【ART】「The Japan」渡辺直人@天野画廊 / 「blooming proudly」小路珠里・西田和美@ギャラリー白3
大阪・西天満の「ギャラリー白」へ、キノシタ藍さんの写真展を観に行った際、刺激的な展示に出会いました◎
「星光ビル」内には「ギャラリー白」が1階から3階まで入っているのと、「天野画廊」さんも入っている。
亜人種の方がいました。後に話を伺ってみたいと思います。
(おさらい)
まずは日本の状況からです。
◆「The Japan」「The Democracy」渡辺直人氏 @天野画廊
(グループ展:「Artificial Phase in Contemporary Art Vol.31」パート2参加)
「The Japan」
「日本」と言うと何を思い浮かべますか。問いをかけられたら皆さんどうしましょうか。そういう問いを日々回避して分かったふりをしながら生計を立てつつ、宴席や車の助手席などでは憂いの声を上げてみせたりしつつ翌朝にはちゃんと忘却するのが我々、組織人型庶民であります。対して、真っ向から或いは色んな角度から、国家であるとかクニであるとかの質量や形状、実体、システムについて一定の年数で検証したり疑義を問うのが学者や表現者であります。
私は日本は巨大かつ広汎なるゲームフィールドと見做していて、この先も仮想OS、仮想サーバーを更に超えた仮想現実のような国になればいいなあと思っています、しかし迷惑防止条例がこの国の姿なのかなと感じてもいます。
さて作品ですが、ぐにゃぐにゃになった赤い物体は作者曰く「支えがなければ形を保てない今の日本」を表わしています。なるほど。
周囲を取り囲む新聞は、今から約百年前の1925年に成立した「治安維持法」とその変質の過程を端的に押さえた記事の抜粋です。
治安維持法は普通選挙法と同時に成立しており、当初は、国体の変革及び私有財産の否定(共産主義)につながる行動を取り締まるものでした。しかしその後、戦争への参加を通じて条項は増え続け、当初7条だったものが65条にもなり、刑の重さや対象も拡張されていきます。学校の歴史で習うように、最終敵にはあの悪名高き、思想や信条、言論などあらゆる場面で警察が市民をしょっぴく体制を敷きます。昨今の「共謀罪」はその動きに似ているという指摘です。
この日(6/1)の日刊ゲンダイの灰汁の強さが激しく、「首相の顔のむくみ」「官房長官の悪相」など、噛み締め甲斐のあるタイトルが踊ります。しかし共謀罪の要件を含むテロ等準備罪が可決されましたし、ちょけていられるのも今のうちだけでしょうか。残り少ない自由を謳歌しましょう。
「The Democracy」
こちらは民主主義でございます。
こちらも、あやういんではないかという指摘です。半透明な白い不確かなもの、これはボンドを乾かしたものですが、針の先に乗っています。展示期間中も自重や気温の影響を受けて変形します。危ういバランスの上に成り立っているもの、それが民主主義だと作者は言います。
私が感銘を受けたのは、「お金をあまりかけずに展示表現が出来るのか!」という点でした。写真をやっているとお金がかかってかかって…。
また、着眼点ひとつで「現在」に対してクリティカルな異議申し立てを行うことは可能であるということ。学校の夏休みの宿題で教えたらどうでしょうか。むり。
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仲間に「あなたが好きそうな展示が上でやっている」と言われて。
なんじゃろうか。こんにちは。
◆「blooming proudly」小路珠里・西田和美@ギャラリー白3
フロアの中央に、繭から生まれ出ている亜人種の方が居たのでした。
人の世界に生まれてきた、人ではない彼女。
一見、軽くて柔軟なプラスチックに見えたのだが、この体は陶器である。焼きあがる度に丹念に何度も磨かれて、静かな軽やかさを宿すことになった。
右手には割った繭の殻らしきものが握られている。自ら掴んだ目覚めの余韻か、それとも護られた眠りを愛しむのか。
豪奢な花を脱ぎ着するようにして繭から覗く脚。女性のスカートは夢艶やかな繭の名残なのでしょうか。
「 ( スヤスヤ ) 」
物理的には、陶製の人形が仰向けに置かれている、だけである。しかしなぜか、「この人は寝ている」ように錯覚します。人の形をした、人に似たものを、自動的に同族種と見做して気遣おうとする。我々にはそういうメカニズムが備わっているようだ。そのスイッチが押されるか否か、強度がどうかは、対象物の美醜や神聖さのイメージに相当に左右されるらしい。
「 はあい。」
脛、腹、胸の下に翳が咲いている。角度によって笑って歓迎しているようにも威嚇しているようにも見える。曖昧さは好きです。生身の人間の女性が相手だと緊張が走りますが。この先、更に曖昧かつ微細な表情が宿っていくだろうと予感します。
「・・・・・」
睡蓮の池となって、無言でこちらを見ている。濃厚な蓮を宿している、というよりも、まるで蓮に喰われつつあるかのようだ。四肢が動くと、陶製の間接が摩擦で空気をぎりぎりと切り裂く。
周囲には女性の耽美的な揺らめきの世界を描いたお皿が配置されており、最初は二人展だと気付かなかった。二人の色調はまるで異なるが、女性の孕む非線形の力、夢と現の強烈に入り混じった生命感が美しい。
人に似た、人ではない存在、しかし確実に人間を目指して模して創られた存在、それは私にとっても重要なテーマであります。ゲームやアニメの世界で追求され続けてきたことが、亜人であり疑似生命であり私達人間の正体に関することであります。立体造形を作ることができない私なので、たいへん面白く拝見しました。