写遊百珍

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ生・TA。各種講座のレポや、関西・東京の写真展、アート展示を特集。

【建築】R2.1/25_安藤忠雄 光の教会 @AKIO NAGASAWA GALLERY 銀座

【建築】R2.1/25_安藤忠雄 光の教会 @AKIO NAGASAWA GALLERY 銀座

光の教会」の構想、設計に込められた思考を振り返る。

【会期】2020.1/15(水)~4/11(土)

 

いつも骨太な展示を行っているAKIO NAGASAWA GALLERY、2016年から安藤忠雄のシリーズを展開していて、今回は3本目。大阪・茨木市にある「光の教会」(茨城春日丘教会)の写真や設計図、構想などを展示している。全く下調べしていなかったが、偶然にも鑑賞することとなった。

 

このギャラリーの広さと静けさに、「光の教会」の写真、光の生み出す十字架が、驚くほどよく映えている。 

 

つくづく、建築の枠を超えた物件である。写真に撮られるからこそ、この光の力がいっそう強まるのかも知れない。信仰の念を、建築によって、しかも直接的に造形物として作るのではなく、外界から取り込む自然光によって生み出しているのだから、いつ見ても斬新だ。

教会の内部は礼拝に参加することで見ることができるため、一度だけ日曜の朝から参加させていただいたことがある。本当に地元の信者さん方の、信仰の場であった。建築の美に目を奪われがちであるが、実際の使われ方は、無名の人々の、日常の心の拠り所である。

  

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この頃はまだインスタ映えとかいう迂闊な概念がなく、スマホの普及もまだまだで、つまり写真を撮ってblogに上げようという勢力はわりとガチ勢だったのです(回想)。平和な時代でした。

 

構想のドローイングも見られるのは嬉しい。建築家の思考がどのように実空間に落とし込まれていったのか・・・と言っても、私は建築の基礎を知らないので、とてもではないがこの構想がいかにして生み出されたのかを体感的に理解する術はない。

 

ちなみに「光の教会」は近年、あまりに絵になり過ぎ、あまりに有名になってしまったために、信仰の場という本来の目的からかけ離れた観光客に見舞われ、教会の公式HPでは切羽詰まった感じで注意勧告がなされている。 

 

一番面白かったのが、インタビュー動画だ。安藤忠雄の、気さくなしわがれ声が自然と耳に入ってくる。

竣工は1989年、総工費3,500万円。時はバブル期であったため、建設業者は大型案件の仕事に手一杯で、そのような安くて小規模な依頼はどこも相手にしなかったという。当時の不動産関連の価格は滅茶苦茶だったので、3千万円台というのはまさに一般家屋、それも大きくもない物件の値段だ。コストを抑えるために木造とする案もあったとか。

さんざん各社に断られたものの、儲けの出ないこの建築を、どうしても純粋にやりたいという施工業者が現われたことで、話は前に進んだ。苦労話ばかりだが、その泥臭さが、スタイリッシュなコンクリート打ちっぱなしの建築と相反し、一層興味を駆り立てられる。

建築には、建築家と、施工主と、依頼主の3者がおり、それぞれの想いがあり、それらをどう取り込んで実現させていくか・・・ 一見、スタイリッシュな仕事に見えて、やっていることは行政マンのように泥臭い。その一方で、信者さんがただ礼拝堂に真っ直ぐ入ってきて、礼拝して帰っていくだけの場にはしたくないと、入口の箇所を工夫し、更に、祭壇の高さを信者らと同じ目の高さに合わせている。

 

喋りながら、どういう構想を込めていたかをラフ図に落とし込んでいく。建築の思考は、話し言葉、日本語だけでは決して見えてはこないことが段々分かってきた。

書き終えたラフ絵が展示されている。絵だけを見ていると静止画だったが、話を聴いてから見ると、実にスリリングな思考の格闘である。この思考や、施工会社や信者さんらとの折衝のあれこれの結果がコンクリートで実現されているのだと思うと、また教会に触れたくなった。次は見方が変わりそうだ。

 

( ´ - ` ) 完。