【ART―写真展】H29.5/29-6/3 キノシタ藍 氏 個展「もののあはれを知る」@ギャラリー白
H29.6/1(木)
写真表現大学の隠れた同期がギャラリーで個展をしておられるので観に行くの巻。彼女は夜間コースだったので接点がほぼ無かったのでした。
この日は病棟のワックス掛けに伴う病室の物品・患者の移動作業という鬱々とした一日を過ごし、閉ざされた病室の重く澱んだ空気、全身に薬品めいた患者臭を絡み付かせ、死に一歩二歩と漬かった私でした。ゴホッゴホッ。滅入る。天気も冴えない。
しかし彼女の視界には、うち棄てられたものたちが、精彩を放っていたのでした。生身の人間よりもタフで輝いています。個性が豊かだし、主張もあるし、大いに共感するところです。
仕事終わりの18時過ぎ、大阪の西天満という、普段は訪れることのない一角へ赴きます。梅田・北新地の南東、ちょうど兎我野町のラブホ街と中之島との間のエリアで、大阪高裁がどんと立ち、周囲を細かな雑居ビルがひしめく面白いところです。
西天満は弁護士事務所と個性的な飲食店そしてギャラリーが多い町。会場は「ギャラリー白(はく)」。ジャンルを問わず、芸大関係者などが彫刻、陶芸、絵画、写真、何でも盛んに展示を繰り広げています。
SNS世代なのでぬかりなく誘い合わせて入廊します。写真集もいいんだけれども、やはり現物を見ないと力が出ません。一人で観るのもいいんだけれども、同業者と喋っていると見え方、考え方がより掴めることがあります、何より楽しい。そう楽しい。
\( ゚q ゚ )/ こんちは。
キノシタさんいません。
いないのでフリー観覧します。
一見、「棄てられたもの」には見えないのが良い◎ですね。名前の付けようのないもの、日々過ぎ去って意識の外へ流れ去ってゆくもの、消えずに時空間の澱のように残ってしまうもの。そうしたものたちを捉えるのに、写真という手段はうってつけです。これらを言葉で表すのはとても大変だし、絵画でやっても力が弱まりそう。写真は、名もなき日常の姿を強力に引き出してくれます。異界と日常を一瞬で連結する。
ご本人曰く、「撮り始めた頃は、傷を埋めるため」写真を撮っていた-ある種、見下して、自分を救われるようにしていたとのことですが、被写体の存在感が徐々に増していき、写っていたものたちのことを顧みるようになっていった、とのこと。
確かに、被写体のことをしっかりと見つめているので、個人的な傷や救いについては特に感じませんでした。むしろ、私達の生活においては、実に多彩なものを切り離して、無かったことにしているのだなあと思い返しました。ゴミ箱、ゴミ袋から溢れ出た「声」や「姿」のようなものが、掬い取られている。それは意外にも面白い声をしていることに気付かされます。
キノシタさんの素敵なところは、絵遊び、感傷に寄らないところ。被写体に寄り添いつつ、客観視をしていて、自分と被写体との関係がある。
廃棄物はものを言わないし、所有権もないし、恣意的にこちらの感傷をいくらでも盛ることができます。よくやりました。やるよね。皆さん胸に手を当ててみよう。絞りを開放してぼかすとそれはそれは綺麗な写真になるんだ。やるよね。ピクトリアリズム的に、美しい絵として盛り盛りにすることは、快感であります。キノシタさんはそれをしていないので、「この世界は何だろうか」と、落ち着いて向き合うことができます。
逆にそれゆえ、クールなデザイン性が勝っているものと、デザイン的な枠組みをひたひたと侵すダークさを湛えているものとがあって、私は断然後者の方が好きで、溺れていたいなあと思います。予期しきれないところで生まれた写真は、奏効時間が長く、低温の熱病のようにどこかへ連れていってくれます。
あっ。スタッフルームにもある。
地味に凄かったのがポートフォリオで、写真だけの展示とは全く異なり、文字(撮影地)を一言、反対側のページに添えるだけで、世界観の迫力がぐっと増すという体験がありました。それまでバラバラだったオブジェクト群が、どこで撮られ、集められたものたちだったのか、急に意味を帯びて、体系化される手前までぐっと立ち上がってくる、意識上の躍動感がありました。面白い体験でした。
他の部屋もさんざん観て回って、もう閉館の時間かなという時に、キノシタさんが来られたので、わいわいしました。作品の話ぜんぜんしなくて、学校の世間話になってしもうてすいません汗汗。8割ぐらい学校の話でしたかねすいません汗汗。
わいわいしました◎
梅田にもこういう名の通ったギャラリーがあれば何も悩まないのに・・・。ぶつぶつ言いながら間取りを確認します。14~15枚は作らないといけない。頑張りましょう。生きる目標が出来ます。生きよう。はい。
なお、隣の「天野画廊」さんや、上の階「ギャラリー白3」では、こんな展示が。
完。
否 終わらない。
いい年した大人の集まりなので、満足値が針を振り切るまでかえりません。
愛想尽かそう!
「地酒の銘柄を店頭に掲げる店にハズレはない」というテーゼがあって、それはだいたい間違いないです。
店内貸切状態。
平行世界にいる無数の自分の中には、サプリメント代をけちっていて、髪の毛が禿げてる代わりにレンズ何本か多い自分もいるかもしれませんよといったお話。すだれ頭の単焦点Lレンズ野郎。やだあ。なんかやだあ。
鯖めしが美味しかったので写真のことなどを忘却しそうになる。くすのきさんがトマトジュースをぶっ放して赤い惨劇が繰り広げられ、一方私は蚊の幻覚を見て、何も無いところを叩いていました。おいしかったでう。