2024年の年末中に「2024年に購入した本・best10」「読んだ本・ベスト10」といったデカい釣り針を垂らすことができなかった私が泣きながら人の居なくなったSNSの海釣り公園で針のついていない糸を垂らしますよ。
買いすぎて意味不明になってたんや。
しかも読んでない(死)からbest10を抽出する力もなく、手元で書影スクショかき集めてやれる分だけひとまず上げます。今回は写真集・写真関連本。
- ◆GCmagazine シリーズ
- ◆Viviane Sassen『HOT MIRROR』『Modern Alchemy』『FOLIO』
- ◆Valerie Phillips
- ◆PETRA COLLINS『OMG, I'm Being Killed』
- ◆G/P+abpシリーズ
- ◆「りんご通信」(赤々舎)
- ◆長島有里枝『SWISS』
- ◆Sarah Moon『幻化』『サラ・ムーン展 巴里のエレガンスな視点』等
- ◆ニューカラー系/William Eggleston、Nick Waplington、Alex Webb、STEPHEN SHORE、Garry Winogrand、Joel Sternfeld等
- ◆金村修『漸進快楽写真家』『ベータ・エクササイズ』
- ◆インベカヲリ☆(エッセイ、ルポ等)
- ◆金子隆一、戸田昌子、アイヴァン・ヴァルタニアン『日本写真史 写真雑誌1874-1985』
- ◆荒木経惟関連、「写真時代」「写真世界」「写真芸術」etc
本だけではない。写真集を何冊買ったか分からない。
一元管理していないので数えることが出来ないのだ。Gmailから購入履歴を勘定しようとして発狂してやめました。今後は買う度にExcelで書名やジャンルを全部入力していくのが良いかもしれませんね。死ぬわ。年末年始は旅に出ておったのじゃ。よけい死んでた。
なお本稿で取り上げるのは、あくまで「買った本」であって「読んだ本」とは言っていない。全然読めてないのに次々に買うので認めたくないけど事実上の積ん読になっており、色々諦めている。本当は未知の写真家を紹介したいがまた今度、
つまりここで紹介してないからと言っておもんなかったとか興味なかったとかではない。私の管理能力と編集力と時間がないだけですすいません。
◆GCmagazine シリーズ
先般、写真賞「夜明け前」でグランプリを獲得した(2024.12/21発表)アートコレクティブ。写真の新時代、新しい写真について語る上でたいへん良い結果だったと思った。
「PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA」での個展(2024.2/3-18)、現代写真研究家・北桂樹とのトークなど活動が関西在住の私にも目に見えるようになってきていたので、これはいかんと6月にZINEをまとめ買いしていたのだが、ZINEが既に普通の写真(集)の体裁としての矩形 × 紙の形態をしておらず、360度爆走状態で構成要素が変成/変性していた。ウチでも管理が困難なため箱に突っ込んでいる。
推しアイドルのライブ参戦グッズと間違われて家人に棄てられそうだが、これが「写真(集)・ZINE」である。中にはUSB、CD=画像データそのものもあり、要は印刷物とデータと立体物との境界は彼らにとって問題ではないし、実際に私達にとっても問題ではなくなっている。ゼロ年代初頭に「デジカメで撮った写真は写真じゃねえ」とイキッてた写真家(気取りの層)や、写真を主義・イズムや「真実」の訴えのために駆り出す層を全力で置き去りにして墓の下に加速的に埋める臨界的な力があり、もっとやってください。わはは。
※この緑色のファーは毛が抜けまくり、家がえらいことになったので泣く泣く引っぺがして処分しました
中身も素晴らしくて、明確で唯一無二の「現実」や「モノ」に非ず、物理とデジタル、風景と感覚とが混線し続けている現代の状況における環境・知覚にそぐわしい。そして学術的・専門家的態度ではなくとことん知的アマチュア兄さん的な、クルマやアイドル、ゲーム世界とゲーム内キャラの加護による最大加速をこそ信奉し、自重をゼロに極限まで近づけて自身らをアバター化するよりももっと早く「超」域へ達しその状態をキープしようという爆上げな知 × オタ × ヤンキー的感性が、たいへん素朴で正しい。その正しさが胸を打つ。
◆Viviane Sassen『HOT MIRROR』『Modern Alchemy』『FOLIO』
もう1冊ずつの紹介を諦めて作者名で括っていることからも分かる通り、個別把握&レビューが無茶なので、クラスターでやっていきます。
Viviane Sassen、長らく謎で凄い写真(家)だったが、「KYOTOGRAPHIE2024」でようやく生写真&作家の全体像がご開陳となりました。以前から『IMA』でも紹介され、謎すぎるので少しずつ買ってたけれどもKG鑑賞で「やっぱこの人すげえわ」と再認識させられ、脳天を撃たれたので、買い増しです。すぐ売り切れて変なプレミアつくから新刊のうちにとりあえず買っておく。
ぶっちゃけどれ買ってもかっこよくて新・デジタル平面シュルレアリスムという実感があるのでハズレがない。『Modern Alchemy』は例外的にテキストが多く、言語化して考えるのに吉。初期作品を再販してほしいな~と思ってたら『FOLIO』が出て神。
◆Valerie Phillips
2022年あたりから気になって集めてるのがValerie Phillips。ティーンの女子を主役として撮っている、プライベートな姿、飾らない姿がある。だが生活感や内面の叙情性とは異なる、何か突き抜けたものがある。男性目線から繰り出される秘め事を覗く視線=エロスの構造を持たない。それはライブであり、被写体はgirlでもありboyでもある。意図せず偶然に/必然的に生まれた形のないpunkがずっと流れている、つまり何かしらの枠組みや規範をすり抜け、裏切るような力がモデル/写真にはあるが、それは全く声高に訴えているものではないので正体が掴めない。無名で野良のビリー・アイリッシュみたいな種子が、芽が、ストリートや家庭の至る所に居るということは確かだ。生きることがすなわち表現になっているような。
◆PETRA COLLINS『OMG, I'm Being Killed』
Valerie Phillipsとそのモデルが明確に言わない、あるいは迂回するかスルーしていることを、PETRA COLLINSは超・明確に、過剰に言ってくる。女子であることの意味と責務と重圧と課せられた役割や支配について言っている。それを過剰に盛って異形の「少女」をぶちかましてくる。エロスとグロテスク、ニュートラルとクリーチャー、ナチュラルとアーティフィシャル、美醜が入り乱れる舞台/自意識。親日家なのか日本語・漢字もタイトルに盛り込んできていて、いっそうカワイイカオスにドライブが掛かる。
◆G/P+abpシリーズ
3年前ぐらいから集めていて、セール時にまとめ買いしている。写真の掲載がデカくてデザインがよくて色味・発色がデジタル写真にたいへんよく合っていて好き。デジタル時代の写真のエロスを正確に体現しているということだと思う。作家陣も確かな力があり、今後活躍を広げていってほしい人ばかり。現代写真家のスタンダードとも言えるかも。
2024年に買ったのは以下。どれもパワフルで好き。収集がたいへんや。
- NELSON HOR『The Tenderness and the Scar』
- 五木田智央『OH! TENGOKU remixed』
- POST/PHOTOGRAPHY
- POST/PHOTOGRAPHY 2011-2021 FISSION and FUSION 分裂と融合
- 中川桃子『world palpation』
- 林田真季『Wondering Guide: A Wonder-Land on Ecology and Society』
- 佐藤ヒデキ『大阪残景 OSAKA(red)』
- 磯部昭子『erotica』
- Takako Noel『Breaking Heart』
- 岡田佑里奈『Blindspot』
- 小山泰介『Phase Trans』
- 鈴木親『新東京』
◆「りんご通信」(赤々舎)
みんな大好き赤々舎さんの出してるオリジナル冊子。写真集購入時のおまけとして2021年に発刊され、いつのまにか第6号にまで達していたが、今年6月に「PURPLE」で手に取ったら明らかに1号とは別物のハイクオリティになっていたことに驚愕した。うそやん!いつの間にこんな紙質・印刷その他パワーアップしていたのか。狼狽。
しかしバックナンバーはもう売り切れていて、市中に出回っている分を集めるしかないと知り、慌てて買い集めて何とか事なきを得た。あかん油断ならん。へんな汗が出ますわ。いつまでも いるとおもうな 親とりんご通信。
◆長島有里枝『SWISS』
版元の在庫もとっくに尽きて中古市場でプレミアがついてしまって、重要な作家・写真集なのに手が出せない、というのは非常によくある話で、私達は主に泣いてゐます。うっうっ。そんなプレミア代表格がこの『SWISS』でしたが、7月に第3版が出て、即攻で買いました。2010年に第1版、2011年に第2版、そこからずいぶん長かった。感謝しかありまへん。この勢いでぜひ志賀理江子も・・・。
◆Sarah Moon『幻化』『サラ・ムーン展 巴里のエレガンスな視点』等
「狂ったように良い」、いや「良い意味で狂っている」のがサラ様であって、それはViviane Sassenの理知の構造体に感性や直感や色彩を絡ませてゆく道筋とは逆のもの、物語(のイメージ)がストーリーの筋や骨格を喰らい尽くして覆ってゆく恐ろしさと快楽があります。夢ではない、だが現実でもない、目を開いたままその場で繰り広げられるもの、幻惑。
安くで買えるのがどうしてもペラくて浅い印刷の品ばかりで、サラ様の本領発揮を体感するには深度が全く足りず、やはり生写真を展示で見るしかなさそうです。上質な写真集が手ごろな価格で入手できればなあ…🙃 NARSのコラボ販促冊子は良かった、ファッションとの相性は抜群ですわ。もっとやって( ◜◡゜)っ
◆ニューカラー系/William Eggleston、Nick Waplington、Alex Webb、STEPHEN SHORE、Garry Winogrand、Joel Sternfeld等
2024年に謎にハマったのが前述のような女性写真家(これはいつもか)と、対となるのがニューカラー系。いかつい。なんだこの力は。「色」で都市と人間との関係、交錯を、交わり合う様を捉えたスナップは非常に粘り強いパワーがあり、「スナップが上手い」「勉強になる」とかどうのというよりただただ全身を眼にして絡みついてゆく強烈な快感と嘆息が。急に開眼した。Garry Winogrand『WINOGRAND COLOR』がやばかったからだ。
代わりに日本の白黒・都市スナップからはいったん興味関心が離れた形になった。この両者は私のメンタル的には競合関係にあるようだ。もう一つ、ソール・ライターも導入部分としては効いているが、上品すぎてニューカラーのディープ層とは別系統という感じがある。フォーム、フレーム内の配置関係から中身を規定している感が強いのな。
個別に取り上げて特徴や差異を語るべきだが、各作家・写真集の深掘りがまだできていない。これは今後も取り組んでいきたい。ニューカラー展をどっか美術館で企画してくれたらいいのだが。。サリー・オークレアの「The New Color: A Decade of Color Photography」展が1981年か…区切りにはまだ遠いな、、
◆金村修『漸進快楽写真家』『ベータ・エクササイズ』
みんな大好き金村修。近年は写真という枠を超えて、音声・映像作品を展開しており、特にコロナ禍以降は新聞の文字などを配したコラージュのZINEを多数発表していてとどまるところ知らずという感があるが、根っこにあるキャリアと哲学は都市景の写真、都市空間の雑然とした中へ体を投じながら放つノイズ音楽を感じさせる。何物でもない雑景をシャッター一発で「作品」へ昇華させる秘術の裏には膨大な写真や映画、音楽に関する体験的知識と、意味や意義、経済性などの「力」に対する反抗というか抵抗があるから、皆真似できないし皆惹かれるのだ。それで言葉を追いたくなる、受けたくなる。学校の先生やマスメディアやインフルエンサーなどいつも答えを言ってくれる層では絶対に言ってくれないような角度と確度(そもそもそいつらが持ちえない言語)で何か重要なことを言ってくれそうだという期待があり、実際に応えてくれている、ただとても真っ直ぐというか真っ当で、しかし基本的な、非常にクラシカルな歴史的事実の積み上げであったりもする…そうした筋力の確かさに触れられる文章だ。
◆インベカヲリ☆(エッセイ、ルポ等)
写真集はある程度持っていて、読み物は『私の顔は誰も知らない』を2022年に購入しただけだったが、今年になって『なぜ名前に☆があるのか?』『未整理な人類』『伴走者は落ち着けない』『死刑になりたくて、他人を殺しました』を一斉に買った。いきなりスイッチが入ったのはまさに2022年あたりから読み物が続々と発刊されたためで、しかも扱う話題がかなり広く、自身の話からインタビューで出会った人たちから全国を震撼させた無差別殺傷犯にまで及び、私的エッセイからインタビュー、ルポと幅広い。
これは「写真家」=ビジュアル表現者という把握だけではえらいことになると思い、慌てて後追いを始めたというわけです。8月にトークを聴いたのも大きかった。
人を理解するというのは結構、瞬間瞬間の状況・状態のこととが多いのと、しかも過去に何らかのきっかけで知ったときの印象や情報がベースになっていることが主で、両者が組み合わさると「○年前に△△で知った・喋った時のXXさん」が自分にとってのその人物の核となる。距離の近い友人知人、パートナー、職場の人等の場合は随時更新がなされるが、作家と鑑賞者の関係においては何年間ものブランクが空き、作家が伸び盛りの時期にあっては認識(過去)と現在地のギャップは恐ろしいものとなる。それをあれするためにですね、こう。
人はいつも未知数である、と思っておくこと。変化の伸びしろを思っておくこと。まだ全然読めてないけど。。
◆金子隆一、戸田昌子、アイヴァン・ヴァルタニアン『日本写真史 写真雑誌1874-1985』
デカ本、資料系も要るよね~。いつも使うわけではないが、いざというとき後から買おうとすると絶版で再販なしとか非常にきついんで、あるうちに買うべき。べきは分かるけど値段がきつい。幸運にも溜まっていたヨドバシのポイント、これをぶっこんで何とかしました。
これは要るわ。要る本。いります。
なんでかというと日本の写真雑誌の歴史で、無数に存在した写真雑誌が網羅されているだけでなく、その誌面が大量に掲載されている。これがどれだけ有難いか、古書とくに雑誌を少しでも集めたことのある人ならわかるはず。家のどこに古雑誌を束で置いておく場所があるだろうか?しかも戦前戦中のやつとかすぐ破れたり崩れるし、カビや虫も気になるし、厄介なことこの上ない。それを圧縮データにしているのだからもう。
同じデカ資料として『MAGNUM』と『FRONT』復刻版も欲しかったが、使用頻度がゼロに近そうなので見送っている。いつか買いそう。
◆荒木経惟関連、「写真時代」「写真世界」「写真芸術」etc
買うものがないときに手にとるもの、とりあえず見たら買っておくもの、として荒木経惟は古本ウォッチャー、書籍スカベンジャーにとっては通説というか共通認識がありませんか。ひとえに「すさまじい数の著作物や特集が発刊され流通している」のと「ゆえに安い品物が超多い」、それで「古本を歩けば荒木に当たる」とよく言います。いわない。
なので写真家としてだけでなく出版・編集という産業に食い込んだ人物であったとも言える。写真家として神格化されその魂というか姿勢に惚れこむ層は厚いが、文化産業の時代性、装置としても見るべきものがある。で文章が軽妙なのでサラっと読むのに良い。買っちゃうよね。
90年代(特に後半?)に一気に写真の神、天才の象徴として雑誌 × 写真カルチャーを牽引する旗手となったが、それ以前のよくわからなさ、エロ本エロ写真・の看板の裏でエロス表現活動をみっちりやっていた頃が面白くて「写真時代」や名前のよく似た雑誌をちょろちょろ買ってる。これらが凄くて、エロ本はエロ本なのだが、エロ本が1/3ぐらいであとはガチの写真雑誌だったりして、森山大道や北島敬三がガチなことをやっていて素晴らしい。ただプレミアついてて高いのでたまに思いつきで買うぐらいがちょうどよい。
キチガイって大切だし重要なんですよ。「写狂人」とは言い得て妙だ。実際ほんとそれ。変に「芸術家」とかで高く切り立ったプライドを抱えるより凄みがある。
全然足りないし消化不良じみているのだが写真集・写真関連本についてはこんな感じで〆ようと思う。2025年の管理方法についてはどうしましょうかね。毎月短報を出せたらいいんですけれどね。Twitter(X)でバズ投稿にケチをつけるのやめたらいけると思うが(やめられない