら現代アーティストとは思わないですよね。小さい女の子がビービー泣き出したんですが、
ヤノベ「ドラゴン怖かった?」
母親「ドラゴンじゃなくローズさんが怖いって・・・」
女の子「み”−−−−−(泣)」
ヤノベ「ローズさんあかんがな子供泣かしたら」
両性具有は子供にはやはり異様なのか?
写真パネルは言わずもがな、「半刈りでハンガリー」。
「ローズさんはお知り合いの方に榎忠さんという人がおられ、その榎さんが仲介して今回、ローズさんに来て頂けることになりまして・・・」あくまで別人物www
「幻のローズバーの復活ということで、非常に貴重な一日になります。今日はこの船がローズさんのお店、皆さんはお店に招かれたお客様ということです」なるほど。
しかし場の空気のゆるさは半端ではなく、撮影にうずうずしている者、談笑している者、昼の弁当などで飲食にせわしない者と散らばっていて、皆、堅苦しい説明は抜きにくつろいでいました。
そしてヤノベ氏本人によるバイオグラフィー解説。
「ヤノベケンジを知っている人、手ぇあげて!」 はい。
「みんな知ってるやんな!」 はい。
「じゃあもう説明せんでええよな」 ええええ。
「えーみんな知ってるやん、もうええやん」
じゃあしょうがない、簡単に説明します、と。
「ぼくが生まれてしばらくした頃にちょうど万博が興って、その熱狂がちょうど終わった頃に開催地だった茨木市へ引っ越してきたんですね。だから僕は万博の終わった後、祭りの後というものに出会うわけです。そこからヤノベケンジが始まります」
「ぼくは空想少年であり、コスプレ少年だったわけです。それで物心ついたときには、自分で作っちゃいました!」「これが中学生の時に作りました、ハイ! 仮面ライダーですね!」
クオリティ高い。更には高校時代にも、同様にバルタン星人の全身コスチュームを制作。
半端な人ではありません。
そうこうしていたら、船は南下を終えてきゅっと西へ折れ曲がり、心斎橋へと入ってゆきます。
このあたりも景色が非常に面白かったです。
「メガロマニア展、知ってる人!」「はい、これトラやん」「ジャイアント・トラやん」「はい」「はい」「はいこれ」
シャイなのか自分の作品についてパネル説明するのが異様にグダグダなヤノベ氏。
「もうみんな知ってるんでしょ?」「もうええでしょ?」 どうしたんすかw
「今はもう無くなってしまいましたけど、そこの戎橋のあたりにキリンプラザっていうビルがありましてね」「90年ぐらいでしたかね、アートコンテストで賞を頂きまして、それから本格的に活動していくきっかけを与えられたんですね」「大阪という地にチャンスを与えられた、だから、ぼく自身も、大阪に何かをお返ししなきゃという思いがあるんですね」
納得。
「水都大阪のイベントとしてあっちこっちに看板とか立ててますんでね」「中之島を中心としてやってますけど、色々ありますんで」「明後日の月曜でもう終わりですけど、ぜひ見てみて下さい」
隣を通り掛かった観覧船に、大阪市長(平松さん)が。
「あっ!市長さんや!」「みんな手をふりましょう!」いきなりすぎて撮影が間に合わない。
かに道楽、グリコの看板などがひしめき合う道頓堀の中心にて、船は一時停止、そしてドラゴンがまた首をもたげ始めて、ウォーターガンのお見舞いです。
「ドラゴンが心斎橋を襲撃ですよ!」「かっこいいなー!!!」 ヤノベ氏の声を受けてドラゴンが意気揚揚と水を噴き、行きかう人々が立ち止まって興味津々で注目。
俄かに人だかり。道頓堀橋に突如、現れたメタリックな竜、存在感は抜群でした。
去り際に。
数分間のウォーターガンが終わり、また前進。
大勢の人が駆け付けてきました。人気がある。大阪人と相性が良いのではないか。
これだけ店の看板やのぼりの主張が強いと、ドラゴンはアートというより店の出し物のように溶け込むことがわかった。大阪は恐ろしい。
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続きはまた別腹で。
後半はクルーズ終点〜火炎放射、そして、『ウルトラ』の登場です。