2010.3.27(土)【ART】六本木アートナイト2010(1)ミッドタウン~21_21 DESIGN SIGHT
「六本木アートナイト」なるものを体験した。
東京都、東京文化発信プロジェクト室、実行委員が中心となって2009年より開催している「一夜限りの」イベントで、一夜限りの割にけっこう大きなものを六本木の中心地に幾つも配置し、アート関連施設を夜通し開けたりするのだから、なかなか豪勢なものです。
プログラムを見たらどれもやっぱり、翌日の朝には片づけてしまうようで、勿体ないというかなんというか。
その儚さが命なのですけれどね。見逃すと次がないというのは切ないです。
昨年は六本木ヒルズアリーナでヤノベケンジ「ジャイアント・トラやん」が火を噴いていたらしい。マイミクの日記を見て愕然としたのは忘れられません。あれはガチで悔しかった。それはもう。今年こそはと思ったわけです。
中心となるのは以下の施設・エリアです。
○東京ミッドタウン +サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT
○六本木ヒルズ +森美術館
○六本木商店街
○国立新美術館
オブジェ、パフォーマンス、クラブイベント、展示などが繰り広げられ、どこに行っても何かやっているといった具合。
特に予定も確認せず、現地で適当にフラフラしてしまったんで、まとまりがありませんが、また例によって写真でレビューさせていただきます。
今回は割とグダグダで、コンプリートには程遠い状況。
どこで何をやっているのか、それがどれぐらいレアかをちゃんと考えていなくて、後から思えば相当勿体ない見逃しをしていたんですが、くやしいのであまり考えないことにします。
(例;椿昇のムーンウォーク、カンパニー・デ・キダムの『ハーバートの夢』など)
とりあえず、私自身の日記のような形で記録していきますね。
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21:30/地下鉄六本木駅到着
花見の場で同じデザインのパンフレットを手渡すと、先輩が「なに、このデザインといいフォントといい」「主催者、行政ちゃうん」「・・・やっぱりね」とつぶやいていた。
( ー_ー)”
確かにこのフォント、まるで役所の職員が手作りで頑張ったみたいな感はある。
共感。。きっと職員が頑張ったんだよ。
地上に上がると、すっかり夜。
階段前でガイドブックを手にする運営スタッフと、アートナイトの看板が。
今年の目玉はこの宇宙人の乗った、二本腕の宇宙船だ。
相当大きいとみた。
キャッチフレーズは
「眠らない街の夢の一夜、
ついに始まる。」
22時頃。
大学時代の後輩二人;小唄氏とタク氏に合流する。
小唄氏は前回の「摩耶観光ホテル」で共に潜入した男。タク氏はその彼と親しい後輩であり、アート系に興味があるのだという。
なんと頼もしい面子であることか。合掌。
携帯の電池が完全に切れてしまってコンビニに駆け込んでは乾電池式充電器を買い求めたり、非常にあわただしかった。
そして土地勘がなくて、大通りは分かったもののどの道の先にどの施設があるのかよく分からない。
街の中心にある大きな交差点で二人と合流してから、小粋な店で一服。
「六本木バール・デルソーレ」本店。
色々な酒を置いていて、かなり力のある人がやっている店らしいが、さきに花見を経てきて若干酔ってるため、ケーキとコーヒーだけに。
それでも十分美味かった。
メアド交換などをした後、本格的に行動開始。
とはいえ、酔ってる上にカフェインでふらふら、理性が定かではなく、ふわふわするので、完全に手綱を小唄氏とタク氏に預けきってしまった。
まずは「東京ミッドタウン」へ。
外苑東通りを歩き、地下鉄「東京ミッドタウン」駅を過ぎてゆくと、2つの巨大なビルがそびえて囲む敷地、まずはケーキがお出迎えする。
巨大アートオブジェ『Smile Cake,Happy Cake』
東京ミッドタウンの3周年を記念して、縦5.8m、横7.3m、高さ6mの巨大なケーキオブジェを設置。
その手前には長さ約8mの巨大フォークも。
夜だったのでフォークには全く気付かなかった。
個別のアーティストの作品ではなく、あくまで東京ミッドタウンがアート演出として用意したプロジェクトであり、
これについては4/4(日)まで展示されている。
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「東京ミッドタウン」公式URL参照。
http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/feature2010/blossom2010/art/index02.html
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この展示は通りに面した、一番分かりやすい場所にあっただけに、人気を博していました。女子の食いつき良し。
いちごの造形がラブい。
実際の照明はこのように、ショートケーキとかけ離れた色になっていたりするので大いに困る。
厳しいよう。
しかしフラッシュを使うと背景からなにから、全てブッ飛んでしまうので堪えます。
これが、わけのわからん素材で作られており、押したり突いたりすると「ぐにょん」と弾力に優れている。
一体何を使ったんだ?
大きなケーキというだけでも女子がキャアキャアなのに、この「ぐにょん」感は堪らなくて、よりいっそうキャアキャアしていた。
一般の客のような顔をしながらひみつ道具めいたものを片手に歩いているからびっくりした。
聞いてみると、美大(武蔵野か多摩か、どっちか忘れた!)の方々で、作品を見せるために持ってパフォーマンスしているのだとか。
欲しいなあ。
わりとあっちこっちにいてはる。
どっかで無料配布でもしてるのかと思ってしまった。
女子が持つと非常に愛らしいアイテム。
TOKYO FMスペシャルパフォーマンス。
「SOUND meets ART@"Roppongi Art Night"」
アコギライブ的なことをしていました。ポロンポロン・・・
しかし撮影が忙しいので先へ進みます。
東京ミッドタウン・イースト。
アートもさることながら、周囲を取り巻くビルがまず美しい。
廃墟のような、古き趣も大事にしていますが、本質的には先端を走る構造体、エッジの鋭い建築物が好きです。
メガストラクチャーへの思慕がございまして。
ミッドタウン・プラザ内。
スターバックスのある地平フロア、「キャノピー・スクエア」。
ガラス張りの天井を、先が3本に分かれた支柱が何本も立って、支えています。
その柱の胴体に、青い波、動き回る水が現れました。
映像制作集団「WOW」 作品名「ROOFSCAPE」
無音で、よく動く。
重力にとらわれず、上ったり、柱の上部で波打っていたかと思うと、またくるりと向きを変えて、落ちてくる。
中に入ります。
ミッドタウンに疎いんで建物とかエリアの名前がいまいちよくわからん。
酔ってたし、
あええ。
店が全て閉まっているが、客がうれしそうな顔をして往来している。実に珍しい光景だ。
なんか音がごわごわ聞こえてくる。ライブをしているようだ。
「Mid-Space」ガレリアB1F アトリウム
なんか鳴ったり描いたりしてはるわけですよ。
人が集まっていて熱心に見ていた。
これがどのアーティストなのかようわからんが、
タイムテーブル的には「joseph nothing +kaz」(ライブパフォーマンス&ライブペインティング)だと思う。
もしかしたら微妙に撮影禁止だったかもしれない。
そうだったらすいません( ・_ ;)
さて次、どこを観よう、と若干考えるも、
○六本木ヒルズ・森ビルまでちょっと遠い
○ミッドタウン内のライブ出演者がよく分からない
○美術館二つがオールナイト営業
細かい企画が同時多発的にあるし・・・あたま回らないし・・・
客がどこかに集中して混雑するのは避けられて良いんですが。
とりあえずガレリアを出て歩道橋を渡ったところ、芝生の上に立つ美術館「21_21 DESIGN SIGHT」へ行くことにしました。
一番近い。
さすが東京ミッドタウン、設置されてる案内板もパネェ。
前からこの施設は群を抜いてハイセンスだと感じざるを得なかったが何かとパネェ。
これ、タッチして操作するのだが、今回のイベントの件や、今後のスケジュールなども見られる。
さっきのショートケーキも載っていた。
「オシャレだな!」吐き捨てるように言う。
ハービスが限界の関西人、煮え切らぬ思いぞ。
条件は厳しいが、手すりにカメラを置くなどして何んとかすればうまく撮れなくもない。
わてはここの景色がけっこうすきでしてな。
たまりまへんのや。
紫に染まった木々の向こうでは、ミッドタウンな人々の営みがありました。
こんなんしてたら、貧しい子が高級高層ビルを指くわえて眺めてるみたいですね。
ええ。
ピントが非常にあやういが、撮りたかったので撮った。
枝きれ一本、つぼみひとつにも美は宿ると感じてます。
花が咲いてなくてもむしろこれはこれで綺麗だ。
咲いてたら咲いてたで、それはそれで脳髄がざわめくような光景になるから、綺麗だ。
本当は三脚でじっくり撮りたかった光景。
無理ありすぎだろう手持ちでこの状況。
芝生地帯。寒い。
数十名の人が作品を撮ったり散歩してうろついている。
楽しい。
触ってないので分からないが、紙か布のようなもので出来ている。
こういうものがひと区画あるだけで、日常世界が少し変わるので、よい。
暗かった・・・( ゚〜゚ )”もっと明るく撮りたかった。。
そろそろ三脚がいるのではないか。
気付くとシャボン玉がそこいらに浮遊していました。
何事かと思うと、地面に据え付けられた機械からブクブクと泡が出ていて、
定期的に風を送り、オートシャボンダマ化していました。
ブワアー。
夜に舞うシャボン玉。
綺麗。
どうせならもう常設してしまえ。
しかし
夜間にシャボン玉を撮るのって難しいですね。
全部流れてしまう。
プログラム名が「Light Flight in Midtown Garden」(ライトフライト -光の群れ-)。
名前があるとは・・・。
浮遊感があったので、まあ、昇天通りとでも名付ければよいかと。
ふううー。
芝生広場から「21_21 DESIGN SIGHT」へ続く道が、こんな感じでライトアップ。
これは綺麗でした。
定期的にライティング色が変わります。
これも常設したらいいのに。
自分でやっといてこれがどうやったらこうなったかわかりません。
うへえ。
手前が(たぶん)シャボン玉、奥の光が「21_21 DESIGN SIGHT」の窓だと思います。
なにがどうなった。
まじめに撮れば非常に幻想的な光景になりますよ。
ひねくれて撮れば遊び甲斐があります。腕試しに良いのです。シャボン玉×光。
「21_21 DESIGN SIGHT」に入る前に少し移動して、名前は知らんけどあの巻貝の渦巻きのようなアレ、
あのオブジェのあるところまで行きます。
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Final Fantasyのモンスターとして出てきてもおかしくない植物系生命体がいました。
なにこれ。
本気を出したら人ぐらい襲って飲み込めそうだ。
発光していて、色が変わる。
でかい。
あとで知りましたが、裸子植物ですって。
まあ。裸子。
もう一体、国立新美術館にも配置されていたことが後に分かった。
他ブログの写真を見る限り、あまり形状と色に違いはなさそう。
六本木も物騒な街になったものだ。
嬉しいね。
『Before Flower』和約すると「裸子植物」。
椿昇(つばき・のぼる)の企画で、今回のアートナイトで肝となっている。
この作品単体の名前ではなく、会場全体で多発的に行われる関連企画の総称だ。
今、書いてて知りました。
うへえ。
さきほどの宇宙人の乗った二本腕の「マザーナイト」を六本木ヒルズアリーナに、
太古の裸子植物「アルゴス」と「ウルモス」を東京ミッドタウンと国立新美術館に配置。
それら三箇所で、裸子植物が放出した胞子ということで
「胞子ボール」が配布された。
ピンク色のビニールの玉で、何にでも付けられるストラップ的なもの。
発光し、会場にはこれをカバンやら頭に付けている人が大勢いた。
若干羨ましかったが、もうなかった。うう。
胞子ボールの件はいいとして、これはなんだ( ・_ ;)
予備知識なしで見たかった。
名称不明。
このなんというか・・・シュールな睾丸というか、
前衛的なケツというか、
いやもう素晴らしい。
丸みが素晴らしい。洋梨をぶら下げたようだ。
やたらめったら巨大だという点も良い。
こちらはその後ろにある巻貝の中身のような、渦を巻いたオブジェ。
365日固定されています。
あいた円から向こうに樹木が見えるのがチャーミングなのです。
渦巻きを近くでみるとこのように、非常にシャープな構造美がございます。
振り返って、北東の方向に目をやると
東京タワーがうっすらと見えます。
これは嬉しい。
いちいちタワーに行く手間がはぶけました。
相当ぼんやりしてますが、これだけでタワーと分かる。
高層建造物は偉い。
あらかた撮り終えたようなので、「21_21 DESIGN SIGHT」に入館。
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今回の展示は『クリストとジャンヌ・クロード展』『LIFE=WORKS=PROJETCS』
2010年2月13日(土)-4月6日(火)まで。
アートナイトでは、最終入館が朝の4時半まで可能。
( ゚~゚ )ノ これはすごい。
かなり頑張ってると思います。美術館がオールナイト営業なんて。
作家について。
布でなんでも包んだりする夫婦です。なんでも。
身構えて期待して行くより、衝撃が強くて。
作品が素晴らしいとかいうより、「芸術」とは一体どこまでのことを言うのか? 「創作」とは何なのか? を考えさせられる。
まず、展示期間の短さに気付きます。
数週間から数カ月。
素材が布(この夫妻にとって布は重要なモチーフらしい)であるため、永久保存が利かない。
そして、規模が大きすぎて、空間を占有していられない。また、自然環境を一転させるため、原状回復の必要がある、など。
風雨にも曝されるのでどうしようもないですし。
しかしその「夢のよう」な瞬間の記憶こそ素晴らしいのだと。
もうひとつ。
展示期間が存在しない企画も多い。
数年〜十数年、数十年かけてプラン企画、当局と交渉とした挙句、結局許可が下りなくてお蔵入りになったというプロジェクトが
幾つもあるのです。
常人なら気が狂うでしょうね。
交渉の手間は半端ではありません。
その上、資金調達はすべて自分たちの作品の販売(主にプロジェクトの計画を描いたドローイングやコラージュ)によって行っているとのこと。
国や自治体、企業から資金提供を受けない。それを受けてしまうと、自分たちのやりたいことがあらぬ方向へ向かわされるリスクがあるためだとか。
そのやりたいことというのが、例えて言うなら、大阪の御堂筋の始まりから終わりまで、街路樹すべてに一本の白い布をずっとかけるとか、大阪市役所を白い布で全部覆うとか、シンプルにして非常に大がかりなものとなっています。その上、公的な空間を大量に占めるので、法令上無視できないところに関わってきます。普通に「やりたいんですが」と言ったら「ちょっとそれは」でまず断られることばかりです。
確かに、布を牧場に40kmに亘って横断させたり、橋を布で覆ったり、傘を立てまくったりした先には、今までと違う世界があります。
それは見てみたい。ぜひ見たい。
しかしそれを、粘り強い交渉のみで当局と折り合いをつけ、実現に向かわせるなど、
一個人の情熱のスケールとしては突き抜けすぎています。
だから私は好きなんですけどね。
展示内容としては、プロジェクトの写真パネルと、企画のドローイング、コラージュ。
そして別室で、「ニューヨークより生中継「クリストと話そう!」」と、ドキュメンタリー映像5作品の連続上映。
私達が映像会場に着いた頃、ちょうど生中継イベントが終了して入れ替わりでした。
なのでここで日付が変わったころですね。
そういえば2009年11月18日、旦那のジャンヌ=クロードは急逝しています。
おお。
クリストとジャンヌ=クロードの芸術活動を記録した、メイスルズ兄弟によるドキュメンタリー映画。
他に回るところも多いので、二本だけ見ました。
0:15-0:43 『クリストのヴァレー・カーテン』 1974制作 28分
0:43-1:41 『ランニング・フェンス』 1978制作 58分
一本目は寝てしまいました。さすがに疲れていた・・・。
しかし端々は覚えています。
折衝に苦労し、もう全然すんなりいかない中で、それら苦労も含めた制作過程もが作品なのだと本人が言っていました。
普通の人は発狂すると思います。
裁判は起こされるし、やりかけのところで中止命令が決議されるし、
これはもう。
二本目『ランニング・フェンス』は必見です。
これが、北カリフォルニアの丘陵地帯に高さ5.5mの白いフェンスを39.2km張り巡らせたプロジェクト。
発案から交渉、工事着工、裁判所からの中止命令、ギリギリの敢行、ついに完成という、
しのぎを削る攻防戦を見ることができます。
むちゃくちゃ大変です。
規模が大きすぎて、作業中のクルーへ水を供給するのも一苦労だし、
まずは牧場への設置許可で揉めて前に進まない。
うまく行って、着工後も、敷地の先端を越えて海の中まで作品が伸びていることについて、
法に触れるということで停止命令。
布をいよいよ張るという最終段階においても、吹き付ける風をまともに受けるため、ものすごい手間を要しています。
自然との戦いであり、人間世界の法との戦い。
「やりたいことをやる」というのは、目に見えないさまざまなものとの戦い(=関係を持つ行い)だと思い知らされます。
うええ。
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次回は、六本木アートナイト;六本木ヒルズ編
★ http://mareosiev.hatenablog.com/entry/20100328/1270373655