nekoSLASH

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ卒業。関西・東京の写真・アート展示のレポート・私見をup。

R3.10/18~10/30_伊藤真里子「パワフル商店街 ―大好き私の商店街」@GALLERY wks.

旅行先の商店街の写真を撮り溜めてきた作者は、身近な関西の商店街を改めて撮り集めることでそれらを作品化した。高さを揃えた写真をロール上で一直線に提示し、写真を再び商店街化させている。

 

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【会期】R3.10/18(月)~10/30(土)

 

 

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本作は2019年10月、ニコンプラザ新宿(旧)の「THE GALLERY2」にニッコールクラブ会員展として同じタイトルで出展していた。その時より点数は減らしたものの、基本的な構成は同じである。本来はそのままニコンプラザ大阪で展示される話だったが、2020年4~10月の移転・統廃合の中で立ち消えとなった。本展示はその分、作家自身による大阪版の展示の位置付けと言える。

 

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共通しているのは、商店街にある店舗を一軒ずつ道側から撮るというスタイルぐらいだが、商店街の店舗自体が定型のフォームとなっているため、それだけで統一感の高い写真になっている。一定の距離感を保って撮っていること、写真の高さを統一していることが功を奏している。

そのため、それぞれの店の奇抜な生態がよく見えてくる。そもそも店というのは店内に売り物を陳列する場所であるはずが、店外にみっちり陳列がせり出していて、中には公道・歩道まで占拠している店もある。とにかくどの店も勢いがある。売るための工夫、マーケティング的な戦略というよりは、どこか自然発生的に、長年の習慣として、結果論としてこういうスタイルに落ち着いた感じがする。戦略にしてはカオティックだし、物の密度や溢れ方がすごいからだ。隣近所の店との相互作用で高め合った(?)結果かもしれない。

 

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大阪の天満や、京都・四条~三条あたりの有名な商店街も多数写っている。それぞれの地域、街で客層が違い、例えば京都の商店街だと外国人や修学旅行生などの観光客向けのしつらえになっているし、天満の商店街だとより地元民に密着した品揃えとなる。共通しているのはやはり、前へ前へと商品を押し出してくる、はち切れんばかりの勢いの良さ、すなわち生命力の高さである。

ここがタイトルと併せて見た時にはまさに作者のテーマと言えるだろう。「シャッター商店街」とは真逆の、しぶとく生きている店や人々のことを愛情を持って捉えている。

 

だが本作が、個々の商店の内側へと入り込んだり、それぞれの商店街の特徴を語るのではなく、商店は個々バラバラであり、バラバラなものが再接続されることで造形が前に出てきているのを見ると、一概に「日本全国の商店街の活況を捉えた写真」というヒューマンドラマ的な見方は本当に適切だろうか。

 

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机に置かれた過去の発表作品ファイルを見て、恐れ入った。90年代後半あたりから様々なギャラリーで、実に多彩な作品を発表していたことが分かる。

1950年生まれの作者は、1989年から写真を始め、写真教室にも通うようになるが、1995~2001年の「OICP 写真表現大学」(現:大阪国際メディア図書館)在籍中に、都市の中にある珍妙な生命力に目を向けるようになったことが分かる。それが洗濯物《現代物干し事情》であり、猫除けペットボトル《猫よけですよね?》であり、カバーに包まれた自転車など《街角で、クリスト?》である。これらもまた、街に生きる人々の生命力がそのまま姿を変えて、自然発生的なオブジェのような形で現れたものだ。

 

オブジェ。作者の活動に通底するテーマを考えると、商店街の写真は庶民の生活感や人間ドラマというよりは、商品の陳列が外へ向かって並んだり溢れる在り様を自然発生の「オブジェ」として捉える目線とも言えるのではないか。画一的ではない、歪でさえある商店(街)の、誰にも制御できない空間の形状は、私にとってもたいへん好きなもので、その個性こそイオンや何やら巨大チェーン店を凌駕する力であると信じている。

 

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( ´ - ` )ノ 完。