写遊百珍

大阪国際メディア図書館「写真表現大学」研究ゼミ生&TA。各種講座のレポや、関西・東京の写真展、アート展示を特集。

【写真展/KYOTOGRAPHIE】ロミュアル・ハズメ「ポルト・ノボへの路上で」@誉田屋源兵衛

【写真展/KYOTOGRAPHIE】ロミュアル・ハズメ「ポルト・ノボへの路上で」@誉田屋源兵衛

作者ロミュアル・ハズメはベナン共和国からやって来た。隣国にはナイジェリアとトーゴがあり、国境付近は「用が無いなら近づくな」と外務省の勧告が出ている。この日本とは対照的な、砂と熱と精霊が支配する西アフリカ大陸の、タフでしたたかな暮らしを伝える。 

  

会場に入ってすぐに、絵巻物のように横長の写真が2枚広がる。いずれもベナンの路上における日常を捉えたものだ。

露天マーケットを俯瞰する右の作品タイトルは「ARTicle 14 自分で何とかしろ、自分で」(2005)、左は「アボメイ・カラヴィのガソリンスタンド」(2006)(※アボメイ・カラヴィは首都コトヌー郊外の町)となっている。

「article」には社説、品物、記事や「条項」という意味があり、さしずめここでは「第14条」と、この国で生きる上での掟をタイトルと映像で提示していると言えよう。

 

その過酷さとしたたかさをよく物語っているのは左側の「ガソリンスタンド」だ。

 

 

 

動画と言ってもよいほどの尺を持った写真である。まさに巻物で、歩きながら眼で追っていくのが楽しい。タイトルを見ずにこれを見ると、路上コンビニ、路上バーといった風情があってより楽しいですね。しかし彼らの開くのどかな露天商はガソリンスタンドで、これらの瓶に収められているのは隣国ナイジェリアから密輸されたガソリン、オイルだ。梅酒でも漬けてるのかと思った。

巨大な丸いガラス瓶から直接、車のタンクにガソリンを注ぎ込む様は、どこかコミカルでもある。しかし作者の表現活動の主テーマとしては、自国を含むアフリカ諸国における奴隷の歴史、そして現在にも続く欧米とアフリカとの力関係と、それに加えてアフリカ内における大国と弱小国との力関係について言及がある。

  

 

1F奥の作品群では、ポリタンクと地元民とが密接不可分の暮らしを送っていることが示される。これらも中身は「不正ガソリン」だ。

これらは重いテーマのはずだが、それを押し付けることなく、あくまで解釈を視る側に委ねている点、特にビジュアルの上では、被写体である地元住民の前向きさ、陽を浴びながら生き生きと暮らしているというポジティヴさが立っているところに、この作家の戦略が伺える。つまり、現代アートにおける論法をきっちり踏まえてきているように感じた。テキストによる作品プレゼンがなければ意図を読み取ることは出来なかっただろう。

 

会場2Fで展開されるのは、彼らヨルバ民族の伝統文化である仮面舞踏「エグングン」における祭りで、祖霊を宿したたちが舞うシーンである。この衣装が非常に高価らしく、 財産をはたいて作る勢いだとか。

彼らの信仰はブードゥー教といい、踊りや鳴り物、動物の生贄などを用いてトランス状態に陥り、死後の世界にアクセスするというもの。植民地支配の奴隷貿易の際に、民間信仰キリスト教と習合して生まれたらしい。精霊の衣装はどれも、踊り手の眼や顔をすっぽりと覆っていて、激しく踊る時に他の踊り手と衝突したりもするという。しかし、美しい。

 

 

 

 

写真がよいので細部が見えます。精霊を観察しましょう。

 

( ´ - ` )ノ 業務用ゴム手袋www

 

いいすね~。

 

模様の一部にはタカラガイが使われていました。

 

背景がしっかり写っているが、出演者たちがずば抜けて派手。一点ものだろうから制作がたいへんでは。彼らキャスト陣の異世界感がぶっとんでいて、心の中で第三世界ディズニーランドと呼びました。

観客も派手なのが混じっているし、踊る人も見る人も金がかかっていそう。逆・宝塚ですかね。そういえば男性ばっかりの気がするが女性はどこにいるんだろうか。

  

で「エグングン」の舞い、衣装写真だけなら他のフォトグラファーが撮ったものがWeb上でもシェアされ回っている。ロミュアル・ハズメの仕事の意義は、前述のように、歴史的には奴隷として扱われ、現代においても生活必需品である燃料を隣の国から盗んでこないと流通させられないという、相当な格差状態にある点を踏まえている点だ。

盗品をインフラにする生活力のしたたかさと、祖霊を「あちら側」の世界から降ろしてきては陶酔の中に舞う、聖と俗の大きな振り幅を提示して見せてくれたことが、私達島国の民の眼を開かせてくれる。お洒落なだけの文化はなく、どこの民族にも様々な事情と、暮らしがあるのだと。

 

 

1Fまでは真面目に鑑賞してたんだが、2Fからはだんだん脳が遊び始めてしまった。アフリカは歴史や政治体制やらが深刻な半面、精霊や魔術となると欧米の感性をはるかに飛び越えたものが幾らでも出てきて脳がしびれます。何が言いたいのか分からなくなりましたが、脳がしびれるのでどうしようもないです。人間界はいろいろ世知辛いけど魔界はいいぞということを以って〆させていただきます。民博いこうぜ。 

 

( ´ - ` ) 完。