「大阪・関西万博2025」に呼応する台湾文化イベント「We TAIWAN」。大阪の中心部:グラングリーンと中之島が、実質的に万博会場・台湾特集エリアになっていて痛快だった。
アート・文化展示イベント「台湾スペクトル」をレポ。


全体像はこう。うめきた「グラングリーン」北側のイベントビル「VS.」でアート・文化展示イベント「色彩の融合」、中之島公会堂と中之島公園で各種のゲーム、映画イベントとマルシェ(屋台)が催されている。
「色彩の融合」は、一般向け展示「台湾スペクトル」と、招待制の各種イベント「テーマナイト」の2本からなる。テーマナイトは「文学の夜」「映画の夜」「原住民の夜」など気になるラインナップだが謎。
なお「台湾スペクトル」をはじめとして、どれもこれも無料です。わあい。
(その他のイベントレポ)
◆VS. 周辺
2024年9月に先行まちびらきをしてから約1年が経つが、「グラングリーン」に来たことがなかったので、今回初めてその姿を拝むことになった。都市の中心地にフリーの公共空間、無料の広場をしっかり設けたことが話題になっていた。
しかし今回は北側にある文化施設「VS.」周囲にしか用がなくてですね、例の開放緑地は南側らしく、もう暑いので散策もしません(暑い)。

まだまだ作っている。2027年春に全面完成するらしい。長生きしましょうね。
グランフロント北館から回廊で繋がってる建物、降りてくるとすぐ隣に「VS.」がある。



緑色のマリモの水風船みたいなのが「a-We(アウィー)」ちゃん(かわいい)。
アウィーを作った時点でこの「We TAIWAN」イベントは勝ち確です。キャラで期待値と愛着度が決まる。目と口が絶妙な距離とサイズ比率で、かなり攻めたデザインをしている、黒目も虚無の手前ぐらいデカいが、ギリギリでかわいい。考えた人の技術力が高い。



銀色の彫刻、歩行者3名がクラウド(雲)で頭を包まれている。ラム・カツィール《YUMEMITAI》、イスラエル人作家で、これはグラングリーンに招聘された3組6点の作家・作品の1つ。台湾とは関係ありません。(この時点ではあまり気付いていない)
見ての通り、オンラインのクラウド化が人のコミュニケーションのベースになっていることを表している。ジョージ・シーガルの時代からずいぶん変わったな。
単純にアートが都市空間、特に公共の広場の中にあると宝探し的に目的が生まれて良いですね。滞在に意味がある。
◆「台湾スペクトル」
「VS.」、入ってすぐの階はカフェ。ビルのど真ん中は階段。えらく狭いビルだが大丈夫か、と思ったら地下がイベントスペースなのだった。
地下は想像以上に広い。そういえば「VS.」は安藤忠雄が設計・監修していた。地上から目で見える空間はごく一部にすぎない、いつもの安藤節は健在だ。


「台湾スペクトル」展示の構成は3つ。
- 「台湾本色」:絵画を基にした映像の没入型ビジュアルシアター
- 「光織自然」:染め織り文化の特集
- 「島嶼声譜」:祭りと生物と神獣のミクスチャー
全体1時間ほど。ガチの読解系アート展示ではなく、見て楽しむ、楽しみながら学ぶというもので、超気楽です。考える必要がない。受け身で良い。
物販も見ましょうね。

しかし14時半頃に着いた時点で「a-We(アウィー)」ちゃんキーホルダー、バッジは売り切れ。おい。毎日少しずつ放出してるぽい。可愛いからほしかったんだがやはりむりか。まあわかってたけど残念ではある(残念)。1500円のキーホルダーが3000円台で転売されてるのでメルカリを開けないようにしている。


あーかわいいなちくしょう。ステッカー詰め合わせ(600円)を2つ購入。保存用と貼る用やで。
靴下は履いて使って汚れるのがイヤなのでむりです。
なお物販は中之島のマルシェの方にもあり、そちらは15時から空くのでワンチャン狙うのもアリ。
◆「台湾本色」
「STUDIO A」の広い壁面全体を用いたプロジェクター映像展示で、3種類の映像が順に繰り返されていく。3~4分ほどの映像と1分間のインターバルの連続で、それらは国立台湾美術館の収蔵作品をモチーフとしている。
作品の上映が終わると、壁全体に美術館の壁や柱を模した映像が掛けられ、壁に設置された液晶パネルには絵画が表示され、場は疑似的な美術館/絵画作品となる。観客は自由に出入りでき、タイル張りの床に直に座ったり立ち見してる。スタジオは台湾の美術(館)に仮想接続されている。
3種の映像はどれも美術館収蔵の絵画から派生しながら変性し、次へ次へと遷移してゆく。画家が風景画を描いている場面が象徴的に繰り返される。厚みゼロで絵画の「塗り」が進行してきて視界を埋めてゆき、絵が視界を塗り替えていく。絵画の重要な「質」である筆致や画材の物質的リアリティをほぼゼロにする代わりに、その軽さをもってして絵画の運動性能、塗り広がって世界が次々に現れるという現象のほうをクローズアップし、更に観客総受け身で視覚に叩き込むエンターテイメントとしている。
プロジェクションマッピングの次の手といった感じで、感動はないが、理想的な知覚(絵を見る際に脳内で起きてほしいことを先取りで提示してくれている)がもたらされる。
一番良かったのは鯨が進行方向を変えて横向き移動から正面を向いてこちらへ迫ってくるシーン。絵画が空間・視界そのものとなって回り込んでやって来るのは、映像ならではの表現だ。
抽象画やシュルレアリスムでこれを、エンタメ成分抜きで徹底的にやったら、かなり面白いと思った。理性は強化されるのか混乱されるのか。








◆「光織自然」(こうししぜん)
台湾の染め織り文化として、染料を得る植物の標本、色見本、染めた布などが並び、染めを用いた作品が台湾の自然、山や川、海、風、空を感じさせる。個々に展示物を見ると博物館的な資料となっているのだが、全体の繋がりがうまいためか、染めの起点となる素材、技術の個別具体の解説から、大きな自然界への繋がり、作品世界への広がりを体感できる。


このコーナーで「これは台湾文化イベントというよりも、大阪・関西万博の台湾パビリオンだ」と実感した。会場が夢洲の外にあるというだけで、趣旨や視座のありようはまさに万博の趣旨に適っているし、さきの「台湾本色」コーナーのように大きなフロアを映像やインスタレーションで占めて観客の意識を飲み込んでから、個別の展示品へ落とし込んで文化・伝統の具体例をプレゼンしていく見せ方も、万博パビリオンそのものである。
わざわざ万博会場に行かなくても、万博同然の展示をマイペースでまったり観られるのはありがたい。
が、勿論大きな違いはある。万博会場は祭りの場で、それぞれの国に特別の関心がなくてもテンション・意識が「異国を観る」ことに高いレベルでセットされている。対して「We TAIWAN」はいかに大阪・関西万博との関連付けを語っても台湾単体のイベントであり、万博の一部と見なして来る人は圧倒的に少ないだろう。実際、主催は台湾(中華民国)文化部であって大阪府・大阪市の色はなく、会場のロゴやキャラは「アウィー」ちゃんであり、ミャクミャク様はいない。つまり来場者は「台湾が好きな人」「興味がある人」に限られるのではないか。ごく一部に「万博にハマりすぎて似たような異国文化イベントに飢えている人」も含まれるかもしれないが、基本的に来場者の動機が全く違い、つまり属性が異なるだろう。
私がまさに7月上旬に初めて台湾旅行をしたことで「目覚めて」しまい、台湾に多大な関心を持つことになった人種である。それがゆえにX(Twitter)で魯肉飯(ルーローハン)の屋台だの台湾雑貨だのアート展示だのとイベント記事が流れてきたのに敏感に反応してやってきたわけです。みんな同じでしょう? 来場者の同質性は相当に高いのではないか。私は本来なら天然の染料素材だの布の染めには興味がない、しかし大阪・関西万博フォーマット × 自身の台湾経験によって展示内容に関心を持つことができている。
ここでは陳景林とその妻・馬毓秀の取組みが主に紹介される。
「台湾クラシック百色」として、暮らしに応用可能な天然染色のデータベース構築が目指されている。染料の元になり台湾に自生する植物を調査し、分類するとともに、染めの工芸技法の復元や網羅を行っている。



紫~青の染めは実に美しい。「色」って色があるんですね!(思考がマヒしてきた
植物の標本、染めの試験、データベースがあり、採集地域から布の素材成分、媒染剤の含有物質、時間、表れる色の種類などが細かく記録されている。





「色」を巡る探求の深さ。色によって宿る国民や国の歴史、アイデンティティーについて派生していく話でもある。ウニの殻を藍染めしていてかっこいいなと思ったが、そもそもウニの殻は一般家庭にありません。
フロア中央で宙に浮いている模様は、楊偉林《回遊》、島と水の循環を描いていて、上空の雲、雨、そして河川や潮間帯から、海、という3層構造で形成されている。台湾と水の関係が藍染めと織物で示されている。一つ一つの円の縫いと染めがバリエーション豊かで、どこか日本の和の感覚にも通じている。水を主体とした文化圏で、島国であることが根底で共通しているのだろうか。


奥の壁面を埋める巨大な作品は陳景林《母なる台湾の河》、天然の藍で綿布を絞り染めしたもの。陳景林と馬毓秀の夫妻は、長年の編み・織りと天然染色の研究を通じて独自の芸術スタイルを確立したという。水墨画のような壮大かつ繊細な染め物が一体どれだけの仕事量から作られたものなのか想像がつかない。幾多もの絞りの痕が見えるが濃淡が見事なので、その「色」は植物のように自然と生えてきたように見える。


◆「島嶼声譜」(とうしょせいふ)
伝統的な祭りとサイバーなclub空間が合わさった、やや暗めのフロアに赤と緑の蛍光色が電気的な輝きを帯びて、浮かび上がっているのは複雑で過剰な装飾を施された祭神とおぼしき衣装、仮面の複合体。現代と伝統が衝突して混成されるのは気持ちが良い、破壊的な創造力がある。


会場では何をどこから見ようか目が定まってない状態なので、パッと見で伝統的衣装と判断してしまうのだが、パーツ各部をよくよく見ると工事現場のガードマンや、鯨やシジュウカラが神の姿で装飾された、伝統とサブカル、神と自然と電気のミクスチャー領域なのだった。台湾版ヤノベケンジとでもいうのか、李育昇・李文政《台湾特有種+台湾ライトフィールド》、これは無限大の展開可能性がある。台湾の寺院はそれこそ細密かつ重層的に彫刻・装飾がなされ色も多彩ゆえに、サイバー化と相性が良い。むしろサイバーなるものがそのカオスみある異国情緒の世界観を取り込んで土壌としていることもあって相互関係がある。なおかつ細部の緻密な作り込みに目を這わせる快感があります。




ただ「台湾のさまざまな音の情景を組み合わせ、音と光が交わるコンテンポラリーな表現へと昇華した没入型アート体験」「音をコラージュしたサウンドシアターで、音は歩く風景になります」というのが謎で、このフロア自体には音がない。機体が音を鳴らしていたり祭りの音楽が鳴っていたら良かったのだが、そうでもない。



この機体はすごくいいですよ。背中の鱗状の重なりが完全に「わかってる」人の仕事。ユニットの連鎖の美( ◜◡゜)っ
フロアの左側は行列になっていて、「Hard、Hard(ハウ・フア・ランジーゴン)台日交流版」の鑑賞待ちである。一度に入れる人数が限られているためだ。20分ほど待って入り、約10分の演出。フロアの展示からすると台湾の伝統的な祭りや衣装に関する映像、あるいはその派生としてサイバーみを帯びた融合演出の映像か、と期待したが、全く別の装置による演出だった。



真っ暗な部屋で、宙吊りになった照明器具が、3方向に伸びたワイヤーを伝って移動する。真っ暗な中を漂い、思い出したように下りてゆく。地面には線路が引かれている。
地面には穴が開いていて、照明が入ると、地面の下は建物になっていて、灯かりがつき、洋風の古い建築物が姿を現わす。更に下の床には円形の池、公園のようなものがあって、それも順に照らしてゆく。
懐かしさの中身を辿る小さな旅。記憶の箱の中を開けて、手探りでその姿形を探っていく時間である。草のまばらに生えた線路と、古い造りの四角い家は、戦前の日本のようでもあるし、台湾そのものでもあり、未分化の、共有されている歴史的風土のようなものを思わせた。
しかし如何せん期待していたものと違いすぎたので「え、、?」「祭りは・・・」「祭神は、、、」となってしまったのが残念。展示の位置と関連性・文脈の問題でしたね。
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「台湾スペクトル」展示はこれで終わり。1時間で観終わる善良なボリュームと、ライトな内容で◎ 台湾のことを知らなくても十分にいけます。
「a-We TO GO」というアプリゲームがたいへんよくできていましてね。アウィーちゃんの装備を増やすのに各展示会場の関連クイズやミニゲームをこなしていくことで、台湾文化を知りながらアウィーちゃんを愛でて空き時間を潰せるという仕組みになっています。かわいいねんな。


くそっかわいいなもう🙃
このあと中之島へ移動し、マルシェをしましょうね。徒歩だと30分かかるので、大人はタクを拾って省エネします。
つづく( ◜◡゜)っ