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ねこが超です。主に関西の写真・アート展示のレポート・私見を綴ります。

【暗室】レンタル暗室・ギャラリー「リヴィエール」@大阪・吹田 &【写真展】(三保谷将史、まつイマさき、宮本ケイ)

【暗室】レンタル暗室・ギャラリー「リヴィエール」@大阪・吹田 &【写真展】(三保谷将史、まつイマさき、宮本ケイ)

雑誌「日本カメラ」の取材で、大阪・吹田にあるレンタル暗室・ギャラリーの「リヴィエール」さんをお訪ねしましたの巻。知る人ぞ知るギャラリーですが、徐々に知られるようになってきています。 

  

(1)道中~外観 

阪急の豊津駅から商店街を抜けて10分弱、地下鉄御堂筋線の江坂駅から10数分のところに位置し、けっこうな住宅街の中にあります。

  

豊津駅。のどかですね。左手に行くと商店街と住宅です。どっちに行ってもだいたい住宅です。

 

さて立地は、もう本当に住宅地の中。おうちの並ぶ中に普通に溶け込んでいて、くもん式とかそろばん教室のようにしてギャラリーがひそんでいます。

前回、初めて展示を観に訪れた際には「えっまさかこんな住宅街に」「この普通っぽい一軒家が??」と、おそるおそる訪ねました。

 

 <(参考)初回の訪問時>

www.hyperneko.com

 

ありましたリヴィエールさんです。

 

 

( ´ - ` ) めっちゃ普通に一軒家。

 

2017年7月に1階の暗室部分がオープン。次いで2018年6月、2階のギャラリー部分がオープンと、段階的に整備されていきました。今の姿がほぼ完成形でしょうね。外観も白くておしゃれできれいです。

 

なおGoogleストリートビューでは、2015年撮影時から更新されていないため、オープン当初の原型を知ることができます。左手の、チャリが止まってる、塀のあるおうちです。

/(^o^)\ これはステルスや。超とけこんでいます。

 

( ´ - ` ) あまりに民家すぎて、オープン当初には暗室利用者も本当にここが暗室なのかが分からず、何周もぐるぐるしたとかいう逸話もあります。塀を取って壁面の色を変えるだけで、ずいぶんイメージが変わりますね。

 

 

( ´ - ` )ノ ガチャ。

 

おじゃまします。

 

入ってすぐにカウンター。これまで開催された企画展にゆかりのある作家のブックなどがあります。後述しますが、2Fのギャラリーの展示を観る場合は、ここで鑑賞料(1人500円)をお支払いです。

 

(2)暗室

暗室利用の方はこのカウンターの左側(和室の扉になっている)から奥へ通されます。暗室を使いたい場合は、要アポです。いきなり押しかけて道場破りをしてはいけません。アポをしましょう。

 

<★link>リヴィエール HP

https://riviere.urdarkroom.com/

暗室利用の条件や料金体系、初回利用時の留意点(ワークショップに参加 or 指導付きの暗室利用が必須)、「写真部員」システムの案内など、細かく定めがあるので、本ブログでの解説はかつあいします。

 

まとめましょう。

・初回のワークショップや指導を受ければ、暗室を6時間1万円で利用可に

・暗室プリント、現像とも、カラーとモノクロどちらも可能

・「写真部員」(年会費5千円)に加入すると、20%オフで利用可 &特典あり
 (暗室を年3回使う場合、部員になった方がお得)

・年間の暗室利用回数・上位者は、年末のグループ展に招待される

 

オーナー氏いわく「カラーの暗室ワークは難しそうに思うかもしれませんが、思った以上に簡単なので、初心者の方にはぜひ試してもらいたいです」とのこと。

 

暗室です。モノクロとカラーどちらも対応。一度に最大2名で利用できますが、基本は1人ずつで入って作業します。

大学で写真部員だった私にとっては、冷暖房があって、 床が土足じゃないという環境だけでなんかリッチですね。そしてモノクロしか焼いたことがない大学生活でしたので、いつか人生のどこかでカラーも焼きたいですね。いつやねん。はい。

 

( ´ - ` ) 詳細についてはお店のHPにてご確認を。また機会があれば誌面もご覧くださいまし。 (「日本カメラ」2020年2月号に掲載予定)

 

 

(3)ギャラリー/ギャルリ・ド・リヴィエール

さて誌面では掲載できなかった、2階・ギャラリーでの展示についてご紹介しましょう。

リヴィエールさんは、まさにザ・自宅みたいな(というか普通の一軒家の)間取りでして、2階部分は2部屋、全て白い壁面のギャラリースペースです。

 

【写真展】RIVIERE Exhibition 2019(まつイマさき、宮本ケイ)、RIVIERE Collection 2019(三保谷将史)@ギャルリ・ド・リヴィエール

【会期】2019.12/28(土)~2020.1/5(日)(※土日のみ開廊)

 

ちょうど訪問時には2つの展示が開催されていました。

一つは先に紹介したように、今年の暗室利用回数の最も多かった写真家2名を招いての展示。もう一つは所蔵展で、写真作家:三保谷将史から寄贈あるいは購入した作品を展示。

 

RIVIERE Collection 2019:三保谷将史(Images are for illustration purposesシリーズ) 

「IMA」(Vol.26_「STEP OUT!」で特集)での紹介で興味を抱いていた作品。ここで出会うことになるとは思わなかった(嬉しい)。

これらの奇怪でカラフルなイメージ群は、直に見ると平面的で、少し印刷物やシルクスクリーンにも似た感触を伴う。これらは普通にカメラで撮影したものではなく、商品のパッケージをフォトグラムの技法で印画紙に写し込んだものだ。

通常、フォトグラムと言うと印画紙の上に物を置いて感光させ、光が透過あるいは遮られて現れたモノの形状を写真の像へと転化する技法を指し、色は付かない。しかし本作では色の面が毒々しいまでに表れており、フォトグラムの作例としてはかなり意表を突かれる。

 

この現象について、展示ステートメントを引用しよう。『コンビニやスーパーマーケットに並ぶお菓子や日用品、そのパッケ-ジに印刷されたイメージ写真を素材に、カラーの暗室で制作している。チョコレートの箱であったり、冷凍食品の袋といった類のものへ、写真のネガと同様に光を透過させる。物質を経由する光は、その材質や、折れ目やシワといった状態もイメージに変換し、また色は反転し定着される。』

つまり、印画紙の上に直にパッケージを置くのではなく、それらをネガの代わりに引伸ばし機のフィルムキャリアに敷いて光を透し、印刷物自体を反転させたイメージを印画紙へ焼き付けている、という手法と考えればよいか。

 

これらの像は紛れもなく消費社会――大量消費、大量生産の産物だ。だがA・ウォーホルがかつて表したポップさ、画一的な表面だけ、ツルツルのイメージ群と大いに異なり、もっと毒々しく、有毒の海洋生物めいた生命感があり、独自性に満ちている。写真の技法は、画一的で、目に優しく、そして親し気に私達に近づく商品パッケージの中に内包(隠蔽)されていた真のディテールを覚醒させたと言えよう。モノの細部を巨視化することで抽象性が高まり、今まで見えなかった姿が発見されるのは、かつてモホリ・ナジが切り拓いた前衛の道に連なるところがあり、興味深く感じた。

 

 

◆RIVIERE Exhibition 2019(宮本ケイ)

こちらは暗室利用者の二人展である。とはいえ会場としては三保谷と共有しており、同時に見られる。まず宮本氏から。

作品は2つあり、一つは海外旅行時に路上などで出会った人に声をかけて撮った人物スナップ写真で、ロシアと、独立を一方的に主張している地区で撮られている。

もう一つは、長崎県五島列島久賀島の風景。この二つに必然的な繋がりはないが、ロシアへ旅行に行こうとしたところ急遽行けなくなったため、行先を変更したとのこと。教会や海岸の光景が佇む。

ロシアの路上で出会ったという男性の1枚が圧倒的によい。男性よりも古い型の車の方が主役のように画面に写っている。撮られ慣れているとしか思えない男性のポージングも奇妙な魅力を誇っている。

 

◆RIVIERE Exhibition 2019(まつイマさき)

水面に反射した木々の揺らめき、時間と光の動きが撮られている。

写真に撮るとサイアノタイプのような青さになってしまったが、通常のカラー写真である。

並び立つ葉のない木々が時間の中で揺れている。東山魁夷の描いた青く幻想的な風景を連想させられた。輪郭の少しもやもやとした、木々や水面の姿、現実にあるのか分からない、あの青い情景である。本作は絵画と違って、あくまで現実の光景の複製だが、その現実はどこにあるのだろうか。もしかすると、どこにもないのかも知れない。

 

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なお、「ギャルリ・ド・リヴィエール」での展示鑑賞には別途鑑賞料が500円が必要です。この鑑賞料制は、鑑賞を通じて作家へ少しでも還元を、というオーナー氏の考えからです。また、本気で展示を観たい人に来てもらいたい、という思いからでもあります。

 

そんなこんなの訪問録でした。instagramをかじってる方も、instagramに無縁な皆さんも、銀塩フィルムをぜひ試してみてくださいね。

 

( ´ - ` ) 完。