写遊百珍

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ生・TA。各種講座のレポや、関西・東京の写真展、アート展示を特集。

【写真展】R2.10/25_橋本大和「そっちはどうだい」@ギャラリー・ソラリス

「そっちはどうだい」。はっとさせられる一言だった。

 

「そっち」と「こっち」が明確に分かれてしまった、ウィズコロナというもうひとつの日常。冒頭1枚目のセルフ・シャドウ・スナップは、作者からの声なき声となって響いてゆく。

 

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【会期】2020.10/20~11/1

 

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自宅内から始まるこれら約20点のスナップは、作者が歩いたり自転車で「散歩」しながら撮り回った光景だ。今年の4~5月にかけて、新型コロナウイルス感染拡大に伴って緊急事態宣言が発令されたが、その後も感染の波は収まらず、それまでの日常を形作っていた移動や交流が大幅に封じられた。不要不急の外出と「密」を控えるようにとの号令がかかり、世間的にも相互監視の目が光る中、散歩の名目での外出は良しとされていた。本作はそんな今年の、春から夏にかけての何気ない/特別な光景である。

 

シャッターは何気ない日常景に向けて切られている。と言いながらもやはり今年の特殊事情を踏まえて見ていくと、このスナップ写真群からは、例えば屋外に人がいない・少ないことや、どのシーンもどこか地続きである感じなどから、今年の新型コロナ禍に特有な、外出や移動の制限された世界観を見出だしてしまう。

通天閣など、どこで撮られたか場所が分かるものもあれば、断片的な光景も多い。しかし全ては、私達が直面することになってしまったもう一つの「日常」、コロナ禍という特別な日々を巡るビジョンである。たとえ抽象的・断片的なカットであっても、詩的さや美への傾斜は控え目で、日常の時間と場の記録という意味合いが強い。現実の外界の形態が強固である分、詩的な情感はカラープリントの焼き込みの手仕事によって表現される。デジタルには不可能な緑や青の豊かな深みある諧調に思わず目を奪われる。単なる記録写真でないのはこの深いブルーの階調のためだ。

 

本展示のユニークな点は、隣人を巡るアクションとしての要素を備えることだ。

 

街から姿を消した人間たちの穴を埋めるのが、犬、猫、鳩、金魚、セミの抜け殻や給水塔といった代理人たちである。この顔ぶれは多彩で賑やかだ。それまでの隣人を失った日常を歩き回ることで、作者は(私達は)新たな隣人を再発見する機会を得たということだろう。

 

物理的に接触困難となってしまったリアルの隣人、人間に対しては、思いを馳せるにとどまらず、通信手段に頼ることになる。展示タイトル「そっちはどうだい」との問い掛けの通り、作品(作者)と鑑賞者の間には私信を送り合うような企画が挿入されている。だがフィルムの手焼き仕事を重視する作者らしさが出ているところで、その通信手段はオフラインの極み・郵便物という、手に触れ、膨大な時間差を伴う物質的なツール(かつ、それ自体がコンテンツ)である。

 

観客は作品のスケッチを行うよう勧められる。ギャラリー側に渡すと、後日それをポストカードにプリントして郵送してくれるというものだ。写真を模写し、像を介して、作者へとコンタクトする人もいれば、あの時の自分自身へ立ち返る人もいるだろう。

「こっち」と「そっち」、自宅と外界とが半ば自主的に、ただし自己責任論を伴う見えない外圧によって分断され、様々な友人知人のことを思うのみ当時の状況を、写真内のイメージとは別のレイヤーで具現化した企画だ。河原温のメールアートをより柔らかく、共感性によって実行しているかのような。「そっち」は作者の内側から発せられた声でありながら、過去の私達自身にオーバーラップする。

 

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「こっちは...」、、、居酒屋で飲み食いできるし、通勤電車も混んでいて、日本中を移動できます―― でも感染者がいなくなりません。。

 

あの当時、何を思っていたか、早くも既に忘れ去りつつあることに気付かされた。恐ろしいことに、あれだけ身に迫った不快や不可解、恐怖について、日々思うところがあったはずだが、もうすっかりその実感は遠く、今ではGoToキャンペーン適用期間内で有利な旅行プランを立てること、トランプvsバイデンの掴み所のない大統領選、鬼滅の興業収入、等々に関心が移ってしまっている。かたや西欧では新型コロナの感染拡大に歯止めが効いておらず、フランスでは再び・2度目の外出制限が設けられるようになったと聞く。

 

何気ない・特別なひとときのスナップは、忘れ去られゆく記録となるかもしれないし、また我が身に振りかかる「真の日常」となるかもしれない。「こっち」と「そっち」は、まだ、揺らぎ続けている。

 

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ニャー。(中央の猫の写真を描きました)

 

 

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( ´ ¬`) あっ豹。

 

票です。

 

忘れてましたが都構想(大阪市廃止・特別区設置)住民投票が11/1(日)でしたね。大阪全体にとって大きな話であるにも関わらず、私は大阪市民ではないので、ゆびをくわえて見ているだけになります。よよよ。念力でも送りましょうか。

 

 

 

( ´ - ` ) 完。