nekoSLASH

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ卒業。関西・東京の写真・アート展示のレポート・私見をup。

【写真展】R3.7/13(火)~7/25(日) 野口智弘「Slow Waltz ー終わらない序章の始まりー」@ギャラリー・ソラリス

フィルム時代からずっとリコーGRシリーズの開発に関わってきた「ミスターGR」こと野口智弘のスナップ写真群。コンデジ:GRの真価を引き出した作品群に深いやばさ(誉め言葉)を感じた。ひいい( ´  ¬` )

 

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【会期】2021.7/13(火)~7/25(日)

 

展示は大きくカラーとモノクロで展開される。約25点のほとんどがGR3で撮影されたものと聞いて目を疑った。私がこれまでの人生で見てきた「GRシリーズ作例」とはあまりに別物だったのだ。なぜだ。これ聞いてないぞ。あたまを抱えた。なにこれ。きいてへんぞ。リミッター解除コマンドでもあるんすか。凄すぎる。

 

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すごい写真。これはすごいんです。あかんblogは何も伝わらん。展示は生で観ましょう。ましょう。(ここで伝えることを放棄した筆者( ゚q ゚ ))

 

 

違いというのは風合い、色味といった、眼が噛み締める味わい、眼触りのことだ。繊細な描画にして濃くしっかりと色と陰影が宿っている。この風合いはやばいの一言だった。過剰過ぎないぎりぎりの情緒。

聞けばほぼ「撮って出し」Lightroomでの現像やphotoshopでのレタッチをほぼ行っていない)だという。信じられない。「価格.com」等のWebサイトやカメラ店でよく見る作例とは別世界があった。コンデジでここまで精密さと情感を両立させられるのか。ここでGR即売会が行われていたら何台か売れたのではないか。そう思わざるを得ないほど衝撃は深かった。

 

なぜRAW現像で職人仕事をしたわけではないのに、他の作例とは桁違いに、上質で詩的なアウトプットができるのか。

この緻密で詩的な写真を生んだ作者の技術介入が、もはや「シャッターボタンを押す」ことのみであるのならば、「シャッターを押す」際のモード設定と、時間空間、明暗湿度その他の条件選択という、「選択」の重ね合わせがすごい、ということに尽きるのではないか。DJ的だ。

すると、作者の「GR」の使い方や性能への理解は常人の域を超えていて、いつどんなシチュエーションならどんな色と質感で出力されるか、本能的なレベルで、身体の一部に達していると考えざるを得ない。言わば作者は「GR」という機体の「生理」に根差してシャッターを切っているのだろう。 

 

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情感にあふれた描画は、「GR」の実力をいかに多くのユーザーが引き出せていないかを物語るだけでなく、GRというコンデジがもたらしてきた本当の意味をも突き付けていた。これまでフィルム時代から多くの人が手作りしてきた、高クオリティかつ一点物の「写真」を、一発で自動処理して吐き出せるようになった――写真行為の意味を完全に書き換えたのだ。

 

さすがにモノクロ作品を「GRはフィルムと同等・凌駕した」と断言するつもりはないが、フィルム時代から多くの人が求めてきた表現力を、デジタルという形(しかもコンパクト)で、工程を超圧縮して実現したことは確かだ。本展示はそれを改めて、トドメを刺すように見せつけた。

 

本作はテーマや物語を持たない写真群で、実にピュアなスナップである。撮影場所も、ロンドン、パリ、ウィーン、ヴェネツィアストックホルム、ニューヨークといった”大御所”が並び、被写体としては人物と空間とをバランスよく、リズム感を持って取り合わせている。何気ない、自由な撮り方でありつつ、無駄なくスタイリッシュに引き締まった撮り方は、西欧の様々な古き良きスナップの名手を思わせる。

 

フィルムとデジタルは写真の概念が違うというのは理解している。だがそこで追い求められてきたある種の「美」の方向性は同じものがあった。ハイアマチュア、スナップ写真の志向としてはなおさらだ。本作を観ると、技術開発の成果としてフィルムとデジタルという長らくお馴染みの二分法が融解・接続されたことが、スッと一望できたように感じた。

 

こうした機体と技術が時代を変えていったんですなあ。すげえす。まじですげえす。

 

 

( ´ - ` ) ほしい。